116「パラレルワールド」

10.23thu/2008
★ファンタジー?

日本語全然ダメなニュージーランド人の男性客4名さん来店。
今までいろんな国の方がいらしたけれど、ニュージーランドの方は初めて。
お一人がトイレから出てくるなり仲間になにやらまくしたて、ぞろぞろと皆がトイレをのぞきに・・・。
なんやねん、汚れてたか?と思ってたら、皆さんニコニコ。
どうやら「FANTASY!」らしい。
へぇ〜、である(いまだうちに来られたことない方、期待したらあかんよ)
ま、「NO1、BAR!」と、最後に握手と写真撮影ぜめにあい、まんざらでもないええ気分。
空調のダイキン・ニュージーランドの社員さん達だった。
ちなみにメインの飲み物は、日本酒、コロナ、アブサンのストレート。明日フライト。さよなら。

10.24fri.
★「今夜の本!」

立て続けに「面白本」を読む。
一冊は話題のベストセラー、1946年生まれながら本作でデビューという天野節子「氷の華」(幻冬社文庫)
主婦恭子にかかってきた夫の愛人と名乗る女からの電話。それが、彼女を殺人へと駆り立てる。しかし、彼女が殺したのは、本当に夫の愛人だったのか・・・。

う〜ん、松本清張の我輩好みの長編読んでる気分。
62歳にしてこのデビュー作、年の功と隠れた才能が同時に開花したのだろうか。うらやましい。
ハードリー・チェイスの「悪女イブ」は、死亡した友人の原稿を盗作しベストセラー作家となった青年が次作を書けず自滅してゆく傑作サスペンス。で、才能のない我輩などはドキドキしながら読んだものだが、いまそんなの手に入れても利用なんてできんやろなぁとの気弱に思う次元どまり、というのが我ながら情けない・・・。

・・・新聞で本作の宣伝文句読んでなければ意外性に満ちていたかも。
終始気になったのは即殺意を抱く心理状況と、中盤での「合鍵」。どう考えても第三者の合鍵なんて簡単に入手できンやろ?が気になっての、評価4/5どまり。

もう1冊は、8年前の第50回江戸川乱歩賞受賞作「カタコンべ」(神山裕右。講談社文庫)
前述の天野さんに比べ、神山さんは史上最年少(24歳)で乱歩賞受賞。
我輩この年になるとそんな若い人の作品なんてもう読む気もおこらぬが、舞台が未発見の大規模鍾乳洞。落盤により暗黒世界に閉じ込められた5人の男女。洞窟が水没するまでのタイムリミット5時間・・・と知るだけでもうワクワク。あとがきで紹介されてる「洞窟小説」、全部読みたいわ・・・。

・・・以前記した青春小説と犯罪小説が融合した「ロスト・エコー」の青春描写が鮮烈だったように、本書も極端にいえば犯罪からまなくても充分な面白さ。なのにこの作者、ケイビング(洞窟探検)経験なしとか!
その犯罪劇部分が少々荒削りか。洞窟探索を中止させないようにする箇所なども必然性感じず。水没後の巨大洞窟から遺体を捜し出せるものか等など・・・で、4/5。
※異様で気味の悪いさまをグロテスクという。もともとフランス語で、グロッドという「洞窟風の部屋」を意味する言葉が由来、ということを本書ではじめて知った。

なかなか評価5が出ないなぁ・・・と思っていたら、これが。
東野圭吾「パラレルワールド・ラブストーリー」(講談社文庫)、一気読み。
最初の1ページから我輩好みの展開。
ある区間並行に走る山手線と京浜東北線。
通学途中の主人公はいつも山手線のドアの脇に立っている。
ある日主人公は、隣接して走る京浜東北線のドアのところに立つ女性をみかける。その日から彼女に出会うのが楽しみになっての、1年。
就職が決まった主人公はもうこの時間帯に山手線に乗ることができなくなるという最後の日、彼は思い切って京浜東北線に乗る。
ところが、いつもの場所に彼女はいない。
落胆した彼はいつも乗る山手線の車両をぼんやり眺め・・・と、向こうの車両に彼女はいた。

手の届かぬ世界にいる彼女と、その彼女と暮らす世界が交差するパラレルワールドに迷い込んでしまった、先の読めない展開の恋と嫉妬と友情の物語。
読みながら佐藤正午の傑作「Y」を思い出していた。「Y」のほうがオススメだが、久方ぶりの、5/5!

その他作品。
仝屠棆阿任澆弔韻拭65年刊の「日の丸部隊」(藤井重夫。南北社)。定価380円。購入価格百円。

最近こういう古〜い戦記モノがなかなか手に入らぬ。当時生きた人々が描いているだけに心に残る作品が多いのに。
ドイツ海軍兵士の悲劇を描いた「鮫と小魚」、戦火をまぬがれるだろうとの恩情で配置されたドイツ少年兵が守る小さな橋に米軍戦車が攻め寄る「橋」、ポーランドのユダヤ人ゲットーの反乱と全滅を描いた「ミーラ街18番地」(爆撃後、石炭を落とされ燃やし尽されるのだ)、終戦間近徹底的に破壊、殺戮しその痕跡までをも抹消されたユダヤ人強制収容所の悲劇「トレブリンカ」、我輩の人生を変えた五味川純平「人間の条件」(これは文庫版あり)等など・・・。

本書は従軍記者であった著者の回顧録。
前線兵士の日常生活などが主に描かれている。いまだ入手できない彼の直木賞受賞作品「虹」とともに読んでみたかった、兵士と慰安婦の物語「火焔樹」の元になった実話が紹介されていたり、南海の孤島アナタハンでの史実と同様の「密林のアナタハン」などに興味をひかれた程度の作品集で、3/5。

⊃郡饒枉説と銘打った原宏一「床下仙人」(祥伝社文庫)
サラリーマン社会を奇妙な発想で描いた短編集。
会社勤めを辞めた我輩からしてもそれぞれ「奇想」なのは確か。が、すでにもうひとつの世界の出来事のようで、かつ短編というのが先の「日の丸部隊」同様、物足らぬ気分。最近我輩、重厚な長編志向ゆえ。3/5。

「パラレルワールド」完

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