197 「宇江佐真理さん」

11.24wed/2010

★懐かしき友

今月は懐かしき方たちが相次いでご来店。
お一人は、我輩がサラリーマン時代の東京三鷹でアルバイト大学生として働いてくれてた東京調布の小嶋くん。
確か十数年前の墨丸1号店時代と2号店にも彼が大阪出張の際にそれぞれ来店。今回、容姿変わっていないようでも彼ももう50歳。大学卒業時、我輩多少関係していたリース会社に紹介就職し、いまや支店長(わし雇ってくれぃ!)

もうお一人は、6年間サンフランシスコに出張滞在していた墨丸会員458号の通称キムラ署長。
今回は上海転勤とかで、その関係で大阪本社に出向いたのを機会に来店(米国の自宅に招待されてたのにとうとう行けずじまい。でも赤色中国なんぞは行かんぞ!)

お二人共に積もり積もった「お話」を伺いまして、う〜む「指輪事件」と「ブラジル事件」が面白かったですなぁ(お二方、私生活には気をつけたまえよ〜)

★ 「宇江佐真理」って、ご存知?

蒼井優主演の時代劇映画「雷桜」のテレビコマーシャル、まるで学芸会のそれ目にすると映画見たい欲求ゼロに。先日古本屋でたまたま原作本目にし、「へ、原作あったんや。どんな内容なんやろ?」と手にとった。

解説、北上次郎さん。我輩と僭越ながら本の好みのあう書評家。
本書解説冒頭が「美しい小説だ。心に残る小説だ」
文庫本帯のうたい文句が「行方不明から15年ぶりに帰還した女性の数奇な運命とは・・・」
うむうむ、面白そうやんか。あの蒼井優のイメージ払拭するのが大変やけどと思いつつ本書購入。

北上さん、作者の宇江佐真理さんについて「(彼女の)凄さは、そのどれもが傑作であることで、こういう作家が数少ないことは書いておく。特に「髪結い伊佐次」シリーズから一冊選べ、と言われたら絶対に頭をかかえてしまうだろう」

う〜む、この作者ってそんなに凄い?
宇江佐さんは1949年生まれで、デビュー作が1995年の「幻の声」。遅咲きのこの作者のこと、我輩知らなかった・・・。
で「雷桜」読了後、彼女のその他代表作を購入。

それぞれの解説者が、常盤新平、中村彰彦、阿刀田高と、そうそうたる顔ぶれ。
我輩の感想に最も近いのが阿刀田さんの評で「江戸の人情風俗を描くのは抜群だが、反面ストーリーが弱い」と。
確かに、「この言葉の意味は?」と、あとで辞書で調べようとページ折った回数のなんと多かったことか。それら当時の語句に多少戸惑いながらもどんどん読み進められる良さあるものの、全作品が(「雷桜」のぞき)短編集。それゆえの物足らなさがあり・・・。
でも昨今の血や暴力、不信渦巻く作品群にどっぷりつかっていると、例えば男は男であり女は女であり、そして気持ちが通じ合うというこの時代のホロリとする話の数々に癒されること大。「日本って、そして時代小説っていいなぁ・・・」と。

※宇江佐さんの時代風俗描写は凄いです。
よくこんな事細かなことまで!ととにかく感心。
中国を舞台にした作品でも有名な浅田次郎さんは、もともと中国の歴史が好きだったから舞台にするのになんの苦労もなかった、というようなことをおっしゃってましたが(中国関係の文献自体、中国本土より日本のほうが豊富とか)宇江佐さんもそうなのだろうか。当時の「髪結い」についてなど宇江佐さんの作品で初めて知るに至った。

さて今回読んだのは・・・
「雷桜」(角川文庫)直木賞候補
「幻の声 髪結い伊佐次捕物余話」(文春文庫)オール読物新人賞
「余寒の雪」(文春文庫)中山義秀文学賞
「深川恋物語」(集英社文庫)吉川英治文学新人賞

どれもこれも甲乙つけがたし。
「捕物帳」物など興味のない我輩だけど、シリーズ一作目の「幻の声」では髪結いで同心手下でもある伊佐次、彼の思い人で芸者のお文、同心の不破友之進、妻のいなみら、当初なんの魅力も抱けなかった彼ら(特に同心の不破)、この連作短編読み進むにつれ急速に親しみを覚えてしまう構成に。
また捕物重視でなく、犯人達も悲しい過去を持ち単なる悪人でない点もまたいい。
北上さん同様、彼ら四人の行方が気になってこのシリーズ、我輩も読んでしまうだろうなぁ。かつ彼が言うように各短編に駄作がないのは凄い(「傑作」は言いすぎかも?)
各作品に辛らつな評を下していた阿刀田氏が絶賛したのが「深川恋物語」。四作のなかで最もホロリとくる作品集だ。評価全作4/5。

※連載紹介している本、読みたい方に貸出中。溜まったら自宅送りか古本屋行きとなりますので、お早めにお申し出を〜!

「宇江佐真理さん」完

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