１６．５．１３（金）
「大いなる空白」本編の最終回（※）です。
８月２７日（木）深夜に救急搬送されての１２日後の９月８日（火）、ようやく六階の急性期病棟から回復期病棟の三階に移りました。
回復期といっても依然要介護ゆえナースステーションに最も近い病室。
各々のベッド回りをカーテンで仕切れる四人部屋で、我輩同様皆さんよほど調子が悪いのか終日カーテン閉じてらしてどんな方がいらっしゃるのか皆目分からず、また分かりたいという余裕ある心境でもなく周囲との会話のない日々がここで９月２７日まで続きました。日に三回の各種４５分間のリハビリのぞいてのベッド生活がこれで一ヶ月続いたわけです。
※ ながらくこのコーナー、本編逸脱の「閑話休題」掲載でしたが、実は入院時のエピソードや読んでいた本の感想評価など記したメモ帳紛失してしまい、かつ入院中の記憶もどんどん薄れてゆき・・・（今回の記述は３月に書きかけたモノ）。で、中途半端ですけれど我が病闘日記、今回で終わりとさせていただきます。
依然として左手足がマヒ状態で自力で立つことさえできぬゆえ移動は第三者による車椅子。
それで最悪なのがトイレに行く場合も転倒防止のためと便器に座るまで看護婦さんが付きっきりなこと。
「日本男子たるもの見知らぬ婦女子に尻みせるような屈辱は」とトイレ終了後一人で身じたく整えトイレ内に置かれてる車椅子に勝手に移動していては看護婦さんよく怒られました（日本男子ながら恥ずかしくもこの場合「すんません・・・」）
日頃仕方なく公衆洋式トイレ使用の際は便座にトイレットペーパーなど敷いて・・・という今までの我が潔癖主義など看護婦さんの目前で贅沢に主張できるわけもなく・・・でもこれにはすぐ順応（するもんですなぁ。でも退院後は元の潔癖症復活）
もっと信じられなかったのが、入浴です。
この三階では脳出血による記憶喪失はまぁ復活段階でしたが（※）、六階での入浴は一度ほどは記憶していて確か理学療法士男性のＨさんに手助けしてもらったんですが、この階での初めての入浴介助が二十歳代の女性が一人で！見知らぬ女性の目前で日本男子のいまや痩せ細ろえた肉体を晒すんですぞぉ・・・これにはショックでした。風俗行き慣れてる方は平気なんだろうけど。いや、うれしいかも。
ま、万引きなんぞも一度経験すれば二度目からは平気といいますが、その気恥ずかしさにも慣れるもんですなぁ・・・二度目からは三階での我輩担当作業療法士の男性Ｎさん主に女性数名が風呂場にいらしても平気に・・・後日Ｎさんに聞いてみました。
「女性患者にも男性が入浴介護するんです？」
「女性には女性です」
「そりゃおかしいでしょ！男にも男でしょ？」
「Ｓさんほどの年齢になればもう動じたりしないでしょ？やっぱり若い男の子はね、男がつきますけど」「・・・（動じたンですけど）」
（十代、二十代でも我輩と同症状の患者がいるそうですよ。キミ、ご注意を！）
※ 我輩と同年代の、名曲「想い出ボロボロ」「六本木ララバイ」のハスキーボイス歌手内藤やす子さんも１０年前に我輩同様、酒と煙草、不規則な生活習慣で脳内出血で倒れ、彼女は我輩と逆の左脳だったゆえ永く続く失語症や記憶障害に苦しんでいらっしゃるようですが、ま我輩は感覚マヒだけで済んだわけで。同じく、漫才師大介花子の大介さんは倒れても職業柄冗談だろうと思われて死の一歩手前までいったとか。我輩も発症時に常連さん方がいらしたら「また演技してるぅ！」だったかも。
依然として困ったのはマヒによる「味覚喪失」での摂食障害。
以前述べたように空腹感や喉の渇きさえも感じぬゆえ、食事時の水やお茶は脱水症予防や血液を薄くするためにと強制的に飲まされますが、昼食時に出る紙パックのアップルジュースまでは飲めず「部屋で飲みます」と病室持ち帰って隠しては貯まるわ貯まるわ。見舞客が来られるたびにこっそり持ち帰っていただいてました。
で、この三階では週に一度「体重測定」があります。
以前も述べましたが我輩入院前に６０キロほどだった体重がなんと１０日あまりで５１キロに激減！で、しばしの点滴生活に戻ったりもしました（※）
※ 見舞客「痩せれてうらやましいわぁ！」
我輩「ヘタなダイエットより１０日ほど有給休暇とってメシ食わんと寝とったらてきめんやで」
そんななか主治医に「体重が５０キロ切ると胃ろう手術せねばなりません。無理してでも食べてください」と腹に穴開けて云々の手術示唆され・・・病院朝食の主食は無塩食パン二枚、昼と夕食は白ご飯各２５０�弔世辰燭鵑任垢�、昼食もパンに変更してもらい（食感アリゆえだけの理由で。でも口にできたのは一枚未満）、夕食白ご飯も「もったいないですから」と半分の量に減らしてもらい、それでもふた口ほどが精一杯。
