180「ノンフィクションの夜」

5.17mon/2010)

★グリコ

一橋文哉の力作ノンフィクション二作品(新潮文庫)を読む。

「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」は、かいじん21面相と目されるXなる人物にまでも迫り、また金大中拉致事件との関わりを匂わせたりと「う〜む」の力作。
が、未解決事件ゆえのもどかしさが残るのが難点。
巻末資料の「かいじん21面相の挑戦状」は一読に値。

「おい、21面相、民主党の小鳩チームに挑戦したれや」なぁんて不遜なことを思ってしまうほど彼らがカシコかったことが分かった。評価3/5。

★宮崎

80年代の連続幼女誘拐殺人事件の「宮崎勤事件」は、副題に「塗り潰されたシナリオ」とあるように「裁判でも明らかにされない真相」が白眉。

宮崎は中学時代から数理パズルの作成が得意。
で、折句というか、頭の文字を取っていくとある単語や言葉になるような文章を細かい字でびっしりと学級日誌に書き込んだりし、例えば年賀状では「明けまして」のア、「初夢どうだった?」のハという風に、すべてを繋げると「ア ハッピィ ニュウ イヤー」となる文面を作って周囲を驚かせていたとか。

幼女の遺骨と共に被害者両親宅に送られた「今田勇子」名によるメモ、「真理、遺骨、焼、証明、鑑定」や「絵梨香、かぜ、せき、のど、楽、死」をローマ字に直し並び替えると、「T・ミヤザキ、箱詰め、家に送る」もしくは「ミヤザキツトム、箱に入れ、消え」「ミヤザキツトム、綺麗に、箱へ」や「生き返させられず、気の毒」などと、犯人実名入りの文が解析でき、取調べ中の意味不明な返答もこうして解析してゆくとある答えがでてくるとか。

このことが公判に出なかった理由は、警察幹部いわく「宮崎は完全犯罪を狙い、自ら書いたシナリオに沿って事件を起こし、彼の不可解な言動はすべて演技だった。が、異常性がさらに強調され公判が維持できなくなるので 明らかにしなかった」というのだ。

池田小児童殺傷事件の宅間守は、精神異常を装っていたことが発覚しての死刑判決後も、弁護士にこっそりと「やはり自分は異常やと思う。責任能力を争ってほしいんや」と訴えてきたというが、演技がバレるようなヘマを犯していない宮崎は、面会に来た父親に「俺は絶対、死刑にならないよ」と胸を張ったとか。

本書の内容通りだと、幼女の骨肉を食べたということをもふくめ、常人には想像も及ばないほどの知能犯である宮崎勤は「羊たちの沈黙」のレクター博士を彷彿とさせるほどの人物ではないか。ただ、本書のような作品は被害者両親の目には決して触れさせたくない代物。親やったら気狂うわ・・・。評価4/5。

★モンロー

5.21fri.
伊佐千尋のノンフィクション「検屍」(文春文庫)も読む。

1952年に渡米しロスアンゼルス検視局長の地位にまで昇りつめ、マリリン・モンローやロバート・ケネディの検視を手がけたトーマス・野口との対談ページに興味。

「私のネグリジェは、シャネル・ナンバー5よ」とゴシップ記者に語っていたモンロー、実際は胸の形がくずれないようブラジャーだけはつけて寝ていたという。
が、大量の睡眠薬による全裸死体で発見されたという点からの、直前まで男と一緒だったという説、かつ愛人ジョン・F・ケネディ大統領の命により殺害された等など、さぁ、その事実は?興味あるではありませんか。

野口博士の検視によれば、死の直前の性交事実なし。
睡眠薬を常用していた彼女は薬を飲むのが下手で、一錠の錠剤を飲むのにいちいちグラス一杯のシャンペンとともに飲み下さねばならなかったはずなのに、なぜ40〜50錠も飲み物なしで飲めたのか。しかしながら無理に飲まされた形跡一切なし。ただ野口博士は、自殺か他殺についての断定を避け、死体検案書には「自殺と推定」と。20%は他殺の疑いもあるという。

さらに謎は残る。
モンローの部屋のサイドテーブル引き出しの鍵が壊され、中に入っていた手紙が消えていた。差出人が愛人の一人ケネディの弟ロバートで、死の直前まで電話で話していた相手もロバート・ケネディ(通話記録にもあり)。それら事実を現場で目撃していた家政婦マレー夫人はその後、行方不明に。

ケネディ大統領暗殺の際、地元ダラスで検死解剖すべきところ、シークレットサービス等の前例のない横槍でワシントンに死体を運ばれ、後の「疑惑」が生じてしまったという話など初めて知ることも多いけれど、いかんせん、刑事司法のあり方を問うという本書、あまりにも教科書的内容かつ少々難解で、評価3/5。

「ノンフィクションの夜」完

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