52「回想のビュイック8」

★07年4月27日(金)

久方ぶりにスティーブン・キングを読む。
05年翻訳出版の「回想のビュイック8」(新潮文庫)だ。
裏表紙掲載のあらすじなど読まずに予備知識ナシで読み始める。
彼の長編はたいがい素晴らしいゆえ(初期作品時代は「たいがい」ではなく「すべてが」だったンだけど・・・)、あらすじを読まずとも即購入。今回はどんな物語なんだろうと想像しつつ、ワクワクしつつ読みはじめることができるのだ。

ペンシルバニア州の田舎町のガソリンスタンドに一台の車が止まる。
運転していた不気味な男は車を降りてそのまま行方不明に。
残されたのは50年代のビュイック。
しかし新車同然。
・・・なにかがおかしい。雨が降った後なのに泥はねひとつない。
ナンバープレートも、それを固定するネジ穴さえもない。
エンジンはあるがどこにもつながっていず、バッテリーもあるがケーブルは一本もない。
ダッシュボードのつまみ類はどれもこれも見かけだけの舞台の書き割りみたいなもの・・・。
D分署はその謎の車を押収するが、それから奇妙なことが起こり始める・・・。

う〜ん、ありえない話が読みすすむうちにいつも通り現実味をおびてくるその語り口の巧妙さ。
だって登場人物さえ最初は「ありえん!」と全員が思いつついつしか恐怖におののき始めるンだから。

でも、ちょっと特異性に欠けてての(「クリスティーン」なんて真っ赤な中古車プリマス・フューリーが登場するキング作品がかつてあったゆえ)、評価4/5どまり。

ちなみに我輩の好みの作品ベスト5は「呪われた町」「デッドゾーン」「クージョ」「痩せゆく男」。そして傑作の呼び声高い大長編「ザ・スタンド」(現在読書中)。

★「今夜の名言!」

・・・なにかの力がおれをビュイックのほうへと引っぱった。(中略)死の危険を秘めたものに、おれたち人間が引き寄せられるあの力だったのかもしれない。断崖絶壁のへり・・・銃口を自分にむけると、見つめかえされている気分になること・・・まぁ、そういったたぐいだ。夜も更けて、家のなかでまだ起きてるいるのが自分ひとりというときには、ナイフの切先でさえちがって見えてくる。
「回想のビュイック8」下巻185ページより。 以上。

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