237「墨丸氏の優雅な一週間 / 5」(三角ビルのお話篇)12.5.7〜

12年5月7日(火)

Yクン再来店。

今月の1日、旧友Yクンが当店探し当てての初来店の際には一瞬誰だか分からず。10年近く会っていなかった?

いまや中年太りの彼と知り合ったのは彼が十九歳、我輩が二十歳過ぎの1970年代。
堺・砂道町に新築オープンした前面斜め、背面垂直壁という斬新なスタイルの三角形ビルの、当時としては珍しかったスポーツクラブ、その飲食店部門初代バイトの同僚としてでした。

そのビル一階には喫茶「シャンタン」、高級レストラン「ボンパパ」、ゴルフショップが配置され、二階以上がプール付きのスポーツクラブ。Yクンとはその喫茶部で共に働くようになり・・・で、若気の過ち。いや、いまも過ち連綿やけど、ある日から我輩なにかの都合で店を休み続けてしまって・・・

「もうクビやなぁ・・・」と、店の様子伺ってみようとYクンに電話。
すると彼「え〜、スミさん休んでたんですか!僕もその日から休んでますねん!」

アホや・・・二人しかいないバイトが偶然にも同じ日からさぼってたわけで(女性ウェイトレスは他に二名いたけれど)、こりゃ店長激怒やわと、もう辞めさせてもらうつもりで二人して(なら心強く)お詫びに出向き・・・

飲食店フロア責任者は、某ホテルコック長前職の恰幅のよいレストラン支配人。
まず支配人に詫びいれ、喫茶マスター、コック長の順で頭下げて回り、コック長いわく「支配人のひとことなかったらおまえもクビや!」

・・・Yクンはその場でクビでした。
が、なぜか我輩は支配人苦笑しつつバイト続けるようにいわれ、後日制服の黒服まで誂えてもらってレストラン部のウェイターに昇格(この頃、我輩バイト転々としていたけれど、なぜか年上に好かれ・・・でも年上の女性にはまるで縁がなかった)。

その後、スポーツクラブ運営するその会社に就職をとのお誘いまでいただいたのだけれど、バイト人生後半は時間給の良かった水商売多く、昼間のサラリーマン生活にあこがれ別会社に就職。
そしてそのスポーツクラブ会社、まもなく倒産・・・。
ま、それら思うと我輩、運はいい方なのかもしれぬ。
以後、そのビルはパチンコ店を経ていまは葬儀会社が入居中。

辞めたYクンとはその後も年賀状やりとりし、我輩サラリーマン時代には彼が勤めていたデザイン会社と取引したりと付き合い続き、墨丸長居店時代にも何度か来店。けれど、彼の会社も倒産。しばらく会っていなかったのだった。
彼の飲食ベース基地は天下茶屋とか。前回記した松虫の再訪問時にでもその近くの天下茶屋で彼とゆっくり飲もうかと思っている。

今回は特にオチもない話になってしまったので、この三角ビルでの別話は次回にでも。

5月9日(水)

★「今夜の本!」

今回は力作揃い。

「モンスター」(百田尚樹/幻冬社文庫)畸形的なまでに醜い女性が整形手術で絶世の美女に。女の「美」の表裏とその「美」に翻弄される男達について学べます。評価4/5。
「沙高樓綺譚」(浅田次郎/文春文庫)人は誰にも明かせない「秘密」を持っている。その究極の「秘密」の数々を知ることができる連作短編集。「刀剣」「撮影所」「ガーデニング」「ヤクザ」に関する薀蓄も面白みあり。が、「あ、これはいつもの浅田節やん」の既視観ありが少々マイナスか。4/5。
「歪笑小説」(東野圭吾/集英社文庫)クスリと笑いつつ読める出版業界の内幕本。4/5。
「骸骨ビルの庭」(宮本輝/講談社文庫)幾人もの戦争孤児を育て上げた男の人生。「大人」が書いた「大人」の本!ただ、ドラマチックなラストを期待すると拍子抜け。司馬遼太郎賞受賞作。4/5。
「グレイヴディッガー」(高野和明/講談社文庫)江戸川乱歩賞受賞作家による、一人の男が謎のグループ、警察に追われる「傑作追跡劇サスペンス」の謳い文句なれど、充分なタクシー代もないという男がなぜかポリスグッズ店でいちばん安いというだけで手錠を購入。これって無意味やんと納得できぬままの後半、とってつけたかのようにその手錠利用する場面が。原稿字数増やしとしか思えぬ無駄な展開多しで、2/5。
以上、最後の一点のぞきオススメ順でした。

「モンスター」では「整形美容」について色々学べます。例えば・・・

1.アジア人には目頭に蒙古襞(もうこひだ)がある。欧米人にはその縦襞がなく、目頭にあるピンク色の結膜が見えている。その襞を切開すると目頭が鋭角的になって、パッチリ感が増す。
2.日本人の理想的な目のバランスは、目尻から目頭までの長さを1とすると、左右の目の間は1.2が最も美しいバランス。白人は、両目とその間隔は、1対1対1が理想的。
3.「額の生え際から目のライン」「目のラインから鼻の先」「鼻の先から顎の先端」の三つのゾーンが等分。かつ、小鼻の先端から目尻、眉尻のラインが直線になっているのが、美の黄金比。
4.以前、「小股が切れ上がったいい女」の「小股」って?と辞書を調べたことがあり「女のすらりとした粋な体つき」と。でもそれがなんで小股?と、釈然としなかったんだけど、本書では小股=口角と解説。
整形では、口元をわずかに上がり気味にし、微笑んでいるような形(仏像に見られる少し笑っているような、いわゆるアルカイックスマイル)にするとかで、ようやく納得?

他にも、整形外科医の多くが美の基準を白人においていて、極端にいうと骨格の違いからそれらの結果は「滑稽な作り物」めいてみえる、という話も初めて知りました。

5月11日(金)

「今夜の本!」で紹介の「骸骨ビルの庭」登場のニューハーフのナナさんについて何日か前にお客のCさんと語りあっていて近場のニューハーフ店思い出し、その旨告げるとCさん「行ってみましょうよ!」

そしての本日11時半。
お客はそのCさん一人っきりに・・・。
「マスター、今日はヒマですよ。もう誰も来ませんよ。奢りますから店閉めて行きましょうよ」
う〜む、う〜む、お客さんが来ないはずはないんだけど・・・と悩むより、なぜか飲む誘いには我輩200%弱くって・・・金曜の夜というのに、いそいそとネオンを消してしまった・・・。

で、電話で行く旨伝えてその店に。
飲み放題90分5千円也。
テーブルにはグリーン色のボトル用意済み。
「飲み放題って、これ?」(韓国焼酎の鏡月、それもアルコール度数たった20度の・・・)。
「焼酎かぁ」とつぶやくとママさん、キープ期限切れのサントリー山崎を出してくれました。
結局、時間延長して飲み続け、一人8千円となるショータイム付きに発展。
田中心ママさんの美しすぎる上半身裸のショーみても発情せずは、やはりボク、まとも?
でも、オランダとオーストリアの混血マユミさんは、キレイでした。
(この夜はお客、僕たち二人だけ・・・)。

西田辺駅前ルミナスビル9階「ピチピチピーチ」(06−6623−8739)。また、行きます・・・(ボク、まとも、ちゃうのん?)。 以上。

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