474「今夜の映画!」10/2019のベストは?

12.11.wed/2019

★「今夜の映画!」

ガジュ丸評価基準。
5「傑作!」4「秀作」3.5「佳作」3「普通」2「不満作」1「駄作?」
NF=ノンフィクション ※=再観作品 

01.「偽りの忠誠 ナチスが愛した女」2016/アメリカetc/3.5 
02.「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」2015/アメリカ/3.5
03.「ハクソー・リッジ」2016/オーストラリアetc/3.5
04.「ザ・ハント ナチスに狙われた男」2017/ノルウェー/3.5
05.「Tー34 ナチスが恐れた最強戦車」2018/ロシア/3.0
06.「不屈の男 アンブロークン」2014/アメリカ/3.5
07.「ブリッジ・オブ・ヘル 独ソ・ポーランド東部戦線」2015/ロシア/3.0
08.「ビハインド・エネミーライン 女たちの戦場」2016/ドイツ/3.5
09.「ヒトラーに屈しなかった国王」2016/ノルウェー/3.0
10.「否定と肯定」2016/イギリスetc/3.5
11.「ヒトラーを欺いた黄色い星」2017/ドイツ/3.5
12.「ヒドゥン・チャイルド 埋もれた真実」2013/スウェーデンetc/3.0
13.「コールド・アンド・ファイア 凍土を覆う戦火」2014/デンマーク/3.5
14.「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」2017/アメリカ/3.5
15.「ロープ 戦場の生命線」2015/スぺイン/3.5
16.「ブラックブラック」2006/オランダetc/3.5
17.「パトリオット・ウォー ナチス戦車部隊に挑んだ28人」2016/ロシア/3.5
18.「ナチスの愛したフェルメール」2016/オランダ/3.5
19.「コレクター 暴かれたナチスの真実」2016/オランダ/3.5
20.「帰ってきたヒトラー」2016/ドイツ/3.5
21.「ヒトラーへの285通の葉書」2016/ドイツetc/監:ヴァンサン・ペレーズ/3.5
22.「ダンケルク」2017/イギリスetc/3.5
23.「ザ・バトルフィールド シベリア戦記」2019/ロシア/3.5
24.「ヒトラーの忘れもの」2015/デンマークetc/3.5

★「断念!映画」
「面白くなさそう」と中断してしまった、「断念=残念」映画は?

「ウオーキング・ウイズ・エネミー ナチスになりすました男」2013/アメリカetc
「戦争と平和」1956/アメリカetc
「バトル・オブ・ブリテン 史上最大の航空作戦」2018/イギリスetc
「スクワッド303 ナチス撃墜作戦」2018/ポーランドetc

★「はじめに:特集が・・・」

2017年、映画好きの知人からの便りに、”「ヒットラーの忘れ物」が秀逸だった”と。
2018年初春、未見のそれがWOWOWで放映。で、録画。
お楽しみはあとからだと、続く放映の話題作「ハクソー・リッジ」「不屈の男 アンブロークン」「ダンケルク」も録画して・・・そうこうするうち、その種の映画とドキュメンタリーの録画がどんどん溜まり・・・ならばと思いついたのが、「戦争映画と戦争ドキュメンタリー特集」

で、今回の第一弾は全作が戦争映画の「戦争映画特集!」
戦後70年以上経ったにもかかわらず、ナチスドイツの非道さベースの作品がいまなお数多く製作され、かつ「事実に基づく」という作品が今回でも大半。その根の深さと埋もれた出来事の多さには驚かされる。が、現代のドイツ人にとっては日々傷口に塩を塗りこまれる思いではないか。ま、日本じゃ世界から不信の目で見られてる某国の反日映画ぐらいだけど?

・・・なぁんだけど、戦場で人がバタバタ倒れるシーン観続けていると(昨今これがまた妙にリアルで)、このなかには本来ならば歴史に名が残るはずの素晴らしき人々もいたんだと、往年の戦争テレビドラマ「コンバット!」熱中世代の我輩、いまやもう虚しくなる一方のジャンルと気づいての、総じて評価は低ランクに。かつ、特集の意義も見いだせずして、今回はもうあっさりおしまいとする。ドキュメンタリー篇もいつになることやら・・・。

こうした意欲消失で、11月初旬掲載予定の10月鑑賞作品紹介が遅れたんだけれども、もう一つの要因も。この2年間の終戦記念日に放映されたテレビの戦争ドラマだ(これらも録画していた)。
脚本家の倉本聰さんが「かつてはどんな大根役者でも軍隊の敬礼は様になっていた。が、今はもうその’休め!’の仕方も間違ってしまっている」というように、モノクロ映画世代の我輩としても、平成世代による現代口調でのそれら演技のドラマはもう違和感多々で、数分で鑑賞中止に・・・。

