257「洞窟」

13.8.22(木)

★初夏のとある夜、我が友М氏「なんか面白いことないかぁ?また温泉でも行こうやぁ」
そのセリフ、我輩左の耳から脳みそ留まらず右の耳へ一直線。
で、とりあえず「はいはい」(そんな金どこにあんねん!)。

7月に入り、車を運転したい欲求急に芽生え(車を手放してから時々この欲求に襲われる)、そんな時、会員になって数年間一度も利用したことがない旅行案内会社からの特価紹介ファックス定期便に、「洞窟温泉」と。

「なに?なに?洞窟?」
興味そそられみてみると、「洞窟食、洞窟温泉一泊二食6980円也」
「うむ!うむ!う〜む!休みの日に飲み歩いて1万円くらい使うなら、こんな体験もいいじゃん!?」
で、М氏に電話「俺が運転、ガソリン代お前持ちでどうや?」、М氏即答「行く!」

早速予約センターに申し出ると、「残念ながらこの週は連日満室です」
「うむ!うむ!う〜む!満室ってことはよほど人気あるんや!ええやん!ええやん!」と、翌週の7月21日(日)から一泊で予約。

レンタカーはいつも通り「いちばん安いやつを!」で、日産マーチ24時間保険料込み会員価格6300円也で予約し、午後二時出発!

毎回のことだけれど、サラリーマン時代の正月休み、盆休み、ゴールデンウィークなど迎えた初日、仕事のことなど念頭からきれいさっぱり消え去り永遠に休日が続くような錯覚に陥ってしまうのは我が能天気さのせい。ゆえに今だ自死することなく生き延びているのであろう。
いや、日曜ロードショー番組終了時のテーマミュージック流れると「時間よ、止まれ!止まってください・・・お願い」と急激に落ち込む「サザエさん症候群」には人一倍罹患してたと思うのではあるが・・・。
久方ぶりにこの日もそんなウキウキ気分。

三重県津市までナビと高速利用で、2時間強。
現地付近でМ氏「おい、おい、こんなとこに温泉あんのかよ?」と、田舎町の路地進んでゆくと、眼前の田んぼと山との狭間にへばりつくように二階建ての民家が・・・が、ナビでは目的地到着であった。

う〜む、民家風やけど、ちゃんとでっかい看板が。ま、旅館というより民宿?
少々心配なのは周りが田んぼと山々のみゆえ夕食後の時間つぶしの問題が・・・。
以前М氏と和歌山県中津村に軍鶏料理を食べに行った際、夕食終わり仲居さんに「このあと飲めるとこあります?」と聞くと「そ〜ですねぇ、海南まで出られたら」「遠いの?」「タクシーで一時間くらい」「・・・・」
20時からの大河ドラマを生まれて初めてみて時間つぶした無残な覚えがあった・・・。

が、今回は心配なし。
その経験ふまえ、旅館と併設しての「半田村」というお食事処があるのを確認していたのだ。
夕食後はここで地元特産のアテで地酒を飲める!あはは、同じ過ちは我輩、しないのだ。恋愛だけは別やけど・・・。

フロント。
入口でお客さん方の見送り役の仲居さんと出会ってるというのに、そのフロントからは幾人かの人影を暖簾越しに見かけるというのに、だぁれも出てこない。一抹の不安・・・。
フロントベル鳴らしてようやく応対。が、その仲居さん、愛想はいい。
下駄箱がほぼ満杯だったゆえ「お忙しそうですね」と問うと「いえ、日帰りの法事のお客さんで」。そうか、今夜はすいてるんだ。

部屋に案内。
二階の角部屋。
が、風呂、トイレなしで、「・・・」
が、その案内仲居さんも愛想はいい。
仲居さん我輩に「お客さん、芸能人のどなたかに似てらっしゃいますねぇ?この温泉、テレビでよく紹介されるので芸能人の方々もよく見えられるんですよ」。М氏「誰に似てるか考えといてね。本人かも」

夕刻は家族風呂の洞窟温泉は予約が入っていたのでとりあえず大浴場とやらへ。
「うむ、うむ、う〜む・・・」
ま、数人で満杯の浴槽狭さは我慢できるとしても、その横の干上がったような小規模の浴槽跡?も無視するとしても、ジャングル風呂的なその木々が一部枯れたままなのからも目をそらすとしても、洗い場が4ヶ所しかないことは・・・その洗い場がである、椅子それぞれ近設しすぎているのだ。いや、ひっついているのだ。
こりゃ大人四人なら互いに洗いっこしてるみたいやん!と、М氏と我輩両端にそれぞれ陣取り、体を洗う。
洗い終える頃、中二つ洗い場あるというのに、後から入ってきた子供が「父ちゃん、洗うとこない」
我輩「大丈夫、大丈夫、おじさんもう洗い終わるから」なんてセリフをやりとりしたほどなのであった・・・。

で、期待の夕食、18時から。
これまた愛想のいい仲居さんに食事場所の洞窟まで案内されつつ、玄関出たところのお食事処「半田村」、17時開店のはずなのに準備中と閉まってて、仲居さんに「あそこは今夜休みですか?」と問うと「やってますよ〜。でもそこより洞窟でも一品頼めますからそっちのほうが雰囲気あっていいですよ〜」
そうかもしれないけれど、閉まっててやってますなんて、これまた一抹の不安・・・。

さて、洞窟。
本館玄関出て、駐車場わきの山肌にぽっかり空いた洞窟が・・・。
「うむ!うむ!う〜む!」
こんなのは沖縄鍾乳洞の龍泉洞観光以来だ、こんなところで酒が飲めるのか!と大いに期待!

