360「ガジュ丸の動物記」掘憤杣鑛咫

7.21fri//2017

★ミスった話から

サカナ篇で記したと思ったのに、記入漏れだったことに気づいた。
ふっと頬が緩むほどのほのぼのとしたコトなのに、どうしてだろう?

それは、庭先の金魚にエサをやろうとした夜のことだった。
玄関のプランターのなかに置いているエサの袋を取ろうとして、目の片隅、三十センチほど離れた傘立ての中でナニかが動いたのに気づいた。
そこにはじっともう動かぬモノが・・・数本の傘の柄の一本にしがみついている、鮮やかな緑色をしたモノの、からだ側面の一部がみえた。

瞬間、ナニかがわかった。
瞬間、ソレを手のひらで包み込んでいた。
そまま二階に駆け上がり(いや、病気の後遺症でそれはできぬ。気持ち的にだ)、すぐに死んでゴミ箱行きとなったばかりの闘魚ベタのミニ金魚鉢の水を捨て、ソレを鉢の底、模造色ガラス敷きつめたところにそっと解き放った。

緑の体色が変わっていた。土色に変化していた。
初めて間近で見たそれは、ヤモリ。
黒く腹だけが赤い、気味の悪いイモリは田舎の池に何匹もいたが、ヤモリってこんなにカワイイ仔だったのか!

以前、店の窓ガラスに張り付いていたヤモリを捕えた顛末記(302「ヤモリをつかまえて」)では、姿かたちをしかと確かめる間もなく逃してしまった話だったけれど、クリっとした小さな黒い目で我輩見上げるその姿の、なんと可愛くけなげに見えることか。我が前世、ヤモリだったかと思ってしまったほど。

確かエサは昆虫とかだな、確か害虫を退治してくれるんだったな、だから家守なんだよな、確かホームセンターのペットコーナーでエサ売ってたよな、いやイモリのエサだったかな?
と、思い駆け巡っての翌朝、「はよエサ買いに行かなアカン。死んでしまう」と、ペットコーナーのある遠方のホームセンターに行くべく、我が妻リ・フジン通勤で使わぬ日、クルマの空いている日を確認すると、数日も先だった・・・。

後悔はしなかった。
ヤツを再び手のひらに包み、ベランダにそっと下ろしてやった。
腰を左右に振りながらベランダの端まで走り、その先からポトリと下に。
あっ、大丈夫かいな?

あんなカワイイ生き物を、家を守ってくれる生き物をガラス鉢に閉じ込めておくなんて、罰当たりもいいとこだと後悔はしなかった。
でもヤモリって、あんなに色が変わるもんだろうか?
はたしてヤモリだったのだろうか?
あ、金魚にエサやるの、忘れてた・・・これにも後悔など、しない。

「ガジュ丸の動物記」(異種篇)完

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