203 「高野山たどり着き隊物語E」(番外篇)

10.14.thu./2010

★番外篇?

以前連載の「高野山たどり着き隊物語」最終話(赤い灯事件篇)結末については、「この続きは店でお話しを」で終えてしまっていた。
その後お客さん方から「あの話どうなった?」と聞かれはしたけれど、あいにくそんな時には他のお客もいらして、これはじっくり腰すえての話やしなぁとなかなか話せる機会がないまま時が過ぎ・・・。

先夜、この隊のメンバーだった墨丸会員388号Cちゃんが、「今日、携帯であの連載読んでてん」「むかし読んだやろ?」「ヒマやったから読み返しててんけど、あの結末どうなったんやった?」
彼女にはもう10年位前に話してて、でもさすが詳細忘れてるらしく、そのときも他にお客がいらして、で「・・・番外編書こか」

最終話は、高野山奥の夜道の茂みに親指つめ大の、赤く光り輝くモノを見てしまい、後日地元の(今は亡き)祖父にそのことを聞いたところで終わっていた。
我輩「おじいちゃん、あの祠の曲がり角の茂みで赤い火みたんやけど、まさかあんなとこ電線通っててショートしとるわけでもないよな?」と。
祖父「マサキ、よ〜聞いてくれた!あれ、見たんか?あの曲がり角ではな、昔っから・・・」
その続きです、今回は。

★結末の序章

祖父つづけて、「あの山道ではな、夜更けに村人が町からの帰りにそこにさしかかると、行く手に誰かがタバコを吸いながら歩いとるような、ポツンと灯る赤い火がみえるんやと。で、今ごろ誰が・・・と『おーい、だれぞいなぁ〜』と声かけながら後をついていくと、前方の誰かは呼びかけにも答えず、その赤い火はどんどん遠ざかって、その曲がり角でふっつりと消えてしまう、という言い伝えがあるんや・・・」

一時は「アレは夢だったのでは?」と思ったこともあったけれど、みたのは我らだけではなかったのだ。

★余談

空飛ぶ円盤をみたことがある。
環状線新今宮のプラットフォームで電車を待っているとき、ふと空を見上げると小さな白い点が。「風船か」と思ってると、その後ろから同じ大きさのそれがジグザグに飛行しながら飛んできて、「お、円盤!?」
目で追っているとプラットフォームの屋根に隠れ、そこに電車が入ってき、会社に遅刻寸前だった我輩は屋根の反対側に見に走ることもできず・・・。

が、それとは別に、前述のように「夢だったのか」と思えるのが、当時住んでいた東京多摩市のマンションの5階、ベランダ脇の部屋で深夜に横たわっていると、開け放った窓の外、向かいの建物の4階辺りの空間を、黒いゴミ袋をクシャクシャにしたような物体が音もなく、風もないのに左手から右方向へスーッと。あわてて飛び起きてベランダに出て見つめていると、街灯の光でそのクシャクシャ面がにぶく光るその物体、向かいのマンションの角を曲がって消えていった。

奈良の川上村に向かう国道のトンネルを車で走行中、トンネルなので窓を閉めていたのだが、数人の子供の笑い声が。空耳かと思っていると、再び笑い声。同乗者たちに「いまの聞いた?」「聞いた・・・」

(話を戻して)、あの赤い灯をみた我ら三人、いまのところ無事なようではあるけれど(たぶん)、それらをみた村人にその後なんらかの変化はなかったんだろうか?気が狂うとか、特殊能力発揮するとか。いや、子孫になんらかの影響とか・・・ま、円盤をみたのも、ゴミ袋事件もトンネル事件も赤い灯事件のあとなんだけど・・・。
今思えば、この件についてはもっと祖父から聞き出しておくべきだったと後悔している。

以下に述べる、その仏像がそうだったのかということも聞き忘れていた。
弘法大師が高野山開闢の際、高野山を取り囲む三山の山頂に仏像を設置し「鬼門封じ」をしたという。
そのおかげで狭い山頂に鬼門恐れることなくいくつもの寺が建てられたといい、高野山奥の院裏から村に通ずる摩尼山越えの険しい山道に代わる山腹の道をつけた際、山頂にあった仏像を移設したのがその曲がり角の祠とか。なにかいわく因縁のありそうな曲がり角では?

★結末

祖父いわく、「あの曲がり角では狐が人間を化かす、という話もある」と。

村人が提灯を下げて夜道を帰っていると、後ろから「ヒタ、ヒタ・・・」という足音が。
「うん?今ごろ誰やろ?」と、立ち止まって提灯を後ろにかざしながら振り返ると、誰もいない。
で、また歩き始めると、「ヒタ、ヒタ・・・」
再び提灯をかざしてみるが、誰もいない。
それを何度か繰りかえし、提灯を持って正面に向き、歩きかけると提灯の灯がフッと消え・・・「あれ、風もないのに?」と、懐からマッチ取り出し、提灯のカサをガサッと下ろして火を点けようとすると・・・ロウソクがない。
「あっ、キツネにだまされた」と村人。

祖父いわく、「分かるか?なんでか?」「う〜ん?」

はい、キツネは人が思うより頭がイイとか。そして油モノがすき。
提灯のロウソクの油の匂いに誘われ、村人の後ろをついてくる、「ヒタ、ヒタ・・・」と。
村人は人だと思い、後ろを振り返る。
目線は、人の高さ。
キツネは足元。
村人が歩き始めると、キツネはふたたび「ヒタ、ヒタ・・・」と後をつけ、何度かそれを繰り返したとき、キツネはスッと村人の前に走りこむ。
で、鼻先で提灯の底をツン!とたたく。
ロウソクの火が消える。
「はて、風もないのに?」と村人が提灯のカサを下ろした瞬間、キツネは好きな油のロウソクをパッ!と咥えて逃げ去って、村人「あれ、ロウソクがない・・・?」となるわけであります。あはは。

どなたか、この深夜の山道に行ってみませんか?
赤い火に出くわした時には、勇気を奮ってその火はなんなのか、確認してみて。・・・結末は、あなただけが知ることとなってTHE ENDかも。うふふ。

「高野山たどり着き隊物語」完(たぶん)

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