265「受賞作特集!」

3.31mon/2014

★面白本、珍しくも立て続けに読みました。
途中気づけばそれらは何らかの受賞作ぞろい。
で、今回「受賞作特集」として一挙紹介!

「悪人」(吉田修一/朝日文庫)
大佛次郎賞。毎日出版文化賞。
本作は、かつて我輩が朝日新聞購読時の連載小説(いまは洗脳解けて産経新聞)
が、我輩生まれてこの方、新聞小説を連載時に読んだことがなぜかありません。朝日がかつて連載の三浦綾子「氷点」なんて、出版本読むとこれはもう大傑作の大泣き本。将来女の子が生まれたらそのヒロイン「陽子」の名をつけようとまで思ってました。成人しての結婚適齢期になると忘れてしまってたけど。名付けた人おるやろなぁ。

映画にもなった「悪人」(未見)、予備知識なしで読み始めて上下巻一気読み。
親に捨てられ祖父母に育てられた孤独な土木作業員の祐一と出会い系サイトで知り合った女性との、ある事件をめぐる、ラストが切なすぎる物語、とだけ紹介しておきましょうか。
というのも読後、裏表紙解説読むとこれはもういけません。単なる起承転結のあらすじで、事前にこれ読んでしまってたらたぶん一気読みにはならなかったかも。未読の方、読まずに読むべし、です。

ま、題材としては特異なものでもなく、無口なはずの祐一のラストでの理路整然かつ饒舌気味な告白も少々ひっかかったものの、登場人物たちの息遣いが聞こえてきそうなリアルな筆致でのめり込めました。映画版、みたし。評価5。


「ツリーハウス」(角田光代/文春文庫)
伊藤整文学賞。
中央公論文芸賞の「八日目の蝉」やNHKドラマの秀作「紙の月」原作者の角田さん、さまざまな人間像描いての秀作生み出す力量には他の女流作家さんたちも嫉妬するほどじゃないかと思ってしまうほど。

本作は、戦中から現代に至る、少し普通ではない、といっても各自流されるままの人生送り続けてしまってる家族の、でもそれは私たちの周囲に多々ありそうな一家三世代の物語。その日常生活に、どこの家庭でも起こり得る出来事を(離婚、新興宗教入信、引きこもり、自殺など)各時代の事件、風俗背景にからませつつラストまで目を離させない展開はまさにストーリーテラーの本領発揮。いや、我輩も流されるままの日々ゆえの共感かも・・・。
北杜夫の市民小説の傑作と評される「楡家の人々」よりはるかに我輩好み。評価4。

「対岸の彼女」(角田光代/文春文庫)
直木賞。
いじめで転校してきた女子高生「葵」に近づいてきた一風変わった同級生魚子(ナナコと読む)。ふたりは無二の親友となるけれど・・・。人付き合いが苦手な主婦小夜子はベンチャー企業女社長の「葵」のもとでハウスクリーニングの仕事を始めるが・・・。
時代をこえた友情と別れの物語。ナナコのその後を知りたくなってきます。評価4。


「ふがいない僕は空を見た」(窪美澄/新潮文庫)
山本周五郎賞。Rー18文学賞大賞。
本作購入した本屋の店員さん我輩に「この映画みました?」と聞かれ、「いえ」「面白いですよ〜」「店員さんはこの本読みました?」「いえ」「え〜、ここでただで読めますやん!」てな会話を経て・・・。

本作も様々な問題を抱えた人々が、物語冒頭のコスプレ中毒の醜い主婦と高校生の関係シーンはちょっと引いたけれども、その後の展開ではそれら人々が「悪人」同様、物語の中で息づいてきます。評価4。

「通天閣」(西加奈子/ちくま文庫)
織田作之助賞。
大阪・新世界の安アパートに暮らす世捨て人のような中年男と、恋人に去られ「そんな仕事を!」と彼が思って戻ってきてはくれぬかとぼったくりスナックに嫌々ながら勤め続ける若い女。その二人の希望のない、でも陰湿でない日々がリアル。

