190「海霧」の夜

10年7月5日(月)

★吉川英治文学賞作「海霧」(原田康子。講談社文庫)読了。

久方ぶりの大長編。全3巻です。
著者の1956年度女流文学賞作「挽歌」は何十年か前に買ったものの、いまだ未読(購入しての未読作品、たぶん数百冊はあるんではなかろうか。アホみたい・・・)。
で、今回(多分)初めて彼女の作品読みました。
一言でいえば、「すごいですなぁ!」

幕末から昭和にかけての激動の時代に生きた一家、三世代の物語。
佐賀に生まれた幸吉少年が米屋の丁稚奉公を経て優秀な抗夫となり、未開の蝦夷地へ。のちに釧路市となる辺境の久寿里(くすり)で商売をはじめ大成するのだが・・・という、以前紹介した篠田節子さんや向田邦子さんの作品同様、女流作家ながらの「静かなる」小説とでもいいましょうか、それぞれの時代の生活、風俗が克明に描かれています。
「すごい」と思わせるのがこの点で、百年にも及ぶ一家の日常生活をここまで詳しく書けるもんやなぁ、と。まるでその時代、作者がその場に居合わせていたかと思わせるほど、臨場感たっぷり。

幸吉の判断ミスからの家族の不幸(こんな才覚のある人もこう考えてしまうんやと現実味もあり)、破綻する夫婦仲、娘の死や家出などという身近な問題が描かれてるものの、もっとドラマチックな展開を期待すると不満が残ります。が、本書は作者の血族を描いた物語と知るとこれもある意味、納得か。評価4/5(もっとドラマチックな展開、期待してましてん・・・)

ps:読書、少々控えます。昨今、現実から目を背けすぎです。そういう意味では酒も飲みすぎで、店内外を整理整頓する肉体活動にかえますわ(本能的に人生あきらめてるのか、オープン当時からいまだ事務所も片付けていずで)。・・・この本読んで思いつきました。店の名前変えましょか、「辺境」って。あ、もっと先行してるフジキヨさんの「無人島」ってバー、あったわ!

ps:10日(土)、私用で21時半までミナミにいます。ゆえにオープンは22時過ぎに。すみません、よろしく。 以上。

<戻る>