斜面下ると左に枝分かれした洞窟があり、各所に長方形の座卓。数組が食事中。
我らの座卓に座る。
「う〜む・・・」
じっとりと、座布団が湿気ってるではないか。はたまた、一抹の不安・・・。
背後の岩壁にはなぜか掃除用のモップが立てかけられたまま。
反対側に座ったならこれは仲居さんにモップの移動願うだろう。モップみながらの食事って信じられん!
が、料理を運んできた仲居さんも愛想がいい。

が、その料理、冒頭からメイン料理の「山海賊焼き」が・・・。
読み取りにくいファックス案内文ではこの料理名は読み取れたが、「これだけ?」
・・・これだけだった。
М氏「なんか安っぽい焼肉屋に来たみたいやなぁ・・・」で、仲居さんに(これまた愛想はいい)「一品料理のメニューもってきてくれますか」「はいはい」・・・そのまま忘れ去られてしまった。

乾杯した生ビールなくなり、仲居さんに(この方も愛想いい)酒のメニュー依頼し(裏に一品メニューが書かれていて助かった、というのも情けない話であるが)、「う〜む、一合づつ飲むよりボトルのほうが安いよな」と五合瓶注文。
・・・持ってこられたのは一合徳利二本だった・・・。
その間、薄汚れた配膳用黄色いプラケースは食事横に置かれたまま。
べたつく爪楊枝入れには爪楊枝が四〜五本のみしかなく・・・。

「しゃあない、部屋でスーパーで買ってきた酒でも飲むか」と我ら席を立つ。
その際、昔クレンザー用の砂を採掘していたという、その乾いていると見えた洞窟壁面触ってみると、これが湿気でじっとり。クーラーは設置されていずとも涼しいが、これでは座布団も湿気るはずである・・・。

帰りに洞窟奥行き百メートルほどの突き当たりまで行ってみると、洞窟探検マップではその先に「神秘の泉」なるものがあると記されていて興味津々だったが木の板で塞がれていた。そこで吐く息が白かったことぐらいか、いい意味で印象に残ったのは・・・。

本館前まで戻るとお食事処はまだ「準備中」・・・。
フロントで「今夜はあそこ休み?」と尋ねてみると「やってますよ〜。開けましょかぁ?」「いいです・・・」

トイレが遠い。
あちこちに数ヶ所あるのだが、これがどれも一人用。
最短距離のが使用中ならばさらに遠いトイレを探し当てねばならない。
で、館内マップみてみると、トイレ付部屋はいくつかあるのだった。
角部屋でなくとも、「本日ヒマ」ならばせめてトイレ付き部屋くらい、と思ってしまうのはぜいたくだろうか・・・と思いつつ用を足してトイレを出た瞬間、女の嬌声が!

ふとその階段上廊下見やると、半裸の、バスタオル軽く引っかけただけの若き女性が走り抜けようとしてい、一瞬目が合ったその時、若き男が笑いながらそのあとを追いかけてゆき、「なんや!いくら暇な宿やって裸で遊びまわるなよ」と、悶々とする真夜中のはじまりであった・・・。

この夜は参院選開票日。
「ワタミよ、山本太郎よ、民主党、社民党候補者よ、みんな落選せよ!」と夜なか三時過ぎまで酒飲みながらダラダラとテレビみつづけ(結局、中津村と変わらん過ごし方やった)、「あ、こりゃワタミは当選せんな、よかった、よかった」と一安心して目が覚めると、当選してはった・・・。

我輩が芸能人の誰に似ていたのか?
前夜の仲居さん、帰りのフロントで「あ!お客さん!分かりました!山本晋也監督!」「はいはい・・・」(我輩そんなにスケベ顔なのか・・・「男の顔は履歴書」なり?)。

フロントはずれに来館の芸能人の写真がずらりと飾られていた。
笑ってる写真が、なかった・・・。

大阪に近づくにつれ我ら「おもろうないなぁ、このままどっか行きたいなぁ」
ちなみに、そのままレンタカー延長する場合とあらためて借り直す場合とどちらが損か?
聞くと「延長する場合」でした。あのままフラリと別の温泉地に向かわずにいてよかった・・・というより我らもう財布の中身は空っぽ同然であったのだが。

お愛想がおススメの温泉宿でした。
171「呪いの北東事件」にも残酷宿泊の話アリ。 以上。

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