283「屋根裏という名の城 」(Fクン)

12.3wed/2014

★あるDNAの話から

「 学生時代、民家の屋根裏に下宿していたことがある。名づけてその部屋、『屋根裏という名の城』」云々で始まったのが、279「バスタオル」のお話。
で、今回は友人「Fクン」のこと。

墨丸では「OちゃんDNAグループ」と我輩が名づけたお客さま方がいらっしゃる(店ではそのOちゃんDNAのOは実名です)
このグループ、いわゆる「個性」がいささか強すぎる方々のことで(お客さんいわく「墨丸はそんなタイプ多過ぎるわ・・・」)、その筆頭Oちゃんに「君のDNAと彼らは一緒やねんからRクンやKちゃんのこと嫌うなよ〜」などと諭すと、「あんな奴らと一緒にせんといてくれよ〜」と返されるん。だけど、我輩知る限り根本的性格はみなさん大変似通ってるんじゃないかと・・・。
このDNAグループの一部は一般のお客さんから少々敬遠されるほどの「個性」なんですが、我輩はなぜか彼らを嫌いではありませぬ。

★ 問題学生Yクン

高校時代にYという小太り短足、でも成績の良い同級生がいた。
思えばYもこの「OちゃんDNA」の、でも負の面を持っていた。

たとえばこんな話がある。
クラブ部室で「アンネの日記」に登場する猫の名からムーシーと名づけた捨て猫を部員で飼っていて、夏休みだったか、部外者ながら部室にしょっちゅう出入りしていて学校に一番近いところに住むYにその子猫の世話を頼んだことがある。
休みが終わり部室に行くと、その子猫が見当たらない。
Yに聞くと「あのな、瓶に硫酸入れてそこに漬け込んで・・・」と部室の窓の外、桜の木指さし「その根本に骨埋めてんねん」
ホントとは思えないけれど・・・。
我輩が恋していた同級女子のことをYも好きで、Yいわく「あのな、あの子の家の寺の天井に忍び込んだら節穴からあの子の部屋見れるねんで」
これもホントとは思えなかったのだけれども・・・。

ある日曜日、屋根裏部屋の我が下宿にYが訪ねてきた。
「車があるからドライブに行こう!」と。
こいつ免許持っとったか?と、少々不安で近場ならと「じゃあ、映画みに行くから住吉座まで乗せてってくれ」と。
で、着替えしつつ窓の下、軽四のそばに立つY見下ろすと、中年男に腕を掴まれていて「なんや?」と思う間もなく、やってきたパトカーで連行され・・・。

後刻、刑事が下宿にやってき事情聞かれその時の状況正直に話し、我輩は無罪放免だったが、Yは盗んだ軽四運転中(無免許だった)、つぶり坂というところで持ち主が発見。その持ち主が我が下宿までバイクで追ってきたという顛末だった。
数十秒の差で我輩も同罪かつYのように退学の憂き目にあっていたかもで・・・。
ま、このような運の良さが他にも我輩多々あり、これらの話はまたの機会に。

で、そのYが在学中、ハンサムではないけれど清潔感のあるFという同級生を紹介された。
Yが退学後、校内放送でなぜか我輩保健室に呼び出され、保健先生女史いわく「Fくんといま友達ですね。問題起こしたYくんと違ってFくんはまた別のタイプなので・・・うまく指導しながらつきあってあげてください」というようなことをいわれ思った、「え〜、Fもおかしいん?!」

★ 電柱のFクン

そのFも頭は良かった。
人生とはは?と若者らしく少々悩んでいた我輩にコリン・ウイルソンの新実存主義哲学の傑作処女作「アウトサイダー」を紹介してくれたのもFだった。
そういう面では、授業で「こうして主人公の運命が変わり・・・」などと教師が述べようものなら、「運命は変わるものではなくそうなったことこそが運命であり云々・・・」と日頃発言などせぬFがとうとうと持論を展開したりするのだった。

ある日、授業が始まってもFが登校してこないことがあった。
担任に「休憩時間にFの家に様子見に行ってくれ」といわれ(保健女史からFは我輩担当といわれてたんだろうな)Fの家を訪れたことがある。
Fの実家は酒屋の隣にあり、「ビール瓶の擦れ合う音で気がおかしくなる」との理由で親戚の空き家にひとり住んでいた。

その家を訪れて玄関前に立つと、家の中から最大ボリュームの洋楽が聞こえてきた。
鍵のかかっていない玄関戸開けると、うっすらとホコリ溜まった廊下にFがいるとおぼしき部屋まで足あとだけがくっきりと・・・。
その足あとたどっての部屋のふすま開けると、雨戸閉め切った、でも天井の蛍光灯は煌々とつけっぱなしの部屋で布団かぶったF、その枕元には響きわたる音源のステレオ・・・。

