509「コロナ禍の衝撃」

12.11.fri/2020

★11月29日 日曜の夜・・・

病に倒れ墨丸閉店し、はや5年。
そしてのこの夜、5年ぶりにかつて常連のトモコ女史、イズミくんお二人と再会。
その酒席企画してくれたのは、秋口から立て続けにそんな席主宰してくれているマ女史。
場所は大阪阿倍野区西田辺の庚申街道沿い、土佐備長炭焼き鳥の龍馬家。

皆が「墨丸は変な客ばっかしやった」というその面々の思い出話で話が盛り上がる。
そして、トモコ女史とイズミくんが特に親しかった「木材」のことも話題に。
その「木材」と名のる子が墨丸に出入りし始めたのは彼女が二十歳前後の頃だったか。
定職持たず、自作の歌やイラストで様々なイベントを開催したりしていた。墨丸でも彼女の仲間たちとの作品展示会も。
墨丸閉店前には彼女が監督で、確か常連の砂猫さん脚本の自主制作映画の、我輩も出演するはずの企画もあった・・・。

で、墨丸閉店後の彼女のことをこの夜知る。
墨丸のような店をとバーを開いたものの、すぐ閉店。その間、来る客々に「結婚」申し出ていたとか。
そしてその客の一人と結婚・・・。

その後、なぜか彼女と連絡がつかなくなったという。
で、この夜の宴席中の22時47分、我輩「じゃあ、わしが電話してみるわ」
呼び出し音鳴り続けるも、出ず。
「やっぱり出れへんわ」と、続いてメール。
「墨丸や!元気か?返信くれ」
と51分、ケータイ着信音。
ケータイ画面表示は、「木材」
「わっ、木材やん」と、我輩笑いながら「もしもし、いまトモちゃんとラブホやねん、久しぶりやなぁ!」
「もしもし・・・木材じゃありません・・・木材の母です」
「え、木材さんは?」
「先月、いや今月、亡くなりました・・・」
それを聞いた瞬間、我輩、思わず泣き出してしまった。
「ど、どうして?」
「病気で・・・泣いてくださってありがとう・・・」
もう気が動転し、ナン日にとか、ナンの病気でとか、聞けもせず言葉も出ず電話を切ってしまった。
再度事情を聞こうかとも思ったけれど、その席で話に出て思い出した「彼女は親に虐待され実家を離れていた」こと。だから二度目の電話はかけず・・・。
愛媛県出身。享年28。本名カワシマ アユミ。その漢字名は誰も知らなかった・・・。

我輩の親しき人々が、それも年下の方々が亡くなった話は今までにもう何度も記してきた。
記していぬお客さん方もいて、焼き鳥屋さのもの大将、焼き鳥屋でんでんの大将、葬儀屋の若社長、スナック アルジャンのママ・・・我輩より年長者は、さのも、ママ、サラリーマン時代の先輩客ホソカワさんの三人だけ・・・。
我輩は皆に言った、「俺と親しくなると若死にするぞ・・・」

深夜、地元の私鉄駅に降り立ち、駅前のコンビニに立ち寄った。
昼間、バイトと共にレジに立つ中年すぎのオーナー夫妻の奥さんが一人。
「大変ですね、こんな遅くまで」と声をかけ・・・こうして我輩はクソ面白くもない日常にまた戻っていくのだった・・・。
が、我が家には木材の、黒ペン描き細密イラストが額に入れて飾ってある。
「将来値打ち出るかもやからサインしといてや」と、当時彼女に言ったのを覚えている。
それを目にするたびに、これから「木材」のことを今までと違う意味で思い出すのだ・・・。

「コロナ禍の衝撃」完

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