183「魔がささなかった夜」

6.1tue/2010

★ひとり酒

先日の181魔がさした夜」読んだ墨丸会員734号チャン氏が、「マスター飲みに誘うの、もうやめます」って。
でもあのようなことはたぶんにその夜の、我が心の根底によどむ気分の問題。躁と鬱でいえば、たまたま鬱的な夜であったというだけのこと。たぶん・・・。

だって6月スタートのこの夜、なぜかぬる燗酒が無性に飲みたくなり、1時50分にお客切れたのを幸いとばかりにネオンを消し(消してしまい、でなく)、例の「北東方面」ではなく北西方面にでかけた。一人で(一人だけで、という表現でもなく)
最近「家飲み」ならず「(自分の)店飲み」ばかりで、久しぶりの外での飲酒。人が作ってくれるおいしいアテも食べたいし。

一軒目は前夜に墨丸にきていただいたお客さんの店、我孫子の酒処「すず」
一応3時まで営業であとはお客次第という、3ヶ月前にオープンしたお店。

待望の燗酒。
・・・熱すぎました。徳利が持てませんでした。
待望のアテ。
・・・我輩の好きな生もの(刺身とか生レバー)、焼き物(焼鳥とかホルモン。豚肉と秋刀魚だけはあったけれど、これは自炊でもう食べ飽きて論外)の類なく、我輩苦手な揚げ物メインのお店でしょうか。それらが残念。
が、二杯目のにごり酒ようやく飲み終える頃、大将が別種のにごり酒サービスしてくれ、ま、これで何度目かの「北東」的事件には至らずで・・・。

二軒目のバー「晴イエス」に向かう頃にはもう酔ってました。
こうして一人でハシゴするのは何年ぶりでしょうか。
「すず」でも墨丸に来られるお客と偶然出会ってしゃべり、バーでもアーリタイムズ片手にマスターとしゃべり、ま、我輩、一人で飲みに行っても孤独感にさいなまれぬタイプと思いつつ、このしゃべりの根底はやはりさみしいのかも・・・。

三軒目は、朝まで営業している「風太」
「マスター、今年初めての来店ですよ!」といわれ、「最近一緒に飲みにいける相手いなくって」と客の途切れた店内で大将とふたり、マグロの頬肉ほうばりながらビール。

あ〜、すっきりした。明日からがんばろ〜!(チャンさん、飲みに誘ってや!)

6.2wed.
★「今夜の本!」

帚木逢生「臓器農場」(新潮文庫)読了。
著者頂点の作品「三たびの海峡」(吉川英治文学新人賞)、「逃亡」(柴田錬三郎賞)を読んで以来、彼の作品から遠ざかっていて本書も俗受けするような題名で手にしていなかったのだが・・・。

山腹に建てられた総合病院。山中の天目池と樹齢五百年の虎の尾桜。ケーブルカーで通勤する主人公の新人看護婦。知恵遅れながら純粋なケーブルカーの青年車掌。現職が医師という作者ゆえの興味深く描かれる病院の世界・・・と、本書は舞台と登場人物が「生きて」いる。

主人公が偶然耳にした「無脳症児」の言葉(ビタミンAを過剰摂取すると生まれやすいんだって)。理想的な職場ながら一般職員が立ち入ることのできない謎の「特別病棟」と、物語は明と暗の世界を織り交ぜながら、臓器移植で名を成せる病院の暗部に主人公はいつしか足を踏み入れて・・・というサスペンス。きほどの「舞台と人物が生きている」ことがページをめくる手を早めさせ・・・。

前回紹介した奥田英朗「オリンピックの身代金」同様、背景と人物像さえしっかり描かれていればほぼ物語って完成じゃないか、とも思わされた。
惜しむらくは(というより多少ひっかかるのは)、親しい人々の悲惨な死に遭遇した主人公がタフ過ぎること(我輩だったら発狂しそう)、一流病院が殺人というリスクを負うのだろうかという疑問、医師の遺品に書かれていた主人公に対する想いの文章などが高揚した気分に水をさしたようで、評価4/5。

6.4fri.
帚木逢生「閉鎖病棟」(新潮文庫)読了。
本書の文庫版は10年以上も前の発売なのに、最近書店で平積みになっていたのはなぜだろう?
自宅に未読の本書はあるけれど、冒頭登場のチャン氏いわく「『臓器農場』より本書のほうがオススメ」ってんで、古本屋で再購入。かつ山本周五郎賞作品で、期待。

主要人物それぞれの過去が描かれる導入部は読ませる。さらに期待。
そしての現在描写。中盤から描かれる彼らが収容されている精神病院が舞台となる。
う〜む。
毎夜、酔いと眠気のなかで読むので、ここからがつらかった・・・。
主要人物以外に、ドウさんやらチュウさん、サナエちゃん、キモ姉さん、イナバさん、ナツメさん等など、カタカナ名の患者がぞろぞろ。誰が誰か分からなくなってきた。
お客さんのなかで「翻訳ものは嫌い。登場人物を覚えられん」とおっしゃるのが分かるほどで、「これが受賞作かよ・・・」

が、ラスト。
市井の人々のやさしさを描く山本周五郎さんの賞と思えば「う〜む、ゆえに受賞作なのだな」と、涙にかすむ目を閉じて納得。評価、かろうじて4/5。(注:シラフで読むべし!)

★「今夜の名言!」

先輩看護婦が主人公に言う、「雨の日は自殺が少ないのだって」
つづけて、「自殺が多いのは雨上がりだって。それもパーッと晴れ上がりそうなとき。雨がジトジト降っている間は、外の暗さと自分の沈んだ気持ちが折り合っているのね、きっと。晴れそうになったとき、その落差にいたたまれなくなるのだわ」
なるほど。分かるような気がした・・・。
臓器農場」より

「魔がささなかった夜」完

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