102「その後の、盛田隆二サン」

08年6月19日(木)

★前々回このページでご紹介した「夜の果てまで」の作者、盛田隆二の本をまとめて読みました。以下、簡単に評価。

「ラストワルツ」(角川文庫)
18歳で上京した作者30歳までの自伝的恋愛小説。3/5。
「ニッポンの狩猟期」(角川文庫)
日本の子供達がストリート・チルドレンと化した近未来劇。3/5。
「リセット」(ハルキ文庫)
女子高校生の「いま」を描く。3/5。
「おいしい水」(光文社文庫)
集合住宅に住む主婦たちのいわば「金妻」小説版。4/5。

「夜の果てまで」が最高傑作と知ってしまうとこの4冊、その潜入観念下で読み進むのはつらかった。
ゆえにマーカス・スティーヴンスの処女作「樹海脱出」(二見書房)を時折読みつつ・・・しかしこの「樹海」、内戦下のコンゴのジャングルに不時着した旅客機から脱出した男のサバイバル小説なんですけど、主人公のそして捜索に向かう妻の行動に必然性感じられず、かつ無駄な描写が多すぎページ飛ばしてしまうほど。題材はいいのに評価2/5止まり(結論。二見書房の文庫本はロクなのがない・・・)。

盛田さんは男性作家ながら女性の視点でそれぞれの世界を事細かに描いた「おいしい水」「リセット」は共に読み応えあり。個人的にはブルセラ、ドラッグ、援助交際の恥を忘れたような群像劇の「リセット」より、一人の平凡な主婦が自立してゆく「おいしい水」のほうがすがすがしく印象に残りました。
※この時点で著者の早稲田文学新人賞「夜よりも長い夢」、野間文芸新人賞「ストリート・チルドレン」、三島由紀夫賞「サウダージ」(それぞれ候補ですが)は入手できず。以上。

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