62「バーテンダー」

★07年5月末、集英社のコミック「バーテンダー」8巻まで読了(スーパージャンプ連載中)。

我輩、この仕事はじめた当初(日本酒バーからショットバーに業態変更の頃)、知人からコミックの「レモンハート」が参考になると教えられ購入。
ま、これは酒のウンチクオンリー本のようなもんで、まだ講談社の「世界の名酒事典」のほうが参考になったか。

が、今回の本書は酒をというより「バー」を知る上では名著でアル。
若干26歳にしてヨーロッパのカクテルコンテストに優勝。その味は「神のグラス」と呼ばれ、パリ・ラッツホテルチーフバーテンダーをつとめた青年が主人公。
その青年が帰国後、銀座の一流バーで更なる修行を重ねてゆく中でのさまざまな人々との出会いが描かれているのであ〜る。この次々と登場する人々がまさにそういえばいらっしゃるような、もちろんドラマチックには描かれてはいますけれど、うんうんとうなづけること多々ありで・・・。

また幾多の「な〜るほど!」とあらためて教えられることも・・・。
たとえば、バーというのは「hide out(ギャングの隠れ家)」である、というセリフがある。
はじめてバーにきた青年がバーの扉を「まるで入ってくるな!」と主張しているみたいだというのに対し主人公がそう答える。
「隠れ家だからこそバーの扉は重く、道行く人を拒むかのように店名も小さく目立たない。その代わりいったん中に入れば、あの重い扉があるからこそお客様は安心して外の世界を忘れられる。肩書きや年齢やいろんなものを忘れて本当の自分に向き合えるのかもしれません」な〜んて。
その青年が帰ったあと常連客が「バーはあんたみたいなガキが来る場所じゃないわ」といったひとことに主人公は「最初から大人の人なんていません。みんなあの扉を押すたびに・・・少しずつ大人になるんじゃないですか?」。再度、な〜るほど、であった。

シリーズの中盤過ぎに「昔はバーテンというだけで世間は白い目で見た時代もあったらしい」というセリフも出てき、「いつの時代の話よ、それ。江戸時代?鎌倉時代?バッカじゃないの!」とあるが、我輩の青春時代はまさにそうだった。
その頃とあるクラブに勤め始めたとき尊敬するマネージャーのM氏から「君は3年この仕事をしたら足を洗え。その3年間は他の仕事より人生経験になるがそれ以上こんな仕事してると人間ダメになる」といってくれたことがある。で、3年過ぎた頃「なるほど」と思い至りサラーマンに転職したわけであるが・・・。当時はそんな世界だったのだ。

が、いまはそんな時代ではないのだろう。
このコミックで上司が部下にいう。
「バーでは何があっても吐くなよ。吐きたくなったら這ってでも店の外へ出ろ。5千円以下の勘定にカードなんか使うな。酒の知ったかぶりはするな。グダグダと連れの女を口説くな。他の客ならなおさらだ。仕事の話はするな。ついでに上司の悪口は2軒目までだ」

ま、「吐く」云々以外はうなずけるが、我輩はそんな格式あるところで(1杯飲んで3千円だもんなぁ)酒なんか飲みたくもないけれど。失礼、当店はバーというより洋酒喫茶でありましょうか?

※本書は借物ゆえ現在当店には置いてませんが、今後取り揃えたいと思います。でも、「神のグラス」の世界(のようなものでも)求めないで下さいね。その代わり3千円もいただきませんゆえ・・・(なんで日本人は茶道、コーヒー道のように酒の世界でも「道」にしてしまうんだろうの、アンチ・本格バー派の墨丸店主談)。 以上。

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