★「寸評!」

そんななか、先に記したナチスドイツの非道さ云々に反し、冒険小説の金字塔「鷲は舞い降りた」の作者ジャック・ヒギンズが描く騎士道精神に溢れたドイツ軍人を登場させた小説群で、ナチス政権に反逆するドイツ軍人が次々と死するなか「善きドイツ人はいなくなってしまった」的セリフがあったけれど、なかなかどうしての実録作が・・・。

ベルリンで7000人ものユダヤ人が潜伏。うち1500人の逃亡を市民が手助けしたケースを取り上げた「ヒトラーを欺いた黄色い星」、無名の市民夫婦が政権批判の葉書をベルリン市内に日々置き続け、ついには斬首されてしまう「ヒトラーへの285通の葉書」、ポーランドの動物園舞台の「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」などで、ヒギンズの言葉が言葉通りでなかった一面を知る。
こういう作品をもっと鑑賞できれば、ナチス政権時代のドイツ人に対しての見方も大いに変わるであろうに。

そんなユダヤ人虐殺でナチスの戦犯となったアイヒマンが、命令だけで唯々諾々と非人道的行動をとった心理を、社会心理学者ミルグラムが60年代に心理実験で明らかにする作品があった。大多数の被験者がアイヒマン同様の行動をとることが実験で証明されるのだ。
そのマイケル・アルメレイダ監督の再現ドラマ「アイヒマの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」は、こんなことをいま記している自分自身も唯々諾々と命令に従う可能性大なることを教えられる。この実験には反論もあるようで、その点も描いてほしかった・・・。

反論といえばミック・ジャクソン監督「否定と肯定」という作品も。
ユダヤ人虐殺否定論者がいることは聞いてはいたが、この映画はその問題を取り上げている。ユダヤ人歴史学者と否定論者が法廷で対決した実話だが、否定論者側が単なる売名行為だったという薄っぺらさで、ドラマとしても面白みの薄い作品だった。

さて期待作のことだ。
かつて名作といわれた映画は心置きなく安心して観れたと思う。昨今どうだろう。思い返すとロバート・ゼメキス監督の無人島サバイバル劇「キャスト・アウエイ」のラストシーンでの、トム・ハンクスの微笑みの意味がわからずイライラさせられた覚えがある。
後日、車を運転中に聞いていたラジオ番組から「あの微笑みは」との会話が流れ、「おっ!」と思った瞬間、我輩車線変更。意識がそっちに飛び、話の続きを聞き漏らしてしまっていた・・・故にこの問題、いまだ未解決。

この頃からか、イヤな意味で思い悩む作品が多いように思いはじめたのは。
かつての名作は俳優の演技だけで心理状況が理解できていたように思えるが、比べての昨今は・・・我輩が映画より読書派に移行しつつあるのも無理のないことかもしれない。

で、メル・ギブソン監督「ハクソー・リッジ」では、舞台となった沖縄戦の前田高地のことだ。あの垂直の断崖絶壁上の日本軍攻略のため、米軍兵士が頭上からの銃撃にさらされながらその絶壁の縄梯子をよじ登るのだ。が、その必然性がわからない。そんな崖など迂回できぬのか?実際そんな崖なのか?縄梯子はどうやって?等などと、作品の出来不出来などもう論外の思い。「私の沖縄戦記 前田高地・60年目の証言」(外間守善 角川ソフィア文庫)を読まねばならぬと思わされている。

日本軍人の残虐さで物議を醸したアンジョリーナ・ジョリー監督「不屈の男 アンブロークン」は、大島渚の「戦場のメリークリスマス」の二番煎じみたいだし、クリストファー・ノーラン「ダンケルク」は、人が描かれぬ単なる撤退劇に過ぎなかったし、マーチン・サントフリー「ヒトラーの忘れもの」は※、地雷の除去作業になぜドイツ軍少年兵士捕虜だけが使役されているのか?だし・・・と、1960年代の「コンバット!」やノルマンディー上陸作戦を描いた「史上最大の作戦」ファンとしては、そんなこんなでの未消化特集となったわけである。

※「2000名を超える独軍捕虜が除去した地雷は150万を上回る。半数近くが死亡または重症を負った。彼らの多くは少年兵だった。1945年5月、デンマークはドイツによる5年間の占領が終わった」と、ラストシーンで述べられているのだが。

★「ガジュ丸賞!」

なし。

「今夜の映画!」10/2019 完

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