473「今夜の本!」11/.2019のベストは?

12.1.sun/2019

★「今夜の本!」

ガジュ丸評価基準。
5「傑作」4「秀作」3.5「佳作」3「普通」2「不満作」1「駄作?」
NF=ノンフィクション ※=再読作品

01.「雪の鉄樹」遠田潤子/光文社文庫/5.0
02.「転落」永嶋恵美/講談社文庫/3.5
03.「蓮の数式」遠田潤子/中公文庫/4.0
04.「冬雷」遠田潤子/東京創元社/4.0
05.「ドラマへの遺言」NF/倉本聰 碓井広義/新潮選書/3.0
06.「ベストフレンズ」永嶋恵美/光文社文庫/4.0

★「寸評!」

先月初登場の遠田潤子「遠い日のあなた」は、「この話は何なんだ?」感が強すぎた読後感だった。
で、今月の「雪の鉄樹」も、主人公の庭師が負った全身やけどの原因、その庭師が両親のいない少年の面倒を少年の祖母に罵倒されながらも十数年続けている理由、なぜか恋人が音信不通の長期服役囚であること等など不明なままの展開が中盤までも。「遠田さんってこういう作風の作家?」と前作の同様パターン思い出し、悪く言えば少々ウンザリしていたら・・・著者4作目の本書で遠田潤子を初めて知ったという敬愛する書評家の北上次郎さんいわく「すごい小説だ。息の抜けない小説だ。なんなんだこれは」と、同感のご意見。
我輩にとって馴染みのない庭師が主人公の本書に続き(馴染み深い大阪北野田周辺が舞台だ)、これも馴染みのない算数障害者や鷹匠が主人公の愛憎劇「蓮の数式」「冬雷」続けて一気読みとなる。共に当初は高評価だったけれども褒めすぎかと、遠田ファンとなった記念碑的作品として「雪の鉄樹」のみ「傑作」ランクインとした。

永嶋恵美も初めて知った作家だ。
ホームレスの「ボク」に弁当を日々手渡し始めた少女。二人の奇妙な関係から登場人物たちの「転落」が加速度的となり・・・評価「4」以上は我が人生残り時間に余裕あれば再読したしの作品だが、本書ももう一度読み直してみたい物語だ。

と思っていたら同著者「ベストフレンズ」も。
「も」のもうひとつの意味は、’ホームレス’一歩手前の生活苦に追い詰められた女主人公が登場するからだ。このあたりの描写、永嶋さんって生活困窮者の経験あり?と思わせるほど読ませる。で、深夜のファーストフード店で中学時代の親友と偶然再開。そこから主人公のさらなる「転落」が始まるのだ。
この二冊、似た展開ながらも異なる読ませ力あり、遠田潤子が愛憎劇作家ならば永嶋恵美は登場人物の根底に狂気秘めさせる作家か。

倉本聰「ドラマへの遺言」は、一般書店や古書店で探し続けていた作品。
新聞の新刊案内で触れていた'「たけし」を全く認めない'とか'寺尾聰は使いません'の章を詳しく知りたくて。
倉本さんの最新ドラマ「やすらぎの刻〜道」で「たけし軍団」らしき醜い集団登場させクソミソに描いていたけれど、本書では倉本さんらしいというか男らしいというか、くどくど述べず軽く触れていただけ。で、俗人の我輩、たけしさんらあまり好きでないゆえ、もっとくどくどした悪評知りたかったと少々残念。

★ガジュ丸賞!

遠田潤子「雪の鉄樹」!

「今夜の本!」11/2019 完

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