141「キャバレー」

6.23.tue./2009

★序章

6月18日(木)、久しぶりに店を休むことに。
3ヶ月ぶりですか。

当日、いまだ不景気ゆえ「休まんとこかな・・・」とも。
が、この日同行予定の墨丸会員691号ポストマンが、「マスター休むんならボクも仕事休みますから」と言ってたのを思い出し、休もうと決心。生まれて初めてキャバレーに行く約束で。
セクキャバやキャバクラではなく(これらも行ったことはないが)、正統派「キャバレー」へ、です。
ちなみにキャバレーはフランス語で、舞台・ダンスホールなどのある酒場のこと。

でも我輩二十歳の頃、キャバレーで働いたことはある。
いろんなバイトをしたけれど、夜の仕事が当時いちばん高給と知って。
今はパチンコ店となった、阿倍野筋の「ロイヤルガーデン」という店で。百名ほどのホステスさん常駐のキャバレー。一階系列店はマンモス・バーの「プレイボーイ」
マンモス・バーってのは今はもうないけれど、だだっ広いホールに円形のバーカウンターがいくつもあり、客はお気に入りの男女のバーテンがいるカウンターで飲むってスタイルの店。青春時代はこんなところで飲んでいた。

その「ロイヤルガーデン」のボーイだった。
薄暗い席で灯されるホステスさんのライターの火が合図で、銀盆と布巾片手に注文を受けにそのボックス席に向かうわけ。
ビール瓶とグラスで満杯の銀盆を顔の高さに掲げ、薄闇を歩き回るのはなかなかテクニックを要したものだ。
で、一晩中歩き回った営業終了後、お客が飲み残し栓しておいたビールで賄いをいただく。これが楽しみ。

食事を終え店をでると、阿倍野筋沿いにズラッとホステスの「男」たちが迎えに来ていた。それはもう壮観というか異様な雰囲気。「ヒモ」って言葉が現実的に頭をよぎった最初のことだった。

ある日、隣の喫茶「田園」(この店は今でもある)で、出勤までの時間つぶししてると、顔なじみのホステスが「すみちゃん、教えといてあげるわ。この店の女の子、みんな男おるんやよ。注意しいや。私はおらんけど」と、その馬のような長めの顔でニヤリ。
「ああ、あの黄色のアップリケのTシャツの子、可愛いなぁ」と思った、出勤時のその容姿の子も、幼い顔立ちながらすでに男がいた・・・。

その後、近所の喫茶スナック「タムタム」に引き抜かれ(ここでの話はまたいつか)キャバレー勤めは辞めた。
その後働いた二十人前後のホステスがいたクラブでも(ここでの話もまたいつか)、全員独身の触れこみながら全員結婚してるか同棲中かで、「こんな店に飲みに来るなんて、バッカみたい」と、この類の店に出入りするのは青春時代しばらく皆無に。

★本編

で、三十数年ぶりのそのキャバレーだ。
きっかけは、墨丸の男性客がその店の厨房で働いており、ミナミのキャバレーでは最も良心的というような話から、「客として経験してみよか」と。

同行賛同者は彼女イナイ歴多年の691号ポストマンと、同歴多年すぎる787号ネチャーエフ氏。ジュンク堂前で午後4時待ち合わせ(ネチャーエフ氏は仕事の都合で間に合わなくなったが)。

待ち合わせ時刻が早すぎた。
キャバレーオープンは6時だった。
仕方なくポストマンと近所の「大阪豚(トン)センター」へ。
ここは立ったまま飲み食いする。
お任せ串焼き5本とホルモン刺身3種盛り、無料大盛りコールスローは食べ放題。地酒やら生ビールを飲んで一人千五百円もかからず。これは旨くて安くていいが、さすが立ちっぱなしはしんどい。頭上に電車のつり革がぶらさがっているのに気づいたのはもう帰る間際。
1時間でそのしんどさに我慢できなくなり、残り時間はジュンク堂で時間をつぶして、いよいよ千日前味園ビルのキャバレー「ユニバース」へ!

あ〜、この淫靡な?雰囲気は久しぶり。
入り口にはズラリとキレイどころが立ち並び(たぶんキレイだろう。見る余裕なんてなかったわけで)、黒服のドアボーイに案内されながら、「ここ初めてなんですけど」

その言葉が功を奏したのか、五百坪もの店内の我らのボックス席に現われたのは、ドレスアップした美女3名。
で、歌謡ショーと料理も付いての飲み放題お一人様四千五百円也。ホステスさんの飲み物ふくめて。
在籍ホステス120名。70歳の現役ホステスもいるとか。最近は中国人や東南アジア人のホステスも多いらしい。

気になったのは、我輩らの時代と違い、ホールのボーイさん達の元気のなさ。
不景気の影響か教育システムの低下なのか一様に暗く、笑顔もなく、オープンしたばかりの時間というのに、もう疲れ果てたという風情。
それといかんせん、ドアボーイさんの気遣いか(あったとしてだが)、美女達が若すぎた(ネチャーエフ氏は狂喜乱舞だろうが)。
我輩としては40代以上和服美人を希望していたけれど、なにぶんキャバレーデビューゆえそこまで注文するほどの余裕もなく。ま、我輩はロリコン趣味ではないということだ。

墨丸では毎度女性軍にコテンパンにやられるポストマンの楽しげな面差し、この夜初めて目撃。もてました、と思わせるほど彼女らは商売上手でもあった。
ま、行ってよかったというのが結論。また行きたいというのが本音・・・うふふ。

★あとがき

このあと味園ビル二階の墨丸会員700号ユミチャンの店「酩酊くらぶ」で飲み直す予定が、ネチャーエフ氏から「長居のガールズバーsinで待つ」と電話が(ユミチャン、ゴメンね)。

ガールズバーってのは、あれですね、世の中にスナックなる飲み屋ができた頃のスナックか。
むかしのスナックは、チャージもドリンクもいまのスナックよりも安く、カラオケもなく会話重視。で、さきのマンモスバーの分派的存在だったのを思い出した。飲み屋の歴史も繰り返す、であります。

「キャバレー」完

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