38「2月という季節」

★ニッパチ

2月は特筆すべきことがなかった月だ。
ニッパチといわれる2月と8月は、この商売の世界においてヒマな月とも言われる。酷寒と酷暑。28日間しかない月とお盆休みの月。これらが要因なのだろうか?

特に墨丸では過去15年間、冬場の2月は毎年、売り上げダウン。
極端にいえば赤字といっていいほどの月になる。
お客さんが来店されるのが、毎夜平均22時30分から深夜2時すぎの時間帯。
北風吹きすさび小雪舞い散る夜中、だれもわざわざ外出しやしない。ましてや冷たいカクテルなんぞもいってみれば不要のシーズン。
駅から小走りで帰宅し、暑い風呂に入ってコタツでテレビみながらビール。
または、居酒屋で湯豆腐と熱燗・・・や、我輩やったら。
そうそう我輩ビール党じゃないけれど、そうして今月呑んだ季節限定販売のエビス「琥珀」ビールはコクがあって美味かった、ことぐらいか「特筆」に値することって・・・。

★タヌコがからむと

それでまぁ2月は、暖かくなり始める3月以降に向け、試行錯誤しつつの「準備期間」だったのかも知れない。

昼間の喫茶営業告知のための屋外看板ほかの準備。
店舗自体を知っていただくための駅貼りポスターの準備。
メニューの見直し等に費やした日々・・・。

また3月頃からは「家庭料理&バー」という形式にしようかという話もある。
「昼間の食事、夜はないの?」ってお客サンがおっしゃること多々ありとのことで。が、これまた昼間担当の例の我が妻タヌコがからんむので、ちょっと、いや大いに問題あり。

先日はじめて来られたお昼のお客サン、「夜は食べるものあるんですか?」と問われ、タヌコいわく「3月くらいからしようと思ってます」って返事しといたわ、となぜか得意げに。
・・・彼女の念頭には昼間の食事しかないのだ。
我輩「夜は夜であるやろ?昼よりメニュー多いやろ?」
タヌコ「あ、そ〜やった!」
何年働いとんねん・・・であるのだから。

★深夜の店

その他のことといえば、近辺でようやく「深夜に呑める店」を見つけたことか。
一軒は、371号線新町橋裏手の目立たぬ場所にポツンとある、「See-ya!」
もう何年も前から、雑貨店というその洒落た民家風店舗の存在を知ってはいた。そのうち喫茶店になりそして空き店舗に(駅に近ければ我輩が借りたかったほどの風情あり)。で、一度も訪れたことのないこと後悔しつつの昨年暮れ、帰宅途中の朝の4時ごろ、赤提灯が灯っていた。で、11日の深夜、訪問。
居酒屋に変身していた。
昨年夏オープンという、ミュージシャンのマスターと奥さんが経営されてるお店だ。たっぷりの麦焼酎ロックがうれしい。ただし閉店時間未定で、看板も出していず。
う〜む、なんとなくうらやましい・・・奥さんと一緒で、というのではなく、そうして成り立っている(として)ことが。

もう一軒は、お客のA子サンに教えていただきながら場所の分からなかったバー。ん?ゴメン。居酒屋でしたっけ?
後日「See-ya!」で偶然相席となったのがその「ジャンボリー」のマスター。で、21日訪問。
371号線市原町。洋服の青山の左隣。ビルの二階。
我輩、逆隣りを探していて分からなかったのだ。
O型のマスターというのとローゼズロック500円がうれしい。
たまたまおられたアシスタントのアイさんがこれまたお綺麗で、A型。
血液型ベストのカップルである。これにはなんとなくではなく、ホントにうらやましい。

が、我輩が店を閉めてそれぞれのお店に向かう、人恋しい気分最高潮の頃は大抵すでに閉店・・・。で、コンビニで「琥珀」ビール買って、下記ビデオなんかをひたすら見続けることになってしまうのだ・・・。

