4「『砲艦サンパブロ』のこと少々」

前回の「真実」、このページでお伝えしようと思ってたら、掲示板でソルティ・ドックさんがいとも簡単に見破っちゃってガックリ。
けれど後日、お客のK君「マスター、あの答えっていつ明かしてくれんの?」。
うーん、わからん人もおったんだ・・・。不明の方は掲示板を見ていただくとして、今回は先日の掲示板に書ききれなかった風邪の日々のことを・・・。

布団にくるまりながらビデオで『ティアーズ・オブ・ザ・サン』をみる。
米軍特殊部隊が内戦下のナイジェリアのジャングルから米国人女医を救出しようとする物語で、ブルース・ウイルス主演、ロードショーも終わったばかり。期待!

が・・・
米軍は善良な平和部隊。対する黒人イスラム兵士は残忍無比。あいもかわらず救出を拒んだあげく惨殺される白人宣教師。そしてモニカ・ベルッチ演ずる女医は“美貌”の持ち主・・・というB級映画定番の構図。
それで思い出したのが、食堂の玉子丼価格80円の青春下宿時代。
その食事代を削って洋画をみまくっていた30年以上も前のあるアメリカ映画のこと。巨匠ロバート・ワイズ監督、スティーブ・マックイーン主演『砲艦サンパブロ』です。

1900年初頭、外国人排斥運動下の中国上海に停泊する米軍旧式砲艦が、揚子江上流に孤立する宣教師一団の救出に向かうというラストにむけ、緊迫感の増していく上海の街を背景に孤独な海軍兵士に芽生える友情と愛、そして彼らに次々と襲いかかる悲惨な死が描かれています。
同監督の『ウエストサイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』などをご覧の方はこれら描写がいかに緻密でかつドラマチックであるか容易に想像できるでしょう。

共演者もすばらしい。
艦長には『ランボー』シリーズで上官役を演じていたリチャード・クレンナ(米国では子供にも人気があると当時聞いた)、宣教師グループの一員にキャンディス・バーゲン(知的イメージが災いしハリウッドでの人気はいまひとつらしいけれど、彼女出演作の『弾丸を噛め』『風とライオン』『さらば荒野』、なかでも『ソルジャー・ブルー』なんてのは我輩オススメ!)、後に名監督となったリチャード・アッテンボロー(当作品でアカデミー賞助演男優賞受賞)、この作品で墨丸が初めて存在を知った日本人俳優マコ・・。
悪役ふくめてのこれら脇役は言うに及ばず、セリフのない一中国人までもが存在感あり作品に深みを与えていました。
30数年も前の、この一分のたるみもない重厚な作品と『ティアーズ』をつい比較してしまい、以下・・・

最近みた映画をふくめての墨丸映画評(☆5つが最高)
『砲艦サンパブロ』    ☆☆☆☆☆ 墨丸洋画ベスト10に入る名作。
『ティアーズ・・』    ☆☆
『スパイダー』      ☆☆ クローネンバーグ監督、レイフ・ファインズ主演で期待。が、新味のない精神異常者モノどまり。やさしき妻と淫売の二役を演じたミランダ・リチャードソンという女優は印象的。02年サンフランシスコ批評家協会賞助演女優賞受賞とか。
『ブラッド・ワーク』   ☆☆ クリント・イーストウッド監督・主演で期待の連続殺人モノ。謎の犯人が誰かがもうみえみえ。
『山猫は眠らない2』   ☆ トム・べレンジャー主演の狙撃手モノ。傑作だった前作のイメージをぶっこわしてしまってます。
『ミニミニ大作戦』    ☆☆ 60年代の前作を知る者としては最近の泥棒モノはハイテク技術を駆使しすぎます。
『ロード・キラー』    ☆☆☆ 以外に面白い、スピルバーグの『激突』風B級アクション。
『インファナル・アフェア』☆☆☆☆☆ 警察に潜入したマフィアのスパイとマフィアの幹部となった潜入捜査官をアンディ・ラウとトニー・レオンが熱演する香港マフィアもの。これはハラハラドキドキの展開。
『ゴシカ』        ☆ 眠たくなる最新作ホラー・・・。
『スズメバチ』      ☆☆☆☆ フランス特殊警察対重装備マフィアの激突!「エイリアン2」の戦闘シーンを連想してしまいました。
『ドッグ・ソルジャー』  ☆☆ スコットランド山中で繰り広げられるイギリス軍の小隊対狼男の戦い。もっと面白くできるでしょ!
『デス・フロント』    ☆☆☆ 第一次大戦の塹壕を舞台にした、墨丸好みのホラー。塹壕が「生きている」のですぞぉ。
『ザ・コア』       ☆☆ レーザーで地球に穴を開けて云々という時点から荒唐無稽さが鼻につく。

★「今夜の名言!」

『君はこれから?』
『私?いられるだけここにいます。でもね、時どき考えるわ。どうして私はここにいるんだろって。ここにいない私だってどこかにいるはずなんじゃないかって』
(置き薬会社の中年営業マンが山中でレトロな電話ボックスに出くわす。そしてその電話は30年前の青春時代に通じていた・・・。大林宣彦監督『告別』のラストシーン、峰岸徹と裕木奈江との会話 ☆☆☆)。 以上。

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