268「お仕事小説と白石一文!」

5.5mon/2014

★今回は「本」だけのお話

「書店ガール」(碧野圭/PHP文芸文庫)
吉祥寺の大型書店を舞台にした、互いに反発しあう女性書店員二人が主人公。
男性社員の偏見、パート女史たちの嫉妬渦巻くなか、書店存亡の危機に二人はともに立ち上がる・・・。
と、いろんな職業の方と接する現況振り返っていま初めて気づきました、「書店員さんの知り合いっておらんなぁ」
本書読むまで書店員さんを単なる販売員としか見ていませんでした。が、やはりどの世界でもプロはいらっしゃるんだ、と改めて気づかされもした、我輩にとっては魅力的なお仕事の物語(ただ、販売という職業では最低から2番目の賃金とか)

そのリアルな書店内情描写に著者は元書店員さんかと思いきや、全国の書店100軒以上取材しての本作とか。そう知るとまさに力作。尊敬!
で、本書購入時に書棚に並んでいた続編「書店ガール2」を急いで買いに走ってしまっての、評価4。

「国道沿いのファミレス」(畑野智美/集英社文庫)
外食チェーン従業員の主人公(25歳、男性)がネットの書き込みの身に覚えのない女性問題で左遷された(我輩も女性客のストーカー男に身に覚えのないその種の書き込みされたゆえ主人公の気持ちがよくわかる)、売り上げ低迷の店での人間模様を描いた、小説すばる新人賞受賞作・・・。
著者はファミレス勤務経験者というのに「書店ガール」に比べファミレス内情についての目新しさはない(厨房コックが全員アルバイトというのには、へぇ〜)。けれど、主人公と幼馴染のシンゴとの友情ふくめ、周囲の人間描写が読ませます。解説者の北上次郎氏いわく「青春小説に心が動かなくなった年配の読者の胸を著者の小説はいつも力強く揺すぶるのである」、である。評価4。

「私という運命について」(白石一文/角川文庫)
WOWOW制作ドラマは秀逸なのが多い。
本作原作の同名ドラマもそう。全5回の4回目までをみて「うむ、主人公の冬木亜紀(永作博美)と佐藤康(江口洋介)の運命は如何に?!」。で、「原作はもっと面白いかも」と、本書を買いに走る・・・。
大手メーカーの営業部に勤務する女性の29歳から40歳までの「揺れる10年を描く感動と圧巻の大傑作長編小説」なんだけれど、くどすぎる描写にくらべドラマのほうが良い意味での簡潔さでドラマチックかつラストも現実的。評価3。

評価3時点でその作家の作品はもう手にしないはずなんだけど、以前購入した著者デビュー作存在思い出し手にしてしまったのは・・・・

「一瞬の光」」(白石一文/角川文庫)
大企業社長の子飼いのエリートサラリーマン38歳が深夜、部下と酒を飲んでいる。昼間は50人の短大生の面接を行っていた。ふと気づくと、バーテンダーの一人の女性の手首に白い包帯が。そこで彼は思い出す。彼女は昼間面接し、二次面接に残れなかった45人の一人だったと。面接した折とはかけ離れたその精彩を放つ姿に驚くのだが・・・。
本書手にしたとき「私の運命」同様の本の分厚さにげんなりしたけれど、うむ、この冒頭シーンから引き込まれてしまった。
派閥抗争、贈収賄、裏切り、失脚そして恋愛の劇的な物語を一気読み!
あ〜「私という運命」の低評価はドラマで筋書きを知ってたせいだ、と思い直し・・・あ〜、ボクって単純。評価5。

★「今夜の名言!」

「電子書籍は本ではない。データーだ」
「国道沿いのファミレス」より

ところ構わず若者が黙りこくって携帯を触りつづけている風潮について康が亜紀にいう。
「僕たちの会社が作っているコンピューターや半導体にとっては水は大敵だろう。車にしても家電商品にしても、金属や化学物質を使用したものは全部そうだし、電気や磁気の類も同じだ。そういった水を嫌うものは基本的には僕たち人間の敵なんだ。一方で植物や動物、土や空気、そして海は人間にとって本質的に善だと思う。だから、水を嫌う製品を産み出す仕事をしている僕らのような人間は、よほど気をつけて仕事を進めないと、人々のためになっているつもりで、実は、人類に害をなすことをやらかしている可能性がある」
「一瞬の光」より

「お仕事小説と白石一文!」完

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