解説者いわく「あなたやわたしが、たとえ冴えなくても息をして生きている、ということにふと驚くことに似ている。そのことに感動する。本書は、この世界に生きるどうしようもない人々を輝かせることに成功している」のだ。評価4。


「空中庭園」(角田光代/文春文庫)
婦人公論文芸賞。
この作品原作の、小泉今日子主演映画録画再生して数分後消去した記憶あり。駄作かと思ったんだけれど、う〜む、みればよかった・・・と思うほどの秀作。

郊外の団地に住む一家四人は「何事もつつみかくさず」が家訓。なれどそれぞれが秘密を持っており、そのうわべだけをつくろうような関係はいったいどうなっていくのかと興味津々・・・が、今までの角田作品とは違い、現状のままで終わってしまうのがつらい。評価4。

「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」(米原万里/角川文庫)
大宅壮一ノンフィクション賞。
1960年、プラハ。共産主義者の父を持つ日本人小学生の万理は5年間のソビエト学校で三人の女子同級生(ギリシャ人、ルーマニア人、ユーゴスラビア人)と友情を育む。
そして30年後、激動の東欧で音信が途絶えた彼女たちの行方を探しはじめるのだが・・・。

「政治に翻弄された少女たちを通じて描く、見事な東欧現代史」(まさに!)で、ソビエト学校では肉体的特徴を嘲笑するようなあだ名(でぶ、はげ、出っ歯などの)をつける風習が皆無だとか、西側では才能あるものを妬み引きずり下ろそうとする人が多すぎるが、ロシアでは才能があるものは無条件に愛され皆が支えるとか、各国の生徒たちすべてがそれぞれの祖国を誇りに思っている(日本ではあり得ぬのはなぜか!朝日、毎日の反日新聞のせい多々なり)など、「なるほど」のエピソードもたっぷり。著者は06年死去。残念。評価4。

「誘拐児」(翔田寛/講談社文庫)
江戸川乱歩賞。
う〜む、今回の作品はなぜか女性作家かつ同じような作品ばかり(いい意味で)ではないかと気づき、手にしたのが本作。

昭和21年、誘拐された幼児はその15年後、事件の被害者ではないかとの疑念を抱く。優しかった母は誘拐犯だったのか?時効を目前に事件は再び動き出す・・・。

面白そうな題材なれど、今回紹介してきた作品に比べ事件が主体で人物像が描き切れていないように思え、やはりもう推理小説はうんざりの気分。被害者の人生ドラマが主だったら傑作「八日目の蝉」男性作家版になってたかも。評価3。

「沈底魚」(曽根圭介/講談社文庫)
江戸川乱歩賞。
前述で生意気なことを述べてしまったけれど、同様の作品ながらあっけなく「う〜む!」だったのが「誘拐児」前年07年度受賞の本作。

次期総理の呼び声高い現職国会議員は中国のスパイなのか?(安倍総理を連想させるのがミソ)
その真偽を巡って二転三転の警視庁外事課の捜査ドラマに、これはもう我輩翻弄されっぱなし。
「情報漏洩者が食らう懲役よりも、我々の捜査期間の方がはるかに長いという現実」(外国機関に機密を漏洩した者は1年以下の懲役か3万円以下の罰金)との主人公の嘆きに、スパイ天国といわれるこの日本で「特定秘密保護法案」に反対する人々のことがより分からなくなりました。評価4。


「飢餓浄土」(石井光太/河出文庫)
番外作品。
途上国貧困地での流言蜚語の真偽(日本兵の亡霊談や虐殺地で死肉を喰う野犬話など)を確かめるべく、著者は東南アジア各地を旅するノンフィクション。
・・・この程度のルポならだれでも書けるやろ!?(すみません、言いすぎです。語学能力と旅費あれば我輩も書いてみたいと思っただけです・・・)。評価2。

「受賞作特集!」完

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