223「役所人間対茶髪少年」

6.12.sun./2011)

★税金

今夜はヒマです。
雨の日曜日。
であるからして、久しぶりにこのページを開くことができました。

今月初旬、所用で富田林税務署を訪問。
用件終え、ついでに5月末支払い期限だった自動車税払い込もうと用紙差し出すと中年女性所員「あ、これは府税事務所での受付です」と、近隣にあるというその事務所記載地図取り出し「ここに行って下さい」

で方向音痴の我輩「期限過ぎてますけどコンビニでの支払いはダメですか?」と問うと「少々お待ちください」とデスクに戻り、たぶん府税事務所に電話。
しばし待たされる。

電話を終えた係員、上司らしき男性に相談模様。
その場に別の男性加わりなお相談・・・。
さらに、しばし待たされる。

と、上司らしき男性、窓口の我輩の元にやってきていわく「バーコードが入ってますのでコンビニでは無理ですね。河内長野市役所でなら受付られます」(そのとき脳裏には浮かばなかった「さっきの府税事務所はどうなってん」と)。

時計見ると午後4時過ぎ。
「いまから河内長野かよ・・・」と、うんざりしながら車を急いで走らせ河内長野市内に入ったところで、「うん?バーコードっていったって(毎月の支払い経験上)電気代も水道代も支払日過ぎてもコンビニ受付OKやん?」(ガス代はなぜかダメですけど)。

で試しに、すでにコンビニ2〜3軒通り過ぎていたのが残念至極だったけれど、その先のコンビニに車を乗り入れカウンターへ。
ここでグズグズしてたら市役所受付時間内到達困難や、と危惧しつつ用紙差し出すと茶髪の店員さん、「ありがとうございますぅ。承認画面タッチしてくださ〜い」

・・・なんやねん!
役所の、それも専門職の大人三人も揃っての相談の結果がこれかよ!と久方ぶりに「お役所仕事」という侮蔑的言葉を思い出すとともに、「あ〜あ、かれらは支払期限過ぎの請求書をコンビニに持ってゆくという下層階級民の暮らしを知らんのだなぁ」で思いとどまればいいものを、彼らをとてもうらやましく思ってしまっていた・・・。

注:コンビニでサッと問題解決したうれしさのあまり、昼間は「禁煙!」と煙草持たずに出かけてきたのに、「兄ちゃん、そこのエコー、ふたつちょうだい」。役所人間よ、コンビニバイトの茶髪君を見習いたまえ!

★新聞の片隅から

その@です。
外国人と違って「愛してる」なんて言葉、そう思ってはみても口にしたことがありませぬ。かつて「わたしのこと愛してる?」と問われても返答できずもありで(愛していたとしても。そういう意味ではボクは高倉健です)。

4月18日の産経新聞に、「へぇ、我輩だけではなかったんだ」という記事が。
「愛しているといえますか?」という日本語をテーマにしたテレビ番組があったそうで、そのなかで「否」と答えたのが加藤登紀子さんとか。

『好き』と違って『愛する』という言葉は重すぎて使いにくい。別れのときなら『愛していた』と過去形で使える、というような発言だったそうですが、これは分かりますねぇ。
欧米人は(現実知らんけどスクリーン上で)「愛」を連発してるけれど、かの国なんて離婚率ダントツっていうじゃありませんか。「愛は言葉じゃない」と高倉健はまさかいわないだろうけど、日本人(イコール我輩)の奥ゆかしさを改めて実感。ふふ、ふ。

注:たとえば「愛してる?」と問われた場合、「態度で分かるやろ〜」と返答すると「言葉に出してくれないと分かりません」と女性はいう。男は分かるんやなぁ、これが。そんな女が心変わりし始めたときなんてのもすぐ分かります・・・最近日本でも離婚率急増やけど、みんな「愛してる」なぁんて言いまくってるんやろか?