★「今夜の映画!」

「なごり雪」大林宣彦監督。02年。
くたびれた中年男の三浦友和とベンガルが青春時代回想しつつの、懐かしき名曲「なごり雪」の世界を描いた作品。これは我輩にとって発掘シネマだ。
が、ヒロイン雪子役の須藤温子と、イルカなんぞではない正統派伊勢正三の歌「のみ」印象に残る・・・そしてさすが大林監督、ロケ地の大分臼杵の町も(イヤミだけど)
当時の若者はこんなものだったかもしれぬが(我輩自身もかえりみて)、主人公祐作の雪子に対するあやふやな態度に終始イライラ。かつ映画ではどうしていつも悲劇のヒロインは我輩好みの美人でなけりゃならんのか、にもうんざり。
でもあの曲の世界はこう解釈できるのか、とある意味納得した、監督らしい題材だ。祐作役の三浦友和は個人的にはミスキャスト、だと思う。2/5。

懐かしさといえば、60年代の青春映画「去年の夏」(ストーリー詳細はもう覚えていないが題名とそのポスターデザインだけは鮮明に記憶に残っている)、その少女役の一人だったバーバラ・ハーシー出演の「パリス・トラウト」(スティーブン・ギレンホール監督。90年)は、50年代南部の黒人差別がテーマ。雑貨屋の主人デニス・ホッパーが黒人母娘を無造作に射殺するシーンは目を背けたくなるがこの映画、その緊張感が続かない。そういえば主演のホッパーも60年代の「イージーライダー」で知ったのだった。ハーシーももう60歳近い・・・年月の流れ実感。2/5。

「KT」阪本順治監督。02年。「亡国のイージス」同監督。05年。
好みとしては、我輩ファンの阪本監督独特のドシッとした作風の、金大中拉致事件を描いた「KT」か。どこまでが真実なんだろうと興味深い。
「亡国」も、ハイ、自衛隊が全面協力してくれました、っていう白々しさがなくってさすが監督と思ったけれど、大作すぎて大味か。
両作品に出ている佐藤浩市は存在感あり。アクが強すぎて昔は嫌いな俳優だったけれど、最近いい出演作ばかりだ。共に3/5。

「コンスタンティン」フランシス・ローレンス監督。05年。
天使と悪魔の狭間で生きるキアヌ・リーブスのこの作品、評判良くないって聞いていたせいもあり、かえってみれた。ただ「ゴーストバスターズ」的武器にはしらけたけれど。3/5。

でも、オリバー・ストーン監督「アレキサンダー」(04年)は、マイナス評価通り。
まず、金髪のコリン・ファレルがカリスマ性、猛々しさ皆無。「タイガーランド」や「SWAT」の黒髪の彼は凛々しかったけれど。
ま、教科書で知った程度のアレキサンダー大王の生涯を理解できたことが収穫か。3/5。

理解という点では、ヴィセンテ・アランダ監督「carmenカルメン」(03年)も。
カルメン題材はいくどか映画化されたのに今回はじめてみた。これだけ有名な物語だとみてないのになぜかもう食傷気味で、みはじめるのに努力を要した。
純な青年兵士が奔放な女に恋してしまうこのドラマ、我が青春時代にみれば惹き付けられたかもしれぬが、“恋と嫉妬は姉妹である。天使と悪魔が兄弟のように”の世界から遠ざかって久しい我輩にとっては、「アホな男・・・」と思うばかり。2/5。

「奇談 キダン」小松隆志監督。05年。
隠れキリシタンの伝説を追って・・・なんて我輩好みなんだけど(酔った我輩の十八番の話にコレに関した話アリ)、ヒロイン藤澤恵麻も可憐だけれど、あまりにもバカバカしいラストとその映像で、1/5。

バカバカしかったのをもうひとつ。
「殺意のサンマルコ駅」セルジオ・ルビーニ監督。90年。
「田舎町の寂れた深夜の駅で繰り広げられるサスペンス」・・・か、コレ?
ヴェネチア国際映画祭受賞作品というけれど、かつてのB級大量生産マカロニウエスタン的くだらなさで、ホンマに受賞かいなとビデオパッケージをしみじみ見つめてしまった・・・。1/5。

「2月という季節」完

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