「おい、起きれや、授業始まっとるで!」と揺り起こしながら「なんでステレオかけてんねん!」と聞くと、「おお、スミちゃん、あれ目覚ましやねん」
「じゃぁ、なんで起きれへんねん!」
「うん、寝かけたらなぁ、毎晩毎晩内臓がぐるぐる動き出してなぁ、それで眠れんでついさっき眠れたとこや。全然聞こえんかった・・・」

今日でも我輩の口癖ではあるが、ある時その口癖の「おもろないなぁ!」を発し、Fに「そや、職員室の窓ガラス全部はずして校門から職員室まで敷き詰めたろか!?」と、その場では本気で持ちかけたことがあったが我輩すぐに忘れてしまった。
と、ある深夜、窓の外から「スミちゃん、スミちゃん」とささやく声が。
「なんや?」と窓の障子開けるとF、窓の外、二階の高さの電柱にしがみつき我輩を呼んでいたのであった。
「ナニしとんねん!」とびっくりして問うと、手にしたドライバーかざしつつニコニコと、「ガラス外しにいこ」
とっくに熱の覚めてた我輩、もうそんな意欲なく実行には至らなかったけれど、このような愛すべき男でもあった。

★Fは、なぜに・・・

血液型Oで物事に頓着せずズケズケと無遠慮に口走ってしまう我輩、Fに「おまえ、なんでおかしなってん?」と聞いたことがある。
Fいわく「小さい頃なぁ、悪さして親に怒られて『押入れに入れるぞ!』って脅されて、そこで真っ暗なそこに入れてくれたら良かったんやけど、毎回入れてくれへんで、その中途半端な恐怖心のまま育った幼児体験のせいやと思う」などと真剣に答え、「それはないやろ・・・いや、そうかも」などと思った覚えがある。

Yには心を許せなかったが、Fはこうして我輩にすべてをさらけ出し我輩もそれに応えてさらけ出していた。
我輩は部活の芝居のセリフを暗記するか恋に恋する日々だったのに対し、Fは生きる意味を悶々と探り続けるタイプで、共に授業などそっちのけの面も性に合っていたのだと思う。
ま、Fはそれでも授業についていけてたわけでその点が我輩とは大いに違ったのだけれど・・・。

★自衛隊のFクン

卒業後、Fは地元にとどまったはずであったが、我輩サラリーマンの20歳代のころ、大阪環状線新今宮駅プラットホームで偶然Fとすれ違ったことがある。

振り返って「お、F!」と声かけると「おお、スミちゃん!」と、今の住まいという西成の簡易宿泊所に連れて行ってくれた。
その部屋は布団を敷くと目いっぱいの何もない寝るだけの小部屋で、そこでだったか卒業後の話を聞いた。

或るとき、喫茶店で一人いると見知らぬ男が声かけてき、他人に関心のないF、いつものように相手の話を聞き流してるとなぜか書類にサインさせられ、そのまま自衛隊入隊となってしまったという。
「でもスミちゃん、行進の訓練でな、右左って足出すやろ?あれ出来れへんねん。いっつも右手と右足、左手と左足一緒に出してしもて歩調あえへんで・・・自衛隊ってみんな頭のおかしな奴ばっかりやったのにわしだけ除隊になって・・・」
そういえば学生時代、我輩は砂ぼこり、汗まみれのあと授業受けるのが不快で体育の授業はずっとサボっていたのだが、なぜか彼もいつも我輩と一緒に見学組であった。

その日、今度仕事の面接に行くのだが着ていく服がないというFに我輩のコートかスーツを貸したのが彼との出会いの最後だった。
貸したものなど最初からどうでもよかったが、その後Fはどうしているのだろう?と時々気になっている。オウム真理教が活動していた頃、Fなら入信してるかもとテレビのニュース番組等でチラリとでもFが映らぬかと気をつけてもいた。

あの町に行くことがあったらFの実家を訪ねてみようかとこれを記しながら思ったのだが、区画整理で町並み一変してしまったゆえ実家など見つけることはもう無理かも知れぬ・・・。

※「OちゃんDNAグループ」、思うに何らかの弱さが顕著な方々なのかもしれない。類は類を呼ぶの言葉通り我輩も同類かと今回記しながら気づいてしまった(我輩「類は友を呼ぶ」は経験上否定する)

筆頭Oちゃんのために「カンカンクラブ」というのもあり。
Oちゃんの目前に迫っているマイナス世界のため、アルミ缶回収用の「空き缶」を集めておく会です。
もう一つが「ブルークラブ」
その来るべき日のために、公園で使用するブルーシートを用意する会です。
皆さ〜ん、ご協力お願い致しま〜す。
アッ、もしかして我輩が利用してしまうかも・・・。

