79「ザ・スタンド」

10.30tue/2007

★ザ・スタンド

重さ2キロ。厚さ8.5センチ。P.1,425!
さ〜て、なんでしょう?

天才作家スティーブン・キングの超大作「ザ・スタンド」(文藝春秋)だ。本日早朝、読了。

本書は、新人作家のこの膨大なページ数の本の売れ行きを危惧した出版社が70年代に縮小版をまず刊行。ベストセラー作家となっての90年代にその完全版を。そしてその後10年かけての翻訳ののち、00年12月にようやく日本で刊行された、まさに超の名がふさわしい大作小説。

かねてより幻の傑作と称されながら未刊だったこの作品が翻訳されたとき、上下巻6千円もの値に手が出ず、ひたすら古書店に出るのを待って(これがなかなか出なかった)ようやく入手。
キングは80年代初期までの作品に傑作多いゆえ、昨今の作品に物足らなさを感じていた我輩、「読むのがもったいない・・・」としばらく手に取らなかった(そうこうするうち文庫版が出てしまったけど・・・)

半年ほど前にようやくページを開き・・・上巻の数十ページで、挫折。
登場人物が異常に多すぎるのだ。
キング本人でさえ執筆途中でその多彩なキャラクターの処理に頭を悩ませたというほどだから(その解決策はたぶん、次々に「死なせる」ことかも)
冒頭からフルネームで登場する何十人もの人々の誰がその後の展開で生き残るのか否かを見分けてなければ(失礼。本書は、軍事基地から致死率99%のウイルスが漏洩。人類破滅後の生き残ったアメリカ市民再生の物語)誰がどんな人物だったか混乱し、とてもとても読み進めることできず・・・。

で、今回ふたたび冒頭から読み直しつつ、感覚的にこの人は主な人物になるであろうと、その人物名と背景をメモ。
その数、少なくとも10余名。副主人公は数十名。
フルネームで登場し、数行で死んでしまうキャラクターは百人を軽く超えるのではないだろうか・・・。
そして、米国テレビシリーズ「ロスト」と同様、主要ストーリーに加え主人公各人の過去の人生ドラマが描かれ、全米各地で生き残った彼らがサバイバル旅行を経て、ある都市に終結してゆくという展開が緻密に詳細に書き込まれている。

「すごい」のひとこと。
よくこれだけの人物像を描き分けれるものだと感心。
飽きもせず読みきれた。
彼の傑作「呪われた町」が我輩ベストと思っているが、キング本人は「デッドゾーン」とか。その日本版ともいえる期待の小野不由美の吸血鬼小説「屍鬼」も大作だが、ただただ「長いだけ」の駄作。

ただ、あまりにも緻密詳細ゆえに(ま、これがキング作品の特徴で、ありえぬ話に真実味と迫真性を持たせてくれるのだが)ドラマチックさが多少そがれてしまったのではないか。いや、数々のドラマチックな場面がありすぎてなのかもしれぬが。

また、重過ぎて持ち運びできずで、毎夜寝ながら畳の上にドサリとそれをおいて読み続けなければならなかった。持ち上げることもままならぬ重さゆえ、その一定の姿勢は苦痛。
後悔は、その畳に米国地図を置いてなかったこと。
全米各地からある都市に続々と生存者が集まってくるので、州や国道の位置など把握しながら読むともっと理解が深まっただろうに。評価4/5。

★破滅小説

青春時代は米ソ冷戦時代。核戦争一触即発ということもあり、この種の人類破滅テーマの小説が数々刊行。読みあさった。
人気のない廃墟、そこを徘徊する主人公等にあこがれさえ抱いた。だって必ず美女と巡り会い、いってみればアダムとイブの世界から新世界をつくりはじめるパターンでしたもん。
核戦争、彗星衝突や謎の病気のみならず、海や草木が消滅した各世界でのサバイバルってのもあった。いまでもわが書庫(未整理)にそれら作品群、眠っている。この類の蔵書はちょっと自慢。

