524「今夜の本!」(5/2021のベストは?)

6.3.木/2021

ガジュ丸評価基準。
5「傑作!」 4「秀作」 3.5「佳作」 3「普通」 2「不満作」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション系 ※=再読作

★「今夜の本!

01.「炎情 熟年離婚と性」NF/工藤美代子/中公文庫/3.5
02.「ルームシェア」宇木聡史/宝島社文庫/2.0 日本ラブストーリー大賞
03.「はぶらし」近藤史恵/幻冬舎文庫/4.0
04.「あなたの不幸は蜜の味」短編集/PHP文芸文庫/3.5
05.「肉食屋敷」小林泰三/角川ホラー文庫/3.0
06.「白墨人形」c.j.チューダー/文春文庫/3.0

★5月の「ガジュ丸賞!」

確か買ったはず・・・と、自宅書棚で見つからずのノンフィクション本。
ある日、その書棚でたまたま手にした本の題名が「炎情」
で、先に興味抱いて探していた「熟年離婚と性」という副題が小文字で。
よくもまぁ本屋で目についたもんだ。
それが神のお導きならば次の段階は、実践?

我輩の世代ぐらいからか「熟年離婚」なんて言葉が表面化したのは。
で、我ら世代の28人もの”離婚の真実”が綴られている。
が、興味津々だったのに残念なのは、それらが女性側からの”真実”なこと。
うち2例だけが、自堕落な妻の元から”蒸発”し孤独死した男の話と、妻のギャンブル依存症で家庭崩壊に至っての離婚話以外は、男が全員”バカ”ゆえの離婚(男側の話も聞くべきだが)。
よくもまぁこんな男たちと見極めずに結婚したもんだ、そんな女もバカなんだ(ま、結婚自体がバカみたいなモンだけど)が、読後の第一感想。・・・人のこと、言えた柄じゃないけど。

☆「今夜の名言!」

「良妻を持てば幸福であり、悪妻を持てば哲学者になる」(ソクラテス)

感動の第1回日本ラブストーリー大賞、原田マハ「カフーを待ちわびて」以降この受賞作を何冊か読んだけれど、「カフー」超える作品には未だ出会えず(同等作にも。ま、受賞後活躍しているのも原田さんぐらい?)。
で、第5回受賞作「ルームシェア」は?
1ページめから「こりゃ・・・」。というのも、主人公24歳の独身女がいままで5人の男と付き合ったあげく(24で5人・・・)、その全員と同じ原因「男の浮気」で別れている(バカだ)。
そして男から「別れてほしい。殴ってもらって構わない」と毎回言われ、5人を「殴って」「別れる」という描写。ありえんでしょ、そんなワンパターン。
けれども受賞作ゆえナニかが?と読み進むと、5年間もルームシェアした男(主人公は”男”と意識せずの男)がラストで死に、愛すべき存在だったと女がようやく気づく(バカだ)という、どこかで読んだか観たかのお話・・・で、「カフー」またもや超えられず、というよりラブストーリー大賞自体に、もう幻滅。

反して、冒頭からのめり込んだのが、近藤史恵さんの「はぶらし」
シナリオライターとして順調な生活を送り始めた鈴音(36歳)のもとに、高校時代の同級生水絵から電話がかかってくる。
呼び出され深夜のファミレスで再会した水絵は7歳の男の子を連れていた。そして、離婚しリストラに遭い、再就職するまでの一週間だけ泊めてほしいと懇願される。そんなにも親しくなかったことから戸惑いつつも承諾してしまった鈴音だが・・・我輩も「人が良すぎ」といわれるゆえ、自分ならどう対処?と、前半で描かれる「はぶらし」の出来事あたりから鈴音の心模様にハラハラ。次回作はテレビドラマで見応えあった著者の「インフルエンス」を読みたい。

☆「今夜の名言!」

「気をつけなさいよ。嘘をつく人って、本当にまったく罪悪感なしに嘘をつくんだからね」
(鈴音への友人の忠告の言葉。そのとおり・・・)

副題が「イヤミス傑作選」という短編集「あなたの不幸は蜜の味」
6人の女流作家による全編遜色のない作品集。編者は細谷正充さんって方。
ただ、「イヤミス」って「後味が悪いミステリー」のことだけど、その点では期待したほどの「イヤミス」ではなかった点が残念。、

ラブストーリー大賞同様の「期待はずれ賞」が、角川の「日本ホラー小説大賞」。
今回読んだ「肉食屋敷」は受賞作ではないものの、「玩具修理者」での受賞作家小林泰三の短編4篇。ホラーというよりグロ小説多きこの賞の見本作みたいな作品集(題名からして)。ただ、”人間の一途な愛が恐怖を生み出す”という「妻への三通の手紙」だけは本屋で立ち読みすべしのオススメ作ゆえ評価アップ。

相変わらず昨今の翻訳小説、我輩にとっては”低迷”つづき。
サイコ・スリラー「白墨人形」は、文庫帯の宣伝文句「わたしの書くものが好きなら、この本を気に入るはずだ」(スティーブン・キング)。「(キングの)強力推薦文は社交辞令でも出版社からの依頼からでもない、きわめて個人的な本音の”つぶやき”だ」「ページを繰る手を片時も止まらせない」「世界40ヵ国以上刊行の傑作」に、またもや騙され、もう信じません。・・・この宣伝文句なければ、もう少し評価上がったかも。

☆「今夜の名言!」

「死は知らない誰かに訪れるもので、自分たちのような子供やまわりにいる知り合いには無縁なものだと思っていた。漠然とした遠い存在だった。けれども本当は、死は腐臭のする冷たい息を感じ取れるほど近くにいる」

「大人になるなんてただの幻想だ。結局のところ、本当の意味で大人になる人間などいない気がする。ぼくなど、運転免許を持っていることにも、パブで飲んでも咎められないことにも、いまだに驚いたりする」

「もう夜も遅いし、酔ってもいる。酒瓶の底に答えを見出したものなどいない。もっともな話だ。酒瓶を空にするのは、多くの場合、問いそのものを忘れるためだ」

(これら表現はキング的な「白墨人形」・・・)

で、今回の「ガジュマル賞」は、近藤史恵さん「はぶらし」!

「今夜の本!」5/2021 完

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