★「今夜の本!」

・映画化もコミック化もされたという評判の小説、作者名忘れ永らく入手できなかった文庫本ようやく入手。
ネットで調べりゃすぐわかるというのに、本屋に出かけた時に限って書名だけ思い出しては悶々としていたわけで。それが「ルームメイト」(今邑彩/中公文庫)

東京で部屋探しをしている地方出身の女子大生・春海が、不動産屋で出会った同じ学生という麗子に声かけられルームシェアすることに。
ある日、麗子が失踪。彼女の部屋を調べると学生らしき持ち物が一切なく、不審に思いながら麗子の実家に電話すると麗子はいたのだが、その彼女は全くの別人だった。果たして共に暮らしていた麗子とは何者だったのか・・・?
読み始めて「多重人格」テーマとすぐ分かる。
で、「なぁ〜んだ、底が知れるじゃん」とつまらなく思いつつも読み進んでの終章で、「こりゃ評判になるはずやん!」
おまけにノベルズ版でのラストがバットエンド過ぎるというので文庫版ではカットの予定が、少数派のバッドエンド好みの読者のため文庫あとがきの後にそのラスト掲載というおまけ付き。でも前半の展開のせいで、評価3.5/5。でもでも、一読に値します。

・「脱出不可能!少年たちは生き残れるか?スティーブン・キング絶賛!正統ホラーの傑作。読み出したら止まらない」なぁんてキャッチフレーズ目にするとこれはもう買うしかなかったのが、「スカウト52」(ニック・カーター/ハヤカワ文庫)

指導員に率いられた5人のボーイスカウトが無人島でキャンプ。その初日、異常なほど飢餓状態の男が漂着。そして始まった孤立無援下の地獄・・・!
賛辞のひとつに「『蝿の王』あるいは『遊星からの物体X』を好きな人は必読」とあり、よりゾクゾクしながら読み進める。
しかし、「十五少年漂流記」の負の面を描いたゴールディングの傑作小説「蝿の王」、孤立した南極基地で異生物に襲われ隊員全滅に至る傑作映画「遊星からの物体X」そのままのような展開で新味感じられず。3/5。

★「今夜の映画!」

・11月録画鑑賞映画15本中のオススメは、「暗くなるまで待って」(1967)

盲目の主婦スージーをオードリー・ヘップバーン演ずる極上のスリラーです。
スージーの地下の家に殺し屋がやってくるラスト、スージーは家中の電灯を叩き割り闇の中で殺し屋と対峙しようとする。
上映当時、最後の電球を割った瞬間スクリーンはもちろん真っ暗。同時に映画館内も非常灯など消して真っ暗闇に、という演出付き!
しかし、一箇所だけ彼女が壊し忘れた灯りがあった・・・。
久しぶりにみてもゾクゾク。
殺し屋役のアラン・アーキンはまさに鬼気迫る演技でしたが、翌年上映の「愛すれど心さみしく」では孤独のなかで死んでいく心優しきろうあ者を演じ、その演技の幅広さに感嘆した覚えあり。

※この映画の題名が墨丸のオープン時刻を表し、クローズがシドニー・シェルダン原作「真夜中の向こう側」のそれ。
この時代は邦題が素晴らしかった・・・。ちなみに墨丸のテーマソングは中島みゆき「夜風の中から」です。

・準オススメは、「ザ・ファイブ 選ばれた復讐者」(2013)

幸せな日々を過ごしていたウナは殺人鬼に夫と娘を目前で惨殺され、彼女自身も車椅子生活に。生きる希望をなくしたウナは自分の臓器を提供する条件で4人の男女を集め復讐を計画する・・・。
反韓、反中意識のせいで永らく遠ざけていた韓国映画。傑作「チェイサー」もそうですけど、韓国のこの手の作品は民族性なのか精神的な残酷描写が特異。で、殺人鬼がハエも殺せぬような優男ってのも定番。その分残虐感が増したりして・・・ああ、コワ!

・早送り駄作は、アメリカがソ連に侵略、占領されてしまう「若き勇者たち」(1984)のリメイク版「レッド・ドーン」(2012)

で、今回の敵国はなんと北朝鮮。「若き」は小品ながらその斬新なテーマで記憶に残っていますが、「レッド」はレジスタンスの少年たちが北朝鮮の精鋭部隊と互角に戦うというありえぬような展開のみ目立つお子様映画。

※お客さまのご要望もあり、次回より鑑賞全作の題名と5段階評価を始めまする。
「屋根裏という名の城 」完

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