11.1thu.
★沈黙の教室

早朝から昼過ぎにかけて折原一「沈黙の教室」(ハヤカワ文庫)を一気読み。

読み始めると止まらなかった。
彼の叙述トリックものはたいていそうなんですが(叙述トリックは作者が読者を騙す作風とか)、本作も700ページ近い物語のラストに至るまで「このオチは、い、いったい、ど、どうなる?」との連続で、とてもではないが眠るなどできはしなかった。

かつて墓場だったという場所に建てられた町立中学校。なぜか異様な雰囲気の3年A組。そこに赴任した新任教師。何者かが発行する「恐怖新聞」・・・。

20年後、同窓会の告知が新聞に載り、その記事の切り抜きと同窓生たちに対する殺害計画書を持った記憶喪失の男(同窓会名簿にはない男)が、それら書類を自分が持っている原因を調べ始めて・・・という日本推理作家協会長編賞受賞作。
ふりかえれば??の箇所や、ラストのほんのわずかな物足らなさが残っての評価4/5だが、本作の途中で姿を現さなくなった人物を中心にした続編があるとかでそれら疑問等払拭できるのかもと、明日買いに行こう!的評価本。
※墓地といえば、小池真理子の「墓地を見おろす家」は「怖い」本。

11,2fri.
★「短編復活」

創刊15周年「小説すばる」掲載短編からのよりすぐりの16編を収録した「短編復活」(集英社文庫)読了。

「短編の冬」と昨今いわれてるとか。そういえば短編集なんて最近買わずだ。その経験からいうと、収録作品に「出来不出来」がありすぎるのだ。2〜3編良くっても1〜2編後味悪ければ評価がガクンと下がり、買わなけりゃよかったっと。でも思い起こすと大昔、短編集から好みの作家をみつけていたのだ。

で、この短編集は「さすが」だった。
総勢16名の作家全員がなんらかの賞を受賞し、かつベストセラー作家の作品集なのだから。16篇中、椎名誠の「猫舐祭」だけでしたか、「なんじゃこりゃ」は。
思いがけなかったのは、赤川次郎の「回想電車」
童話的文章がキライで読まない作家だが、ホームレスが過去のささやかな栄光を夢みながら終電車で死んでゆく物語は「ああ、こんな物語も書けるんだ」と。
同様に、暗いハードボイルド小説しか記憶にない志水辰夫「プレーオフ」は、ラストで「クスリ」と笑えるユーモア小説だし、東野圭吾「超たぬき理論」もバカバカしいほどユーモラス。綾辻行人「特別料理」は予測できたものの、ゲテモノ料理の究極の料理というオチが待ち構えていて・・・でも最高傑作は、再読の(かつテレビドラマでもみた)浅田次郎「角筈にて」。再読なのに、泣けた。評価4/5。

★「今夜の名言」

山本周五郎の秀作短編「ぼろとかんざし」を思い出させる、女性ホームレスの末路を描いた伊集院静「蛍ぶくろ」(「短編復活」収録)より。

奇妙なもので朝の足音と昼の足音、夕暮れの足音と真夜中の足音は違う。
夜明けの足音はふたつある。たっぷり眠って起き出した足音と、ねぐらに戻ろうとしている足音。ふたつの足音は響きが違う。眠っていた人の足音が力強いのは、あれはたぶん夢をたっぷり吸い込んだせいじゃないかしら。ねぐらにむかう人の足音がかぼそいのは、夢を皆吐き出してしまったせいのような気がする。でもどっちの足音も聞いていて、危なっかしい。それに比べて真昼の足音は安心できる。なんなのかしらね。たぶん半分重いものが取れて、ちょうどいい感じなのかしら。夕暮れの足音が、この暮らしをはじめた時、一番嫌だった。どこか他人を置いてけぼりにしてしまうような残酷さがあった。

※いまだ「今月のニュース」更新していませんが、明日3日(店やすみます)ある「ニュース」が決定する予定。これぞ「ニュース」!お楽しみに。

「ザ・スタンド」完

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