231「うちはウサギの子、ダミンやねん」

1.30/2012

この物語は昨年12月、墨丸にやってきたウサギの子のお話。
今回に至るお話は、227「七代目」の項でどう〜ぞ。

★ 第1話「うちの父ちゃん、怒らはってん・・・」

うちの部屋、カウンターの中の通路にあんねんけど、父ちゃん仕事終わらはったら窓際のベンチに部屋移してくれはんねん。うちを陽に当ててくれるねんで。やさしいやろ?

あんな、その前はな、父ちゃんのベッドの枕元にうちの部屋置いてくれてはってん。
扉も開けっ放しにしてくれて、うち、父ちゃんの布団に乗ったりして遊んでてんけど、うち昼間は眠とうて夜は元気やねんわ。これって夜行性っていうんやで。うふ、こんな難しい言葉よう知っとるやろ?むかし一緒やった仲間の姉さんが教えてくれてん!

ほんでな、父ちゃん眠ってるし、うちだけ遊ぶんも飽きてくるやん?
そやから寝てる父ちゃんの髪の毛かんだり首筋に鼻先寄せたりしててんけど、それがアカンかったんやろか?うるさかったんやろか?

・・・で、いまはね、父ちゃん仕事終わらはったらうちの部屋、そのベンチの上にばっかし置きはんねん。
後ろ足で立ったら父ちゃん寝てるとこ見えるねんけど、ずっと立ってるのんてしんどいねん・・・そやから今ちょっと寂しいねん。

けど、この間からベンチの時も扉開けててくれはんねん。
うちを小屋とつないでるヒモもはずしてくれてるねんで!
前はね、うち、そのヒモかじって切ってベンチから飛び降りてかくれんぼしたことあったんやわ。
父ちゃんなかなかうちのこと見つけられへんかって面白かってんけど、見つかってしもてから首に鈴つけられて、かくれんぼ出来れへんようになってしもてん・・・。
ほんでもな、今はすぐそばのテーブルにも乗り移って遊べるように部屋とテーブル近づけてくれてはるんや。やさしいやろ、うちの父ちゃん。

そんなやさしい父ちゃんやのに「彼女」おれへんねんて。
そやから仕事終わらはったら父ちゃん酔ってはるやろ、ほんでうちにばっかり喋りかけてきやはんねん。「はよ、人間に変身せえやぁ」なんて・・・けど、うちってウサギやろ、父ちゃんナニいうてはんのかよう分からへん・・・はよ父ちゃんの言葉覚えたりたいわ。

ほんでもうちの名前なんていうんか大体分かったわ。
ダミンっていうねんで、うちの名前。
・・・たぶん。
たぶんっていうんはね、ときどきうちに「ぶちぶち!」とか「てっかめん!」っていわはんねん、父ちゃん。
これって最初、お店のお客さんのきれいなお姉さんがいわはってんけど、うちの毛が白と黒やさかい「ぶちぶち」なんやろか?
ほんでも「てっかめん」ってなに?それだけはどうしても分かれへん・・・。
うちもまだ生まれて五ヶ月やさかい分かれへんでも当たり前やんね?
アホちゃうやんね?
・・・もしかしてうちってアホなん?
だれか教えてや、なんで「てっかめん」って呼ばれるん?

そしたら、うちの部屋の横の椅子の上に腹話術のお人形さん座ってはって、その子いっつも目、横向けたままでうちのこと無視してたんやけど、そのとき初めて喋りはってん。なんていうた思う?
「お前の顔が無表情やから鉄仮面っていわれるんや!」って。目、横向けたままでやよ。失礼やんか?な?

ほんでも、鉄仮面って教えてもろてもなんのことか分からへんし・・・ん?うちって、無表情なん?
いま仲間おらへんけど、前に一緒にいた仲間はうちとおんなじような顔してたと思うんやけど・・・。

で、そんな意地の悪いこといわはるお人形さんにいうたってん、「あんた、その目、横向けたままで喋りなや!あんたなんか父ちゃんに口動かされてるだけやんか!小さい子、あんたの顔見たら怖がって泣くっていうで!うちは可愛いって父ちゃんにいわれてるねんで!父ちゃん、人間の女の人でもウサギ顔好きやっていうてるし・・・」って。

そしたらその子黙ってしもて、「あ、いいすぎた・・・」ってちょっと可哀そうになって・・・。というのはね、その子、うちがここにもらわれて来るまでは父ちゃんと結構仲良かったみたいやねんけど、うちがきてから父ちゃんその子とあんまり遊んだらへんみたいやねんか。そやけど人間とちゃうのんってうちらだけやし、「ごめんな、仲良うしょうな」ってあやまってん。

ほんならその子、「そやな、ちょっときつういいすぎたわ。こっちこそごめんな。あんな、ボクの仲間みんな横むいてんねんで。病気ちゃうで、無視もしてないで、いうとくけど。こんな形に作られてるみたいやねんわ。ほんでもこれで仕事してる父ちゃんの方ばっかし見れるから結構幸せやねんで」

この子なかなかええ子やねんな、って思てたら「おまえここに初めて来たときもな、アッ、友達になれそうな奴きた!ってちょっとうれしかってんで。そや、ボクおまえより年上やさかい、今日から兄ちゃんになったろか?」やって。
年上やったんや!こっちが失礼やったわ・・・でも、いっぺんに父ちゃんと兄ちゃんと友達できてしもた!うれしいわ!

