147「高野山たどり着き隊物語」(夜の山道篇)

7.28tue/2009

★帰る方法

「おじいちゃん、提灯も懐中電灯もないとき、村の人は町からここまでどないして帰ってきたん?」
すると祖父、私たちに酒注ぎながら「マサキ、よ〜聞いてくれた!」と、その秘訣を話してくれた・・・。
(ここまでが、第2回のお話。さてこの続きは・・・)

祖父いわく。
「トンネルを越えて山道にさしかかると、木の枝を一本折る。それを左手に持ち左側の山肌をなぞりながら帰る。そうすれば右の崖下に落ちない。もうひとつは上を、つまり夜空を見上げながら帰る。いくら月が出ていない闇夜でも両側の杉の木立の間の空はほんのり明るい。その明るさから目をそらさぬようにして帰る」
我輩「う〜む」と、いまでもその方法を信じている・・・。

けれどあの真の暗闇を、木の枝一本持ってひとり歩くなんて、村の入り口には土葬の墓場もあり、とてもじゃないけどできないだろう我ら都会人には(枝じゃなく木刀でもイヤ)

★その山道を

ある夏の夜、眠れぬままバイクで大阪から高野山に登った。
大阪なら4時過ぎにはもうほんのり明るくなる時期。なのでその時刻めざし、予定通り山頂着。
が予想外にも、山中はその時刻でも真っ暗・・・。
かつ、前回記したように夏だというのに寒すぎて・・・トンネル出口で朝日を待ち続けれど寒さにもう耐え切れず、仕方なくスタート。
あの狭い真っ暗な山道を全力疾走で、谷に落ちぬよう振り向かぬよう左の山肌すれすれに、バイクも身体もあちこちこすりながら突っ走り・・・左の足の爪をはがしてしまった・・・。

拳法習得、かつ大柄なモリちゃんに(第2回登場)「おまえ、この村から町まで夜中歩いてひとりで行けるか?」と聞くと、「いやや・・・」
でもこの村出身の墨丸会員62号高野山の怪物にいわせると(我輩は高野生まれだがこの村でなく、大門近くのいまや原野の四十林班という地の営林署官舎で生まれ、すぐ高野山を離れた)、「マサキくん、なにいうてんねん!あの墓には代々の先祖が眠ってンねんで。悪さなんかするかい。それどころか守ってくれるわ」(何から守ってくれるというのだ・・・)
そういえば酔っ払ってバイク運転し、その墓場のカーブ曲がりきれず谷に突っ込んだことがあった。でも無傷だった・・・。
墓までたどり着くとホッとするのも確か。もう村の入り口なんだから。

★オオカミ返し

そうそう、この墓場で知ったことがある。
狭い墓場なので座棺だ。
で、同じ場所を毎回掘り返して使うので頭蓋骨は出てくるわ、運動靴のゴム底だけは腐らずに出てくるわ、土は栄養たっぷりなのか黒々とし・・・埋葬後、土饅頭の上に細く切った竹を弓なりに何列も刺しこんでいるのをみたことがある。

子供の頃、祖父に「あれ、なぁに?」と聞くと、「マサキ、よ〜聞いてくれた!」
それは「オオカミ返し」

埋葬後にオオカミが死体を喰おうと土を掘りかけると、しなった竹がオオカミの鼻先をバシッと叩き、追い払う仕掛けなんだそうな。
そしてその土饅頭が凹むと、「成仏した」と。それは、座棺の蓋が腐って内部に土が落ち込んだ時・・・。

★自殺者の呪い?

ここでまたもや思い出した。
高野山は霊山ゆえ自殺者が多いことを。

畑仕事をしている祖父に「あの摩尼山の上で鳥がいっぱい飛んでるで・・・」というと祖父顔もあげずに平然と、「まただれか死んどるんじゃろ」

昔、祖父の家で飼っていた紀州犬のポスがしばらく帰ってこないと思っていたら、ある日靴下の片方を咥えて帰ってきた。
祖父が「どっかの洗濯モン持って帰ってきて!」と頭をポンとたたいて叱ると、靴下がゴトッと落ち、中から人間の足首がゴロン。
山中で首くくると下半身がない姿で発見されるそうだ。野犬が食いちぎって。

叔父などは夜、車で帰宅途中、目の前を左側の山肌から何かがダダッと転げ落ち、そのまま崖下へ。イノシシかと思ったそうだ。が、後日知るところによると、崖のはるか下の民家庭先に傷だらけの男が。摩尼山で女子高生と心中しかけ死に切れなかった先生だったという。
また、その山道に車が止まっており、「通れんがな」と思って叔父がその車の中を覗き込むとホース引き込み、排ガス自殺の男が。幸い一命とり止めたそうで。

山仕事の村人が山中で段差を飛び降りたところ、ズボッ。
「うぁ、しもた〜。泥のなかに!」と思いきや、腐乱死体の上。
警察に届けると現場検証などで仕事が出来なくなるので放って置いたところ、夜中に高熱が。「こりゃタタリかもしれん」と怖くなりようやく届けたとか。
自殺者なんぞ珍しくもなんともない世界なのだった・・・。

★夜、一人で・・・

そんな山中をやはり一人っきりで歩くのはコワイではないか?
でも一度だけ歩いたことが・・・たぶん。

高校時代、一人で村に来ていた我輩のもとに学友のムネオくんが遊びに来ることに。
午後には着くはずの彼、いくら待っても現われない。
どんどん陽は傾き・・・とうとう夜に。
と、そこへ電話。山の下の村からだった。
「道を間違ってここまで来た学生さんがいらっしゃるが・・・」
祖父あっさりと、「迎えにいったり」
我輩「・・・はい」

いい年した若者が「夜道がコワイ」なん言えやしないわけで・・・。
仕方なく(ホント仕方なく)「あのアホ、ボケ、カス!」とムネオを呪いながら、例の山道ではなく山の下に向う谷川沿いの山道を懐中電灯を持って歩いたこと、今思えば、あれはホントのことだったのか、いまでも信じられないほどだ・・・。

しかし、この地は闇の暗さだけが怖ろしいのではなかった。
あの山道で我輩は、不可思議なことに遭遇してもいるのだった・・・。

「高野山たどり着き隊物語」つづく

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