それゆえ、この病棟では病院食以外は見舞いの品でも口にできない規則でしたが我輩のみ特別に「なんでもお好きなものをお見舞いの方々に持ってきてもらって食べてください」と、これまた我輩のみ病人用の高カロリーアイスクリームを食後などに提供されていました。幸い味覚の甘みだけは感じ、言語療法士のＯ女史などは療法の合間に（言語や知能には問題ないゆえ時間持て余し？）菓子やコーヒーなど勧めてくれ、それらの中で三幸製菓の煎餅「雪の宿」のみその柔らかな食感とほのかな甘味で唯一のお気に入りに（※）
「この味覚障害は今後どうなるんです？」と三階での担当医に問うと「この症状は長引きます。とりあえず亜鉛処方しときましょ」・・・味覚障害に亜鉛が効果ありとは知ってはいたけれど「マヒ」に「亜鉛」？
・・・効果ナシでした。名医らしかったけれど・・・。
※ 「糖尿病に注意」といわれました。現在、甘みは感じても完全ではないのかコーヒーの砂糖スプーン一杯弱が一杯半に増え、今まで見向きもしなかった生八ツ橋なんぞもペロリに。
後日談ですが、病棟のベンチに座ってて「あれ、後ろポケットに何入ってんねんやろ？」とゴツゴツした痛みにうしろに手をやると、患者着にはポケット自体がありません。そう、お尻の肉が落ちて骨があたる痛みでした。・・・劇映画で収容所や貧民街の痩せ細ろえた人々が出てくるたびに「こういう出演者たちの手配って？」と疑問でしたが、たぶんボクたちみたいなのも使ってるんやな、と思いましたね。
退院後、２月末には喉の渇きの感覚が、３月に入ってようやく空腹感が蘇りましたが、依然として好物だった「焼き鳥」ふくめての「肉」「魚」や「米」の旨味分からず。で、体重はいまだにたった１キロ増えての５２キロ・・・。
尻の痛さは前回記した「椅子や脚立からの転落事故」もありいまだ回復していず、ヒビでも入ってんちゃうか・・・の状態。
★ 思い出せるいくつかのエピソード（以下）
９月２７日（日）一般病室に移動。
同室者三人に勝手にアダ名つけ、それぞれの方の面白エピソードをメモってたのにそれも失くしてしまって・・・。
たとえば、病室での個人的リハビリを指示されてても我輩二三度実行しただけでサボりつづけ、朝一番に枕元のボードにその日のリハビリ開始時間が記入されるんですが、「本日休み」なぁんてあると学生時代の自習時間的喜びを感じたり・・・理学療法士のＭさんに「今日は自主トレ何をどのくらいしました？」などと聞かれようものなら（何が何分やったっけ？）とパニクる始末なほどでした。
でも隣ベッドの「関東さん」（標準語喋るゆえのアダ名）、いつも廊下で歩行訓練に励んでました。で伺いました。「血液型Ａでしょ？」。当たってました。
よく「つらいリハビリを克服して現場復帰」なぁんていいますけれど我輩など「適当にやって復帰」の感。リハビリ中も理学療法士のＭさんに「Ｓさんってあまり落ち込んでませんねぇ？」と。要するに「脳天気」なんでしょうなぁ我輩。いや、この時点では後日知る「一生車椅子」との当初診断露知らず、「リハビリで改善します」の療法士さん達の言葉を単純に信じていたのとマヒが利き手側じゃなかったことにもよりました。まさに「病は気から」です。
１０月４日（日）杖での歩行可能に。
退院時に聞くところによると我輩、先ほど述べたように一生車椅子生活のはずだったらしく今回は奇跡的な回復だったとか。
で、車椅子を自分で操作する段階飛び越しての即杖使用で歩行してると看護婦さん達「あ！Ｓさん歩いてる！」。我輩の返答「進化した猿です」。それほどの進歩でした。
１０月１２（月）一人歩き可能に。
１７（土）と２０日（火）外出オーケーの日。
我孫子の店に行ってみると店内の観葉植物、すべて枯れ果てていて、ショック。
１１月３日（火）
初の外泊オーケーの日と聞き、それなら退院できるやろと、三ヶ月入院予定を早めこの初の外泊予定日の二ヶ月あまりで退院す（入院費もバカにならんもの）
でも運悪くこの日叔母が危篤との連絡はいり八尾市民病院まで。
後日、叔母死去。そしての葬式。
その疲れでか我が母が自宅で転倒し骨折、緊急入院・・・と病院づくしの日々が今も続いています。
そうそう、我輩入院中なぜか日頃口にしない麦焼酎のレモン入りロックが無性に飲みたく、退院した夜そのロックを八杯かつ瓶ビール、ウイスキーロックをあおり、椅子から転倒。頭を打って起き上がった途端また転倒。同じ箇所を打って血だらけに・・・懲りない我輩、でありました。
そんなこんなで今までと同様の深夜の仕事では「再発あり」と医者に宣告され、やむなく閉店に至ったわけです。
さぁ、これで今から皆さんに「閉店のお詫びとお礼状」を書き始めます。遅れてごめんなさいね。引っ越し荷物からアドレス帳がなかなか見つからなかったもので・・・事情ご存じない方々、ホントにごめんなさいね、突然の閉店で。
自宅をちょっとバー的雰囲気にしましたのでお気軽に飲みに来てください、無料です（おみやげは発泡酒でいいですから。あはは）
※ ビールはアサヒよりキリン派というほどだったのに、今まで見向きもしなかった第三のビールでも味の違和感なくって（味覚イカれてて）、一番安い６缶五百円未満のベルギー産ユーロホップで満足満足かつ安上がりで満足満足。
終わり！