漢字学者によれば、「愛」という漢字は、人間が後ろを振り返るさまと人の足跡をかたどった文字。そして「心」が組み合わされている。つまり「いつくしみとなつかしさをもって振り返り、それを大切にはぐくむ感情」が本来の意味、だそうですよ。

そのAです。
次も気になっていたことへのひとつの解釈の産経記事。

今回の大地震で日本人の「冷静な被災者」のことが海外でよく取り上げられていますが、4月28日の記事の中に、救助されたおばあさんの第一声が「ご迷惑をおかけしてすみません」といったことが韓国人を感心させたというのがありました。

我輩も「ご迷惑を・・・」と過去なんども意識(かつ少々実践も)していた経験上「なんで?」と印象に残ったんですが、現地取材をしたある韓国人記者は「日本人はガマンせずもっと悲しんではどうか・・・」と。韓国人にとって激しく悲しまない日本人は、もどかしく、じれったく、歯がゆいというのです。

以前、かの国の人々の過剰とも思える喜怒哀楽表現について触れたことがありますが、今回彼らは逆に、日本に近く容姿もよく似ているのに「我々と違って日本人はなぜ?」と新たに思い、命からがら助けられても「すみません」という他者への配慮がいかにも日本人的であり、日本人の「美徳」として話題になっているというのです。

で、韓国側解釈として、日本では昔からの家庭と学校教育の基礎が「人に迷惑をかけない」をキーワードに、人々の人生訓にもなってき、秩序意識や感情の抑制はそのせいである。一方で他者を過剰に意識することにもなるとして、結果的に横並びや画一主義につながり、そこから横並びに従わないと「村八分」や「いじめ」が出てくるといった点をあげていました。

一理あるけれどもそれだけではなく、これも日本人生まれ持っての奥ゆかしさ、自然の脅威への諦念に基づいた矜持なのかも・・・。
内外パニック映画では、皆が落ち着いた時点でも慌てふためき泣き叫ぶ登場人物はある意味醜く描かれ、かつ死を迎えてしまうのが定番なのに。
韓国の人々よ、島国根性なんていわず、そんな映画をみて己とオーバーラップさせてみて・・・。

★「今夜の本!」

「邂逅の森」(熊谷達也。文春文庫)
大正初期、秋田の貧しい小作人の富治は伝統のマタギを生業とし獣を狩る喜びを知る。が、地主の一人娘文枝と恋におち村を追われ鉱山で働くものの、山と狩猟への思いを断ち切れず、再びマタギとして生きることを決心す・・・。
直木賞、山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した愛と感動の巨編!

こういう未知の世界を知り得ることができ、かつ胸躍る小説を読みたかった。
文枝、イクとの恋もせつない・・・。
触発されて山の民サンカを主題にした五木寛之の30年前の「風の王国」を探し出して購入。評価4/5。

「古川」(吉永達彦。角川ホラー文庫)
60年代初め、大阪の下町を流れる古川のほとりの長屋につつましく暮らす家族の小学生の娘の前に少女の幽霊が現れて・・・。日本ホラー小説大賞受賞作。

ノスタルジックな雰囲気はいい。
が、亡霊が現れてからの破天荒さがどうも・・・。併録の「冥い沼」のほうが物語としても優れていると思うのだけど・・・。3/5。

「子盗り」(海月ルイ。文春文庫)
京都の旧家に嫁いだ美津子は子供に恵まれない。姑と親戚筋の白い目に耐え切れず、ひそかに産婦人科から新生児をさらおうとするが看護婦潤子に咎められる。が、その後まもなく赤ん坊を抱いて祝福される夫婦の姿が・・・。
サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞作。

かつて、息苦しさで読むのを中断してしまった本がある。
飯嶋和一「神無き月十番目の夜」だ。
たしかある村の百姓一揆をとりあげた歴史小説で、後半の重すぎる惨劇を想像するとページ繰る手がとまり、そのまま本棚の片隅に・・・。
本書もその気配あり。
幸せな家族に忍び寄る悲劇。あ〜、もうこの先のこと知りたくない!と久しぶりの感。登場人物それぞれの個性が緻密に書き込まれているのでリアル感もたっぷり。4/5。

「役所人間対茶髪少年」完

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