で、お兄ちゃんも名前「ダミン」っていうねんて!
うちと一緒やで。
お兄ちゃん教えてくれたんやけど、ダミンって名前、最初は金魚さんから始まって、うちでもう七代目やねんて。お兄ちゃんは六代目やって。
みんな「だみんをむさぼる」って言葉からその名前ついたらしいねんけど、うち、だみんってなんのことかよう分からんへん・・・。

みんなダミンやからか、お兄ちゃんは父ちゃんに時々「おまえ」って呼ばれてるんや。
うちはブチブチと鉄仮面で名前みっつやけど、お兄ちゃんも名前ふたつあるわけや。
・・・ん?お兄ちゃん、うちのことも「おまえ」ってなんで呼ぶんやろ?あ〜、わからへんことばっかしや!
でもうちがお兄ちゃんのこと「おまえ」なんて呼ぶのん、なんか失礼みたいな感じやから、今度から「お兄ちゃん」って呼ぶことにしてん。

ほんでな、お兄ちゃんに「もっと教えて欲しいことあんねんけど・・・」っていうたらな、「なんや?あんまりむつかしいこと聞かんといてな。ボク、おまえとちごて脳みそもないから」やって!
で、「ないのん!?ほんでコワイ顔してるん?」っていうたら、「コワイってのは、なんか先入観念やろ。コワないで、自分からは動けれへんし。ま、その分おまえみたいに大喰らいちごてなんも食べんでもいけるんやけどな」やって。

センニュウカンネンやオオグライってなんのことかよう分からへんけど、なんか失礼そうなことみたいやけど、だんだんお兄ちゃん好きになってきた・・・。
ほんでまた「ごめんな」って謝ってから教えて欲しいこと聞いてみてん。

「あんな今日な、『こらっ!』って父ちゃんに大声出されてん。びっくりした。怒られたんはじめてやったから怖かったわぁ。ほんでうち、なんで怒らはったんやろって考えてんけど分かれへんねん。もうだいぶ時間たってんのに、父ちゃんまだ怒ってはるみたいやねんか。オヤツくれる時間とっくに過ぎてんのに、まだくれへんねんで」

「おまえ、なにしてん?」
「あんな、ベンチの横に窓あって、そこにいっぱい草生えてるんやんか。知ってるやろ?うち、毎日牧草ばっかし食べてるから、それ青々してておいしそうやなぁ思て、ふたつ食べたんや。器のなかのそれ土だけになってしもうたから、横の方にもいっぱいある草食べよ思て、首のばしてたら『こらっ!』って。あれ草やから食べてもええんやんなぁ?そのあと父ちゃん服着替えて、着替えはったらいっつもどっかいかはんねんけど、そんときは『いってくるわ』っていわはんのに、今日はなんにもいわんと出ていかはってん。怒ってるみたいやろ?ほんでもね、帰ってきやはったら『ただいま』いうてくれはったから、もう怒ってないんかな?ほんであの土だけの器に新しい草植えはってん。な、またうちのために植えてくれてんで!やさしいやろ、父ちゃん。はよ言葉覚えてお酒の相手したりたいわ!」

「おまえはやっぱりアホか。あれは父ちゃんの大事な植木やねんぞ!」とお兄ちゃんはいいかけて、出来たばかりの妹をキズつけたらアカンと心の中で留めました。
で、「あ〜、たぶんな、おまえが食べたら病気になる草ってあんねんで。それ心配したんやと思うわ」
「ふ〜ん、うちが食べれる草植えてくれたらええのにな?」

ここ墨丸での人形ダミンは毒舌で有名なので、というより毒舌しか云えないように仕込まれているので、「おまえ中心で地球動いとるんとちゃうんや、アホ!父ちゃんいっつもいうてるようにおまえら女って子宮でモノ考えて・・・」といいかけましたが、心の中にふたたび留め置きました。
だって、この墨丸で初めてできた友達であり小さな妹でもあるからです。

さてさてこの後、この一匹(羽)と一体のダミン達の運命は如何に?
不定期で、たぶん続く?

「うちはウサギの子、ダミンやねん」つづく?

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