518「今夜の本!」(3/2021のベストは?)

4.5.月/2021

ガジュ丸評価基準。
5「傑作!」 4「秀作」 3.5「佳作」 3「普通作」 2「不満作」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション系 ※=再読作

★「今夜の本!」

01.「ナイルパーチの女子会」柚木麻子/文春文庫/4.0 山本周五郎賞
02.「二年半待て」短編集/新津きよみ/徳間文庫/3.0
03.「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」NF/アレン・ネルソン/講談社文庫/3.0
04.「マザコン」短編集/角田光代/集英社文庫/3.5
05.「屈折愛 あなたの隣のストーカー」NF/春日武彦/文春文庫/3.0
06.「本当の戦争の話をしよう」短編集/ティム・オブライエン/文春文庫/3.0

★「原作vs映画」
原作と映像作品、どちらが「優?」

「ナイルパーチの女子会」原作:柚木麻子○ vs TVドラマ監督:瀧悠輔 脚本:横田理恵(第4話・第5話:綿種アヤ)◎

★3月の「ガジュ丸賞!」

副題が”ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」”の、「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」は、18歳の黒人が人間性を剥奪する過酷な米軍海兵隊での訓練を経てベトナムに出兵。行く先々の村で住人を殺戮。そして帰国後、ベトナム後遺症によりホームレスに。が、あることがきっかけで小学生を前に戦争体験を話すことになり、その席上での生徒からの質問が本書題名の「ネルソンさん・・・」。で、ネルソンは以降、反戦運動に身を投じるのだが・・・「?」が、かの有名な「ソンミ村虐殺事件」以外に(韓国軍によるベトナムにおける虐殺事件のぞいて)こんなにも米軍の村人抹殺行為が?という点。本書に訳者の名はなぜかなく、日本人が本書を「構成」という点にも「?」。ネルソン賛辞を本書に掲載の日本人らが「左派」の人々というのにも「?」で、この手の作品に毎度のごとく信憑性が・・・となる。

で、ティム・オブライエン「本当の戦争の話をしよう」を読んでみた。
アメリカ陸軍小隊のベトナムでの生と死が22章に分けて描かれている。が、ベトナム人の「死」については、一兵士が「思わず放ってしまった」手榴弾で死んだベトコン青年兵士の死に様を目の当たりにし、後悔、苦悩する描写のみ。かつ、訳者がいう「翻訳をしている途中でも、ここはもう少しスマートにすっきりと書けるんじゃないのかなと首をひねることもないではなかった」とあるけれど、我輩はその訳文自体にそう思う箇所多々。その訳者が我輩ファンでない村上春樹ゆえかもだけど。

同様に、後半ほんの一部が「もう少しスマートに」の感想だったのが、柚木麻子「ナイルパーチの女子会」
というのも、今年に入っての「評価5」的映像作品が、BSテレビ東京で今春放映された、本作原作の同名テレビドラマだったから。※
大手総合商社の美貌のエリート社員栄利子と、ダメ奥さんの生活日記をSNSで配信している、これはぐうたらな翔子の二人がふとしたことで知り合い、友情を育む寸前に至るのだけど・・・ドラマチックなストーカー劇に発展してゆくのだ。そのドラマ展開が「いい意味」でもうもどかしく、放映途中で原作読破。先に記したマイナス感想点がドラマでは完全消化されており、水川あさみ、山田真歩ら出演陣もイメージ通りの傑作ドラマだったゆえ、原作評価わずかにダウン。
でもこのドラマ、午前に第一話、同日午後に第二話放映という変則的スタートだったゆえ、冒頭見逃した視聴者多いんじゃなかろうか。

で、我輩同様、ストーカーについて興味を抱いた方へのオススメ本が、精神科医による著書「屈折愛 あなたの隣のストーカー」
ま、ストーカーの精神構造知ってどうなる?が我輩の読後感でしたけれど、本書でいう「人格障害」に当てはまる人物(墨丸顧客の)すぐ思いつき、き奴めは人格障害者だったんだ、と納得した次第。かつ、青春時代の恋い焦がれる思いと行動とストーカー行為の違いは?なんて我輩常々思っていた答えも書かれていました。

で、3月の「ガジュ丸賞!」は、柚木麻子「ナイルパーチの女子会」!
(ドラマ観てなければ、難なく、でしたけれど)

※今春のオススメドラマもう一作。
世界がゾンビに満ち溢れ、社会秩序が崩壊してしまったアメリカで、生存者グループがこれでもかという苦境の中で生き抜いてゆく(死んでしまう仲間も多々)「ウオーキング・デッド」です。
サバイバルの思いつく限りの要素がドラマチックに詰め込まれ、アメリカのドラマづくりに毎回ただただ感嘆(現在シーズン「6」!)。「ナイルパーチの女子会」と本作で、ああ、この春まで生きててよかったと思わせられた、単純な我輩でした・・・。

「今夜の本!」3/2021 完

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