225「ぐわっ?!」(その2)

11年11月27日(日)

★ 本の話がつづいて申し訳ありませんが・・・。

前回は「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。『必ず二回読みたくなる』と絶賛された傑作ミステリー」、乾くるみ「イニシエーション・ラブ」(文春文庫)の紹介でしたが、今回は同様の作品につづけてめぐり合えて、「あ〜生きててよかった!」というお話。

紹介作は、墨丸会員734号チャン氏からお借りした辻村深月「名前探しの放課後」(講談社文庫)。

本作は、219「『時計仕掛けのオレンジ』の悪夢(後編)」ページで紹介の辻村さんの秀作「ぼくのメジャースプーン」の続編的物語。
今回の作品も前作同様、題名で選ぶとすれば私なら決して手にせぬ少女趣味的題名本。けれど最近お客さん方、私の好み理解してくれてか「我輩なら決して手にせぬ!が、いい本!」にめぐり合わせてくれるのはうれしい限り。

話はもどりますが、続編「的」というのは、前作の主人公である小学2年生のボクと歯列矯正金具をつけた同級生女子ふみちゃんが、本作では高校生に成長。が、脇役として登場ゆえのこと。愛すべきふみちゃん登場の仕方がこれまた凝ってまして、これまた「ぐわっ!」。そういう意味でも「ぼくのメジャースプーン」からお読みになるのをおすすめします。

こうした関連が辻村ワールドというらしく、他作品の個性豊かな主人公、脇役が異なる作品で再度登場とのことで、辻村さんファンになるとこれがたまらないんでしょうね。私はまだ2作しか読んでないけれどもうその気分。

物語は、一人の男子高校生が三ヶ月前にタイムスリップ。
その直前の記憶が、「同級生の誰かが自殺する」
が、その自殺者の顔も名前も思い出せない。
で、彼は友人たちとその「誰か」の自殺を阻止しょうと自殺予定者を探し始め・・・。

文庫本上下巻です。
正直、途中イラつきました。
「なんでこんな無駄な描写あんの?ましてや上下巻もの長さ必要ないやろ?あの盟友チャン氏が墨丸好みといった理由が分からん!」

が、みなさん、それらを無駄な描写と思ってはいけません。
さぁ、深読みしましょう。ならばこの物語の真実、解読できるかも?

さらに今回「最後の2行」の逆転ではありませぬ。
最終章迎え「あれ、事件解決みたいやのにまだこんなにページ残ってるやん?」
で、ページめくると、「ぐわっ!」
さらに、彼らの友情に感涙です!
(この辺りの記述、忘れて本作読んだほうがいいです・・・ごめん)。
評価、おまけの5/5。

★その他の「今夜の本!」

百田尚樹「風の中のマリヤ」(講談社文庫)。
「アニマルプラネット」のテレビ番組ファンの某氏は「もう知ってる世界やからこの本、もうひとつやった・・・」とのことでしたが、オオスズメバチの戦士マリヤの懸命に生きる30日間の生涯は、私にとっては目からウロコ。まるで著者の代表作「永遠のゼロ」での特攻隊員のようで、スズメバチに親しみ感ずること大。ま、刺そうとしたらたたき殺すけど。評価4/5。

T.R.スミス「エージェント6」(新潮文庫)。
暗黒の体制下でのソ連を舞台にした「チャイルド44」(このミステリーがすごい!第1位)、「グラーグ57」(最高に面白い本大賞第1位)につづく秘密警察KGB職員レオの人生完結篇!
上巻、愛する妻ライーサとの始めての出会いから結婚に至るまでの回想シーンがあり、ファンにとっては納得のうれしいかぎりの章で読ませます。
が、ソ連本土からアフガニスタン等海外に舞台が移る章からは少々類型的すぎるきらいが・・・。
やはりこのシリーズ、共産主義体制化のソ連という特殊で過酷な舞台あっての傑作ともいえますか。おまけの4/5。 以上。

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