232「うちはウサギの子、ダミンやねん」

2.13/2012

★ 第2話「ウサギ鍋の恐怖」

「お兄ちゃん、なんかおしゃべりしてや」と、ウサギの子ダミンは自分の部屋の横の椅子に座ってる腹話術の人形ダミンにいいました。

「おまえも女やなぁ、喰うんとしゃべるしか能ないんか?父ちゃん、お客さんにグチこぼしとったで、女ってホンマしゃべりやなぁって。車に女の子らが同乗しとったら、ファミマみかけたら『あ、ファミマ!』、吉野家みかけては『あ、吉野家!』なんて、なんかごっつい発見したみたいに口走るあの神経分からん、って」
「うん!うちそのファミマや吉野家って知らんから、うちも見たらそういうと思う!」
「はいはい、わっかりました!もうしゃべらんといて!」
「ほんでもうち、こんな狭い部屋ん中やから食べるか毛づくろいするかお兄ちゃんとおしゃべりするか、他にすることないんやもん」
「ま、それはいえるな。原始時代、男は狩に出かけて苦労してんのに、おまえらはぬくぬくした洞窟んなかで女同士無駄口たたきながら過ごしてたっていうもんな。その時代の名残らしいで、そのアホなしゃべり。そや!でもな、父ちゃん、お客さんに『ウサギの子、散歩連れったりや』ってよういわれてるねんで」
「え、ホンマ!うちまだお外見たことないねん!」
「ほんでもなぁ、『こんなおっさんがウサギひきつれて外歩けるかい!格好悪い!』っていうてたわ」
「え〜!こんな可愛いうちと一緒に散歩すんのん、父ちゃん恥ずかしいん?」
「ま、ボクは一応男やから父ちゃんの気持ち分かるなぁ。大の大人がネズミみたいなちっこい洋犬散歩させてるの見かけただけで父ちゃん、『日本は終わりや!』って嘆いてるもん。ま、おまえはその部屋で死ぬまで飼い殺しや。あ〜、可哀そ!あ、そや、ちゃうわ!父ちゃんいうとったけど、おまえ太らして年末にお客さんらとウサギ鍋するっていうとったわ!わぁ〜、もっと可哀そ!」
「お兄ちゃん、なんかうちに恨みあんのん?」
「まぁ、兄妹ってのは人間の世界でもこうして兄は妹をいじめるもんや。可愛いもんに対するひとつの愛の表現やなぁ。感謝せえよ、出目金ウサ子」
「出目金ってなんなん?」
「おまえのその目が、出目・・・あ〜、もうおまえとはしゃべりとない!」
「あ、あ、ごめん!・・・あのぉ、また聞いて悪いけど、そのウサギ鍋ってなんなん?」
「もう!つくづくアホな女とは会話できんわ。父ちゃん日ごろいう通りや。あんなぁ、鍋ちゅうんは、鉄の入れモンでお湯をぐつぐつ煮えたぎらせて、そんなかにおまえの好きなニンジンや白菜入れて・・・」
「わぁ〜、うちもそんなん食べてみたい!」
「アホか・・・あんなぁ、そ〜しておまえもそんなか入れて人間様が食べるんやで!ボクもちょっと食べてみよっかなぁ」
「お、お兄ちゃん!頭おかしなったんか?!お、お父ちゃんがそんなひどいことするわけないやんか!うちなんにも悪いことしてないのに!・・・たぶん」
「ほら、たぶんっていうたやろ。思い起こしてみ、最近おまえの部屋、窓際とちごて入り口のテーブルに昼間置かれてるやろ?」
「・・・うん、なんでかって思てた」
「おまえ、父ちゃんの植木食べてから、ベンチから横のテーブルに移されて、今度は入り口のテーブルやろ?なんでかいうたらな、なんでも齧るバカな妹ウサギよ、この間おまえ、窓際のテーブルのビニールクロス齧ってボロボロにしたやろ?」
「・・・だって、うちらってそんなんすんのん当たり前とちゃうん?」
「最後までボクの話聞け!ほんで入り口のテーブルに移されてからは、ボクもまぁちょっと感心したんやけど、あんな高いテーブルから飛び降りて、父ちゃん追いかけてんのに逃げ回ったやろ?あちこち齧りながら!ほんでまたヒモにつながれても、今度は父ちゃんのベッドに飛び移って父ちゃんの電気毛布齧ろうとしたやろ?感電すんねんど、あれは。
おまえってちっこいから父ちゃん買うてきてくれたんやで。父ちゃん、普通のウサギって太りすぎた中年オバハンみたいでキライやねん。ガツガツなんでも食べとったらはよ太って年末までに喰われるど」
「・・・・ホ、ホンマ!?うち、太ってしもたらホンマに食べられるん?」
「おまえおちょくんのん疲れるわ。ボクとちごておまえは脳みそあんねんからちょっとは考えや!あの父ちゃんがホンマにそんなことする父ちゃんかそうでないかぐらい分かるやろ!?」
「そ、そやんなぁ!父ちゃん、あんなやさしいからうち食べたりせえへんよなぁ!」
「ざ〜んねんでした!答えは、食べちゃう父ちゃん、でしたぁ!」
「と、父ちゃん!もう悪させえへんから、おりこうにするから、うちのこと食べんといて!お、お願いや!」

父ちゃんはそんな会話のことなど露知らず、せっせとウサギの子ダミンの夕食を作っているのでした。ウサギの子を食べる目的ではもちろんなく、です。
そ〜して、春になったらダンボール箱にウサギの子を隠し入れて大和川に持ってゆき、人気のない土手でこっそり遊ばしてやろうかな、などと考えているのでした。

「うちはウサギの子、ダミンやねん」たぶん、つづく?

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