264「ある、ドキュメント」

13.1sat/2014

★衝撃的

昨年末の放映でしたか、録画分でみたNHKのあるドキュメンタリー番組は衝撃的でした。

以前紹介の「日本兵サカイ・タイゾーの真実」、原一男監督「ゆきゆきて、神軍」、平野勝之監督「監督失格」(これはまぁ、ラストの部分だけが凄いんやけど)に匹敵するドキュメンタリーの傑作が、「完全解凍アイスマン 5000年前の男は語る」!

昔むかし「狩猟中に遭難?アルプスで発見された古代人」新聞記事思い出し、「へぇ〜、今ごろ放映?」と思いきや、今日に至るまで死体解凍調査は技術的に実現不可だったと(知らなかった)
で、発見後20年間も冷凍保存されていたというその、名付けて「アイスマン」検証がイタリアでようやく可能となったというのです。

1991年9月19日、例年に比べ暑い日々が続いていたイタリアとオーストリア国境のエッツタール・アルプス3210mの、登山道からはずれた場所でドイツ人夫婦が雪に埋もれた、左腕を体の下にした奇妙な姿勢の凍死体を発見。

遭難救助隊が「パスポートか名前が刻印された結婚指輪があれば身元はすぐ判明するでしょう」と麓に運んだところ、見慣れない持ち物、衣服が先史時代の物ではないかと・・・。
で、調べを進めると、世界最古のメソポタミア文明初期の(日本では縄文時代)、なんと5300年前の古代人と判明!
「身長160センチ。体重50キロ。46歳前後」の男は、なぜ標高三千メートルもの地点で亡くなったのか?
・・・狩りの途中で吹雪に遭遇しての凍死、が当時の見解でした。

ま、番組見始めたこの時点、単に「へぇ〜」でした。
が・・・!
世界最古の冷凍ミイラというだけではなく、加工されたいままでのミイラと違い、脳をはじめ内臓すべてが完璧な状態で保存されている、いわば「自然のミイラ」
ということは、5300年前の情報が手つかずで残っているわけで、「考古学の至宝」「人類の歴史を塗り替える」「前代未聞のプロジェクト」という番組うたい文句そのままの、古代人の驚くべき姿が次々と明らかになっていく驚異的な番組だったのです(未見の方、これはもう人生でのある意味で損失ですぞ)

各国の専門家たちによる、腐敗を防ぐための9時間以内と限られた調査(サンプル数149点。現在も分析中とか)で判明したこと。

男の衣服は、色の違った毛皮を組み合せた縞模様のオシャレなもの。
靴はアルプス登山に耐えられるほどの防水、防寒処理が。
さらに、アルプス一帯での銅の精錬が四千年前とされていたのに反し、持ち物の5千年前の銅の斧の純度はなんと99.7%という高度な精錬技術によるもの(むむ、面白そ〜!)

胃からは、死の直前に食べたというほぼ満腹状態の、200グラムあまりの食物が。
それはただ食べるだけの食物でなく、ヤギ、鹿、ウサギの肉、その味と香り付けに使われたハーブ、そしてパンというバランスのとれた内容(現代人の我輩は「ただ食べるだけ」やぞ・・・)
特にパンは、ピラミッド建設の先進技術をもつエジプトで給料として使われていたほど貴重なもので、はるか遠く離れたアルプス地帯で食用されていたことは専門家たちにとっては想像外だったと。

そして腸からは、食物とともに取り込んだ各種花粉を発見。
腸内の花粉それぞれの位置から、死に至る数時間の男の行動もまざまざと浮かび上がってきたのです。
肛門付近のモミの花粉からは死の55〜33時間前にアルプス高地にいたことが。12〜9時間前はアサダが生い茂る麓に下山。そして中腹のトウヒの林を抜け、死の5〜2時間前に再びモミの高地に戻り、山頂近くで死亡と(面白いを通り越し、この発見「凄い!」のひと言)

そして不可思議なのは、背中、腰、足首などに描かれた平行線や十字などの15ヶ所の模様。
それはのちに刺青と判明しますが、ならばなぜ人の目に触れない衣服に隠れてしまう部分に描かれているのか?
驚くべき事実がここで判明します。
X線で調べたところ、男は椎間板を損傷していたのです。
そしてその刺青の位置すべてが、痛めた腰に効くツボの位置に当てはまったのです。
二千年前に中国で体系化された鍼灸治療のツボの位置?中国より三千年も前に?(ざまぁみろ、反日赤色中国め!)

検証チームは述べます。
「この先進的医療技術、そして豊かな食生活、高度な持ち物・・・四大文明より以前に第五の文明がヨーロッパに存在していたのではないか?」

さて、当初の疑問がここでふたたび浮上します。
当時としては高齢で、なおかつ腰を痛めている男がなぜアップダウンのきつい山中を急ぐように移動していたのか?

それも判明します。

X線写真で、男の左肩に異物が見つかります。
それは矢じり。動脈を傷つけており大量出血したとも分かります。
背後から矢を射られた?5300年前の殺人事件の被害者?

殺人の可能性を強めたのは、後頭部の脳内に即死につながるほどの大量出血の跡があったこと。そして右目の上の何かで強打された亀裂。

検証チームは推理します。
男は何かから逃げていた。
そして死の直前、男は下を向いて何かをしていた。
そこに何者かに背後から矢を射られ、さらに確実に死に至らしめようと襲撃者は男の側頭部を石のようなもので強打。後ろ向きに倒れ込んだ男を襲撃者は右手をつかんで体をひっくり返し(うつぶせで左腕を体の下に折り曲げた奇妙な姿勢の意味がこれで判明)、矢の柄を持ち帰った・・・。

なぜ柄を持ち帰ったのか?
当時、獲物を誰がしとめたかが判るように矢の柄は持ち主によってそれぞれ特徴付けされていたと専門家は述べ、犯人が柄を持ち帰り証拠隠滅を図ったのだと。

5300年前の出来事がこのように詳細に判明するなんて凄いと思われませんか?
ん?20年前には不可能だったというけれど・・・。
ん?たった20年でこの成果というのも「!」ですけど。

※その後のアイスマンは、新たな発見を期待し、未来に託すタイムカプセルとして再び冷凍保存されました。

★「今夜の名言!」

TVドラマ「時は立ちどまらない」より、東北大地震で被災した老漁師(橋爪功)と信用金庫所長(中井貴一)との会話。
漁師をやめ大工になるという長男、経験もなしに漁師をつぐという二男のことで老漁師は・・・

橋爪「仕事の辛さしんねぇ、世間の怖さしらねぇ、何を甘えたこと言ってんだ」
中井「甘いこと考えなきゃ世の中動きませんよ。甘いこと考えて、懲りたら懲りたでやっていくしかないでしょ」

あ〜あ、我輩が元気づけられるわ・・・。

「ある、ドキュメント」完

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