479「今夜の本!」12/2019のベストは?

1.4.sun/2020

★「今夜の本!」

ガジュ丸評価基準。
5「傑作!」4「秀作」3.5「佳作」3「普通作」2「不満作」1「駄作?」
NF=ノンフィクション ※=再読作品

01.「鷲は舞い降りた 完全版」ジャック・ヒギンズ/ハヤカワ文庫/4.0 ※
02.「怪奇・怪談傑作集」縄田一男編/新人物往来社/3.0
03.「イッツ・オンリー・トーク」絲山秋子/文春文庫/3.0 文學界新人賞
04.「見事な死」NF/文藝春秋編/文春文庫/3.0
05.「海外ブラックマップ」NF/嵐よういち/彩図社/3.5
06.「海の仙人」絲山秋子/新潮文庫/4.0 芸術選奨新人賞
07.「鷲は飛び立った」ジャック・ヒギンズ/早川書房/3.0

★「断念!本」
「面白くなさそう」と中断してしまった、「断念=残念」本は?

「太陽のない街」岩波文庫/徳永直作
プロレタリア文学の代表作というだけで、もうダメ・・・。

★「寸評!」

ジャック・ヒギンズ「鷲は舞い降りた」を読んだのは70年代半ばだ。
騎士道精神に溢れ、人間味豊かなドイツ軍人の精鋭落下傘部隊がチャーチル首相拉致のためイギリス本土に潜入。次々とイギリス軍の銃弾に倒れてゆく戦争冒険小説だ。
以来、ヒギンズ翻訳作は全作読破したか。否である。
後年、続編「鷲は飛び立った」が出版。「え、全員戦死したのに?」
この頃はもうヒギンズ作品の質、低下傾向。
で、傑作「鷲は舞い降りた」のイメージ損なわれたら?とその続編、長年積ん読状態・・・昨年10月の「今夜の映画!」記載中、「鷲は舞い降りた」その「完全版」いまだ発売中なのを思い出し、今回40年ぶりにまずは記憶新たにと「完全版」を手に・・・。
作家の佐々木譲さんは「鷲は舞い降りた」を戦争冒険小説の最高傑作と評価。
そして日本でのそれを、五味川純平「人間の条件」としている。
その原作を忠実に5部作で描いた小林正樹映画作品は、我輩が邦画で繰り返し観た最多の作品でもある。
そうか、愛と友情、中国人労務者の虐殺、過酷な軍隊生活、ソ連軍侵攻、友の死、敗走、シベリア抑留、復讐、脱走、そしての彷徨・・・思えば冒険小説すべての要素が凝縮。佐々木氏の述べるように「人間の条件」は「まさに冒険小説」であった。

※ジョン・スタージェス監督の遺作でもある映画版「鷲は舞い降りた」は、主人公のシュタイナー中佐をマイケル・ケインが演じ、ドイツ軍情報部大佐役をロバート・デュバル、ゲシュタポ長官ヒムラーをドナルド・プレゼンスと、まさに原作のイメージ。が、唯一ミス・キャストと思われたのが、準主役IRA兵士役ドナルド・サザーランド。かつこの長編小説を2時間ほどで描いてしまった細部省略の点がマイナス点。
続編「鷲は飛び立った」は、そのIRA兵士デブリンが主人公だった・・・。

文藝春秋編「見事な死」は、著名人48名の死に際を親しき人々が語った証言録。
が、女優太地喜和子は酔っての自動車事故だったゆえ「見事な死」なんてかえって失礼だろうに。
題名通りの死かと思えたのは、自ら点滴の管を引き抜いたという作家の吉村昭さんぐらいか。
失礼ながら他に興味あったのは、我輩と同年だったトップモデル山口小夜子、傑作ドキュメンタリー映画「ゆきゆきて、神軍」の主人公奥崎謙三、作家の水上勉、中島らも、田村隆一さんという少なさが評価落ちにつながった。
「言葉」としては、91年死去の棋士・升田幸三さんの、病気という言葉も病院も嫌いで「俺は気など病んどらん。病んだことがあるのは体だけだ。病体といえ」という口癖。そして経団連会長平岩外四さんの「お先に逝かせて頂きます」か。

我輩は、なぜか海外旅行に興味なし派である。
生まれてこの方海外に憧れを抱いたこともない。
仕事関連で行ったグアムはなんの変哲もない島だったし、チャーターしたタクシー運転手の韓国人にはさらなるチップ要求され無視した気分悪しのこともあったし・・・良き思い出としては残念だけど、大藪春彦のハードボイルド小説ファンだったゆえ、拳銃を撃てる店で本で覚えた通りに撃つと次々と的に当たり、飽きてしまって的を外して二、三発撃ったあと、全弾命中だと賞品が出たと知ってしまったことか。かつての墨丸ツアー第一回海外旅行の韓国は日本人として妙な負い目を感じさせられだけだったし・・・。
でも「海外ブラックマップ」という本には興味をそそられた。
海外の治安についてまとめた本がないことに気づいた編集者と著者が実際に噂の危険都市に赴いての体験記だ。
意外にも、異常な日本人差別の国がイスラエル。謝ることを知らず不潔すぎるインド人など、初めて知る20カ国の都市の暗部が記されている。
プラス、そんな国での日本人女性の無防備さについても苦言を呈している。海外で日本人女性が殺されていることを報道で知るとさもありなんか、だ。ますます海外旅行になど行きたくなくなった・・・。

★「ガジュ丸賞!」

なし!(再読「鷲は舞い降りた」は除外)

「今夜の本!」12/2019 完

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