170「ダミン!」

10年2月12日(金)

★ささいな注:前記「パソコンが死んだ日」と「『静かな魅力』篠田節子さん」のページ、ミスで掲載順序が入れ替わってます。
「パソコンが死んだ日」以降「死」にまつわる話はもう一段落したかな?さすがもう書くことないだろな?(で、つづきが「死」以外の上記「静かな魅力」の記述となったわけです)が、ある日、ある時、ある出来事が・・・。

1月の末でしたか、墨丸会員715号Mちゃんが「マスター、砂ネズミ、娘に見せてやって」というのでそのペットが暮らすゲージを奥から出してきて見せてあげました。
でも大変内気そうな小学4年生というその女の子、ゲージに近寄ろうともしません。で、「こんなん欲しい?あげるで」といってみてもモジモジするばかり。Mちゃん「え〜、マスターこれいらんの?」

孤独なわが生活に慰めをと飼い始めた砂ネズミですが、我輩同様、孤独なロッキー・バルボアがペットの亀を可愛がる心境に至らず、またハムスターと違いすばしっこく、夜な夜なゲージから出して遊ぶこともできません。
かつこの生物を飼うきっかけとなった「犬猫同様賢い」と紹介した某氏を、彼ら砂ネズミ見るたびにいまは付き合いのないその某氏連想してしまっての、「ええよ、やるで〜!」
母親のMちゃん喜ぶ反面その女の子、あいかわらずモジモジ。
「じゃあ、1週間お試し期間でどう?」とMちゃん、娘に。
で、その夜、ゲージごと砂ネズミの「ダミン」と「ルビー」はもらわれていきました。
わたしと彼らとの(砂ネズミとの)さばさばとした別れでした。
つぎはカナリヤでも飼おうかな、と漠然と思っていた矢先、Mちゃんから電話。
「マスター、申し訳ありません。やっぱり飼えません」
「あ、そ。ええよ、ええよ」
「もうひとつ謝らないといけないことが・・・」
「なに?」
「・・・こ、こんどお会いしたときに」

う〜む、一匹逃げちゃったかな?と思ってると本日Mちゃんゲージを下げて来店。
「実は・・・あの夜、ゲージを下げて家に入ろうとしたとき、一匹が隙間から逃げ出したんです」
ふむふむ、やっぱりそうか。わしって名探偵やん。
「で、つかまえようと追いかけて、排水溝に入りこもうとしたのであわてて娘が・・・頭を、耳の辺りを踏んじゃったんです・・・で、血が出て、その場でコンクリートに体をこすりつけるようにグルグル回って。でも砂ネズミは砂で体を洗うってマスターから聞いてたから、そうしてるんかなって思ってると、そのまま死んじゃって・・・」

さほどショックではなかった。
死んだのは、雌なのに雄のルビーより活発で(最近の人間男女みたい)、隙あらば逃げ出そうとしていたダミンのほうだった。
ただ、「グルグル回って」という言葉にはグサリの感。つぎに思ったのはダミンに対して、「あほ!」

そんなことより、踏んずけて「グルグル回って」なんて現場を体験目撃したあのモジモジ少女の心境いかばかりか・・・。
振り返ると昔、ミカン箱でハツカネズミを飼っていて繁殖。にぎやかになったなぁと思ってた矢先、その木箱の隅をかみ破って集団脱走。後日ベランダの下で集団死・・・。
ウサギを飼っていたときには、箱に入れてベランダに出して外出中、大雨で溺れ死んでしまい、おなじくベランダに初代ダミン(ハムスター)を出していて熱中症で死んでしまったりと(この二点はあの我が妻?リ・フジンの手によるものである)、それら全てを我輩は幸いにも目撃していなかったのだった・・・。

Mちゃん「そんなで飼うのが怖くなったみたいで。弁償します」
「ええよ、ええよ、焼き鳥2本と酒一杯おごってくれたらええわ」で、手打ち(ダミンよ、お前の命の値打ちはこの程度だったんだ。ごめん)

が、その後、雄のルビー、目に見えて元気がない。
あのモジモジ少女と同様「ダミン虐殺事件」現場目撃してるもんなぁ・・・。
かつては食事時、ダミンと争ってエサを取り合っていたのにそのエサをいまは食べようとはしない(ま、翌朝にはエサ箱カラにはなってはいるんだけれど)
愛犬チョークの死に始まった最近の「死」にまつわる話も、おなじくペットのダミンの死によって完結するのであろう(願わくば・・・)

「ルビーよ、さみしいのはお前だけじゃない」、のだ。

2月15日(月)

★「神鳥 イビス」(集英社文庫)読了。
前回絶賛した篠田節子さんの、今回これは初期の作品です。
裏表紙のあらすじわざと読まず、ふふふ、今度はどんな話なんだろとわくわくしながら読み始めました。

主人公の女性イラストレイターに、画壇から認められることなく夭折した明治の日本画家・河野珠江の遺作「朱鷺飛来図」をイメージした本の表紙イラストの依頼がきます。
その「朱鷺飛来図」の妖しい魅力に憑かれた主人公は、珠江の不可解で凄惨な死、彼女の生涯を映画化した女性監督の「私は間違えた。珠江は恐ろしい絵描きです」と書き残しての自殺などを知るに至り、謎に満ちた珠江の生涯を探るべく奥多摩の山中へ・・・。

半世紀前に謎の失脚をした青年政治家のそのいきさつを歴史教師が調べあげる、処女作ながら重厚無類の傑作本「千尋の闇」(ロバート・ゴダード。創元推理文庫)を彷彿とさせる、百年も前の謎に迫る過程に「これはいったいどういう物語なのだ?!」とドキドキしていると後半、人も通わぬ山奥に無人の茶店、そして鳥獣の鳴き声もせぬ静寂のなかの無人の集落・・・と異様な世界が展開し始め・・・。
「朱鷺という滅びに瀕した種の怨念と、若くして命を絶った薄幸の女流画家。二つの情念が生み出した異形の世界」がそこに展開するのでした。
奥多摩山中での彷徨場面は背筋がゾクリとするほどの雰囲気でありますぞ〜。この作品で篠田さんは一気に注目を集めたというのがうなづけました。評価4/5。 以上。

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