11「墨丸よ、店を捨てよ、街へ出よ!@」(沖縄へ)

今回は5月の沖縄旅行のお話を。
題して『墨丸よ、店を捨てよ、街へ出よ!』の連載第1回。
今月予定の我輩3度目の沖縄訪問に向け、過去の沖縄旅行で展開された日々を、そしてこれから展開されるであろう沖縄での新たな日々を記録していこうとの企画。では、むかし、むかしの2度目の旅行篇から・・・

★発端

1993年3月。
深夜の酒場墨丸のカウンター。
お客のMスナックママのひとことからこの物語は始まる。
「スミちゃん、5月に合同慰安旅行せぇへん?」

Mママ、毎年従業員慰安のグアム旅行を開催。酒場墨丸もお客さんを募って一緒に行かないかというのだ。
こういう歓びの提案に対しては我輩、切迫している経済事情なんぞ考えもせず、「いく、いく!ぜったい、行く!」

とは言ったものの、借金地獄の淵をさまよい続けている脱サラ人生の現実はやはりあるわけで・・・。
が、脳天気な我輩「3月、4月、5月休みなし、朝まで働きゃなんとかなるだろ!」と、サラリーマン時代の有給休暇消化王、遅刻の無冠王の異名をとった我輩が、閉店午前5時半、仕込み時間あわせて連日15時間労働、無休の日々に突入していったのであった。

墨丸側メンバーはこの時点、アルバイトの田中ホモ丸、お客サンで休暇のとれる高野山の怪物ことツカちゃん、香港丸こと暗鍵サンことシャべ倉サンこと倉鍵サンふくめ、男性4名。

★変転

こうして過酷な労働の日々の合間にも、旅行パンフ片手のMママと、「わしはグアムよりサイパンにいちどいってみたいワ」「もっと休めるんだったらハワイはどう?」なぁんて楽しき会話くりかえし、夢果てしなく広がったある日をさかいにMママの姿、ぱったり途絶えた・・・。
さらに参加者のひとりシャべ倉サン「スミちゃん、ボクぜったい行くから!有給休暇とって行くから!」と言い残し、5月1日付けで東京転勤・・・。

う〜ん、いやな予感・・・。
そしてこの不安感が次々と現実となっていくのだった・・・。

その1。
主催者Mママのスナックが突如クローズ。従業員離散。
海外旅行どころではなくなったというのだ・・・。

その2。
乗りかかった船だと新たに我輩幹事となり、旅行会社勤務の墨丸会員悪魔クンことカズシくんに、グアムまたはサイパン旅行の企画を依頼。
が、彼いわく「無理ですわぁ、この差し迫った時期。格安海外ツアーなんて、ぜぇ〜んぶ満杯ですわぁ」
う〜む・・・。

しかしここで悪魔クンの代案が出る。
4月28日オープンのリザンシーパークホテル、そのオープニング・キャンペーンがあるというのだ。
4人部屋3泊4日、32,900円のツアー。
行き先はしかし、海外でも日本国土、沖縄であった・・・。

★また変転

我輩は70年代に一度訪問。
車はそのころ右側通行。ウィスキーはジュース並みの価格。が、沖縄料理は口に合わず。首里城は石垣のみでひめゆりの塔は石塔と地面にポッカリ開いた穴だけ。6月の小雨降るなか泳ごうとした海は果てしなく遠浅で膝下までしか浸かれず。宿泊先のホテルは地下飲食街改装中で、真っ暗。その暗闇の中でひとつだけ灯っていた赤提灯の居酒屋で、ママさんの沖縄戦の話を毎夜聞いていた・・・。

う〜ん、そんな印象の、あの島へまた行くのかよ〜と思いきや、安けりゃ結局どこでもいいメンバーたち、あっさり賛成。
93年5月24日(月)〜27日(木)の日程も決定となる。

しかし、その3。
この「男たちの旅路」に目をつけた人物あらわる。
我が妻タヌコである。
「あたしも行く!」の一言で、彼女をふくむ我が一族が参加してしまうはめとなったのだ・・・なんとなく、ウ〜ム。

そして、究極のその4。
5月に入ったある日、タヌコあっさりいわく「旅行いけへんわ」
「な、なんで?!」と、小生のなにか悪事発覚かと我輩ドギマギ。
タヌコいわく「このころ修学旅行やん」
娘の修学旅行と日程の一部重なり、沖縄に行くと大阪で娘一人の日々が生じるというのだ。ホッ・・・。
ま、それは、いい。
問題はアルバイトの田中ホモ丸!
いかに勉学に興味がないかあらためて分かったのだが、今頃になって中間試験の時期と重なると判明。ホモ丸、反省の弁もなく、ただ、ただ「アルバイト料、沖縄へ行く前に精算して」の言葉のみ・・・。

う〜む、3人部屋か。
ツアー料金もちろん割高。それに、ちとさびしい。
ということで、当初メンバー表にも入っていなかった我が家の末っ子の存在が浮上。
この成人男子メンバーに子供一人加わるのはいささか問題ありだが、使い走りに利用もできようと、「やっぱ、おめえだけつれてったろ」
う〜ん、幼い目を輝かせるのを目の当たりにするのもまんざらでもない、と思ったとたん思い浮かんだ。
「ホモ丸が試験ということは、ひょっとしたらおめぇの学校も?」
あわててスケジュール表を見に走る末っ子。
・・・一瞬の歓喜にすぎなかったのであった。

となれば、やはり我輩、シャべ倉サン、高野山の怪物の3人。
割高になる旨、高野山の怪物に電話。
「あ〜、いいすっよ。でもまたなんでホモ丸クンいけれへんの?なに、中間試験?ち、ちょっと待って!・・・あっかんわ、わしも子供らの中間試験中」
う〜む、う〜む。彼は塾の講師だった・・・。
(お前らなぁ・・・!である)

ああ、シャべ倉サンとの二人部屋、一体いくらになるんだろ?
・・・結局、ふたりで91,000えん。ああ、ああ・・・。

「墨丸よ、店を捨てよ、街へ出よ!」つづく

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