０９年３月７日（土）
★深夜、お客サンと「飲み屋のツケ」についての話題のなか、思い出しました。で、今夜のお題は「新・偶然の夜」
ちなみに「ツケ」の漢字は「付け・附け」ですが、「勘定書き」の意もあるそうです。
我輩二十歳代の頃、以前掲載の126「偶然の夜」のモリちゃんと通っていた、阿倍野近鉄デパート裏のとあるスナックでのこと。
当時のスナックはカラオケなんぞの小うるさいモノもなく、雰囲気としては今でいうガールズ・バーでしょうか。店のホステスやバーテンとたわいのない話をしながら、サントリー・オールドのせいでひどい二日酔いが待ち受けている世界でした。
よくいうのですが、サントリーは質の悪い酒で（オールド告発本も出版されていた）我らの青春を犠牲にしつつ「山崎」や「響」を樽で寝かせ続けていたというわけで、サントリーの宣伝マンでオールドのＣМにも出ていた「食通」といわれる作家の開高健など、だから今でもキライ。
その店の名はもう忘れましたが、そこのマスターのことをお客の我々もホステスも陰で「ネズミ男」と、半ば軽蔑をこめて呼んでいたのを覚えています。
この店を巡っては三つの出来事が（「ネズミ男」の名のゆえんもふくめて）ありましたが、今回のお話はその中のひとつ・・・
ある夜、その店のホステスの一人と出身地の話題になり、彼女が偶然にもわたしが一時期過ごした南紀の田辺市の育ちとわかりました（過去２回掲載の「偶然の夜」の舞台と同じ市です）。
ホステス「高校どこ？！」
わたし「田辺高校」
ホステス「え、いまおいくつ？」
で、わたしが答えると、「Ｆって子知ってる？」
わたし「え〜！」
（その子は女子バスケ部で、クラスメイトで、なおかつ当時の片思いの相手でした）
そのことを告げると「え〜！・・・その子、わたしの妹よ」
で彼女、しばらく押し黙ったあと「お願いがあるんですけど、わたしがここで働いてること、妹に会っても内緒にしといてくれる？」
その理由は聞かずじまいでしたが、後日、彼女が同僚と共にミナミのラウンジに店変えし、わたし達はそのラウンジにも顔を出していました。
そうしたある日、彼女から勤め先に電話が入りました。
「スミちゃん、ちょっとご無沙汰ですね。で、悪いンですけどツケの分、振込みでいいですからお願いできます？」
「あ、そやなぁ、残っとったなぁ！悪い悪い、すぐ振り込むわ〜！」
で、早速振り込みました。
後日、久しぶりにそのミナミの店を訪れました。
その夜はなぜか中国人のママさんひとりでした。
年配の、中国訛りの日本語を話すママさんで、親切ないい方でした。
そのママさんとしばらく雑談したのち「そうそうママさん、ツケの支払い遅れて悪かったですね」
「あ、久しぶりにお越しになって機嫌よくお飲みになってらっしゃるのでツケの話なんかで気を使わせたらと思って・・・」
「？？？あの〜、振り込まれてたでしょ？」
「え？」
そ〜なんです。
その場でママさんがあちこち電話して確認したところ、すでにその店を辞めていた（！）彼女と同僚のふたりがツケのあるお客に片っ端から電話をし、彼女達の口座にそれらを振り込ませていたのです。
今でいう「振り込み詐欺」みたいなものです。
あのＦ子の、いまはもう顔も思い出せぬあの姉さんは、その後いかなる人生を歩んだのでしょうか・・・いや、そういう人生ゆえに「妹に内緒に」といっていたのかもしれません。
出会いの偶然から生まれたひとつの事件でした。以上。