484「今夜の本!」(2/2020のベストは?)

3.5.thu/2020

★「今夜の本!」

ガジュ丸評価基準。
5「傑作」4「秀作」3.5「佳作」3「普通作」2「不満作」1「駄作?」
NF=ノンフィクション類 ※=再読作品

01.「桜子は帰ってきたか」麗羅/文春文庫/2.0 [サントリーミステリー大賞読者賞]
02.「愛に乱暴(上下)」吉田修一/新潮文庫/3.5
03.「二ュータウンは黄昏れて」柿谷美雨/新潮文庫/3.5
04.「夫の墓には入りません」柿谷美雨/中公文庫/3.5
05.「老後の資金がありません」柿谷美雨/中公文庫/4.0
06.「土漠の花」月村了衛/幻冬舎文庫/1.0 [日本推理作家協会賞]
07.「悪寒」伊岡瞬/集英社文庫/3.5

★「期待作!」

「桜子は帰ってきたか」と「土漠の花」だ。
「桜子」は、80年代に単行本購入したものの積ん読のまんま。どこかにあるはず。今回ブックオフで見つけた文庫の帯に「究極の発掘本!松本清張+山崎豊子のド迫力!」とあり、改めて興味惹かれ108円ゆえ購入。ようやくページ開く事に。 第1回サントリーミステリー大賞読者賞受賞作でもある。

終戦直後の満州。韓国人少年クレは恩人の妻・桜子を連れ、ソ連軍侵攻の大陸から日本への脱出を図る。著者が1924年生まれゆえか、このあたりの描写には引き込まれる。そして二人が朝鮮半島で生き別れとなっての後年、桜子の安否を確かめるべく日本に密入国したクレが知ることとは・・・。
登場人物の、特に桜子の人物造形が弱いか。かつ終盤、数々の殺人事件が絡んでくるともういけない。特にラストが。好みの問題だろうけど、過酷な人生ドラマとして読み終えたかった。が、それでも読み切れたのは今は亡き麗羅というペンネームの韓国人作家の過酷な生涯(文庫解説で知りました)が根底にあるからか、かも。

単行本発売当時から興味のあった「土漠の花」は、ソマリアで活動する陸上自衛隊が一人の現地女性を保護したことから武装勢力と対峙する事にという、目新しい題材かつ日本推理作家協会賞受賞。
が、ナンなんだ。「桜子」の敗走劇に比べ、戦争などから縁遠い1963年生まれゆえかの月村了衛の筆力って。ナニかで読んだか観たかの既視感ありありのゲームのような展開・・・だと思うんだけど。

★「寸評!」

子供のいない結婚8年目の夫婦生活の破綻を描く吉田修一「愛に乱暴」は、予期せぬ展開!再読してみようかの一冊。

一連の柿谷美雨作品は、今月の収穫!
我輩の年代ともなるともう身につまされるテーマ揃い。住宅ローン、熟年夫婦問題、そして老後・・・と。
特に家計破綻の「老後の資金がありません」は、もう一気読み。コレは喜ぶべきことなのか悲しむべきことなのか・・・。

伊岡瞬「悪寒」は、「妻が上司を殺した」のキャッチフレーズで「ああ不倫で」と予測つき、「今さらのテーマで一冊かよ」とそう期待もせず読み始めると・・・サラリーマン時代の理不尽な日々も思い起こしての一気読み。で、「うまいなぁ!」

★「ガジュ丸賞!」

柿谷美雨「老後の資金がありません」!

「今夜の本!」2/2020 完

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