570「今夜の本!」(10/2022のベストは?)

11.02.水/2022

ガジュ丸評価基準。
5「傑作!」 4「オススメ!」 3.5「損なし」 3「普通」 2「不満!」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション類 ※=再読 ?=ようワカラン

★「今夜の本!」

01.「奴隷小説」短編集/桐野夏生/文春文庫/3.5+
02.「爪と目」短編集/藤野可織/新潮文庫/2.0 芥川賞
03.「志賀島」短編集/岡松和夫/文春文庫/3.0 芥川賞
04.「特別な一日」短編集/朝山実 編/徳間文庫/3.5+
05.「夜の谷を行く」桐野夏生/文春文庫/4.0

☆「断念!本」
「面白くなさそう」と中断した、「断念=残念」本は?

「ニセモノの妻」短編集/三崎亜記/新潮文庫

積み上げた本の中から抜き出した、興味引く題名の文庫本。
が、作者が三崎亜記。デビュー作「となり町戦争」にゲンナリした覚えのある作者名・・・で、本書もゲンナリ。面白みも現実味もなし。

☆「ガジュ丸賞!」

異色。まさに異色短編集なのが「奴隷小説」
題名から連想するかものエログロさなく、「この物語は何なんだッ」と思わされた冒頭の、長老に背けば舌を抜かれるという女達を描いた(でもグロではない)「雀のお宿」連想させる寓話的世界など7篇・・・短編集ゆえの少々肩透かし作もありでの評価ダウン。

’物語’と思えぬゆえ反・純文学派の我輩、「史上最も怖い芥川賞受賞作」のウリ文句ゆえ読んでみた「爪と目」もやはり・・・で終わったけれど、同じ芥川賞作「志賀島」は、5篇共に興味ある戦中戦後の青春が描かれていての評価アップ。

「特別な一日」は’大人の短編集’・・・と思ったのは、作者が我輩の年代よりも上の方々だったゆえか(我輩と同年代の作もふくまれた12篇だけど)、やはり力量がちがうとの志水辰夫、藤原伊織、森詠さんらの作。奇しくも長編作をかつて読んで遠ざかってしまった作者たちだった・・・。編者の朝山実さんに拍手。

桐野さんの「奴隷小説」に続き文庫化された「夜の谷を行く」の女主人公は、かつて連合赤軍の「総括」と称するリンチによって次々と仲間が殺される山岳ベースと呼ばれる現場から離反。死体遺棄などの罪状で5年の刑期を終え、いまは人目を忍んで暮らしている。その彼女にある日、過去の亡霊がよみがえってくる・・・当時ノンポリの我輩でも「そういえば無名兵士だった彼らのその後の人生は?」と思い、奇しくもBSテレ東で10月31日放映の「あさま山荘事件から50年 元連合赤軍が今語る凶暴化集団の実態」での殺人、死体遺棄などで服役した男性へのインタビューと共に興味深かい作品だった。が、小説の主人公に比べ笑顔浮かべて当時を語る元殺人犯の彼より、架空の女主人公に人間味を感じた次第。文庫解説者は永田洋子の弁護士だった方。解説で終始、永田洋子を’さん’付けで記していることに戸惑ったけれど、今月の「ガジュ丸賞!」

「今夜の本!」(10/2022のベストは?)完

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