547「今夜の本!」(2/2022のベストは?)

03.27.日/2022

★「今夜の本!」

ガジュ丸評価基準。
5「必読!」 4「オススメ!」 3.5「損なし」 3「普通」 2「不満!」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション類 ※=再読 ?=ようワカラン

01.「いちばん初めにあった海」加納朋子/角川文庫/3.0
02.「第8監房」短編集/柴田錬三郎/ちくま文庫/1.0
03.「非色」有吉佐和子/角川文庫/4.0
04.「向かい風」住井すゑ/新潮文庫/3.5

★「ガジュ丸賞!」

時代小説作家柴田錬三郎の「現代小説」なんてつゆ知らず、興味津々で読んでみたのが日下三蔵編の、謳い文句が「シバレンの現代小説、幻の傑作!」という短編集「第8監房」
けれど、その8篇が「傑作!」どころか、作家の歴史的資料ならいざしらず、全作が珍しいほど不満だらけの、評価1の「駄作?」(?じゃなく、これはもう!だ)。どうりで著者の「現代小説」なんて今まで目にしなかったはず?この編者による有名作家のアンソロジー集多々あるようだけど、もう買わぬ、読まぬの、返金して欲しい840円+税!

これも興味津々で手にした本。
だけれども、手に「してしまった」ではなかった、今年から先人たちの作品を積極的に読もうと決意しての二作(シバレンふくむと三作だけど)。
一冊が、バイト先の図書コーナーで見かけ、その裏表紙あらすじに興味惹かれて自宅書庫探索し見つけ出した、1967年文庫初版定価百六拾円也の有吉佐和子「非色」。
その本、手に取ると日焼けで茶色に変色した背表紙がボロと崩れてしまうほど。なのに今まで手に取らずにいた。こういう名作が他にも我が書架に埋もれているかもと思うと・・・。

「非色」は、戦争花嫁の話。
主人公が羽振りの良い進駐軍の黒人兵士と結婚。黒い肌の子が生まれたことからの差別から逃れるように、米国に先に帰国した夫を頼って渡米。そして、軍人時代とはかけ離れた底辺での生活下の夫と再会するも、覇気のない夫とのスラムでの貧困と新たな差別の壁が立ち塞がり・・・。

もう一作が、1950年代に書かれた、住井すゑ「向かい風」
農地改革の嵐に揺れる農村舞台に、夫の戦死公報届いた農家の嫁が家の存続のため義父の子を生むことに。が、夫が抑留先シベリアで生存と知らされ・・・。

両作とも、過酷な状況下でも子を愛し、たくましく生き抜く底辺の日本女性が描かれ、昨今の児童虐待等の陰惨さなど微塵もみあたらぬ人の生き方を知らしめてくれる。
で、「ガジュ丸賞!」は、1964年という時代での発表作にも関わらず、戦後の外地での差別ふくむ戦争花嫁の状況を事細に描写した点で、「非色」に。

「今夜の本!」(2/2022のベストは?)完

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