115「店名・墨丸の由来」

10月17日(金)

★店名「墨丸」の由来・・・

さて、前回のサブ店名「hona」の由来に続き、今回は店名「墨丸」のお話です。

昨夜来られたOクン、ここではОクンと呼びます。いまだお名前を伺っていないので店の伝票には弟サンと記しています。彼の兄さんもお客さんなので。そのОクン「スミさん、『墨丸』ってどういう意味なんですか?」
「う〜ん、いっつも問われることでめんどくさくなって最近色んな答え方してンねんけど(失礼)、ちゃんと答えましょかぁ?」

で、「ほな」の由来も記したことやし、いままで述べなかったこと含めここで改めて記しておきませう。

う〜む、あれは我輩が二十歳初めの頃、就職してしまうのがイヤでイヤで今で言うフリーター生活送ってた時代。金がないゆえ睡眠薬をアルコールで流し込んでは酔っぱらってた時代。
そんな生活しつつも「将来就職するとき、履歴書に書けることナンカしとかなあかんなぁ・・・」と(この辺はカシコイ)、某劇団に所属。
そこでのとある女史劇団員に「この作家の小説、読まれたことあります?」

当時は我輩、生きる意味を模索してのモンモンたる青春まるだしの日々、読むのは人類滅亡テーマのSFか石川達三、野坂昭如、太宰治、読みやすいコリン・ウイルソンの新実存主義本ばかり読んでいて、そんな時代小説作家なんぞ「いや〜、ぜ〜んぜん興味ないわ〜」

時は流れて20歳のなか頃。運良くなりおおせたサラリーマン時代。
なぜその作家の本を手にしたのか今はもう思い出せないけれど、南海高野線の通勤電車内で読んでいたのがその作家、山本周五郎先生の短編「おさん」。
純真だけれど男なしでは生きられぬ女と江戸職人との、涙ナシでは読めぬ悲恋物語で車中「う〜ん、今日は半休して喫茶店で続き読も〜!」と決めたら、短編ゆえ乗換駅の新今宮で読み終えてしまってた・・・。

それからであります。
作家山本周五郎にはまってしまったのは・・・。

転職し東京出張が多くなった30歳代、ヒマができれば神田の古書店街で彼の全集未収録作品集を買い集める日々、ふと気づいた。
すでに山本さんは67年に亡くなっているではないか。
う〜ん、これらを読んでしまうともうこの「感動」に出会えないではないか!
以来、もったいなくて彼の作品を読むのを止めているのであ〜る。

その彼の1冊、古き良き日本女性を描いた「日本婦道記」に短編「墨丸」が収録されています。
薄幸の少女お石は鈴木家の養女となる。鈴木家の嫡男平之丞とその友人たちは彼女の色の黒さから墨丸とあだ名していたのだが・・・女性の一途な思いを描くこれも悲恋物語ですが、その我が永遠のヒロイン像の墨丸と我が姓の一字「住」を重ね合わせての命名であります。これが42歳の時・・・。

当初は、フォークナーの作品から「サンクチュアリ(聖域)」(ミナミに同名の美容室発見であっさり除外。ま、横文字にはもともと興味はありませんでした)や、将来の2号店用に堀内大學の詩集から「月に吠える」「月下の一群」なども考えてました。

山本周五郎先生亡き後、黒岩重吾の西成モノや夏樹静子、重松清、浅田次郎の短編などには涙しますが、やはり素直に涙できるのは今のところ先生の作品以外にはございませんなぁ。

ちなみに(以前にも記しましたが)、当店名を「黒土」「丸墨」「墨」、はてはアダルト女優名の「豊丸」や「睾丸」と呼ばれる方々、この機会に正式店名覚えてくださいね〜。以上。

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