235「ぐわっ!」(辻村篇)

11.27.sun./2011

★「名前探しの放課後」

本の話がつづき申し訳なし。
前回は「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。『必ず二回読みたくなる』と絶賛された傑作ミステリー」、乾くるみ「イニシエーション・ラブ」の紹介だったけれど、今回は同様の作品につづけてめぐり合えて、「あ〜生きててよかった」のお話。

紹介作は、墨丸会員734号チャン氏からお借りした、辻村深月「名前探しの放課後」(講談社文庫)

本作は、219「時計仕掛けのオレンジの悪夢」掲載の、秀作「ぼくのメジャースプーン」の続編的物語。
今回の作品も前作同様、題名で選ぶとすれば我輩なら決して手にせぬ少女趣味的題名。けれど最近お客さん方、我輩の好み理解してくれてか「我輩なら決して手にせぬ。が、いい本」にめぐり合わせてくれるのはうれしい限り。

話はもどって、続編「的」というのは、前作の主人公である小学2年生のボクと歯列矯正金具をつけた同級生ふみちゃんが、本作では高校生に成長。が「脇役」として登場ゆえのこと。
愛すべきふみちゃん登場の仕方がこれまた凝っていて、これまた「ぐわっ!」
そういう意味でも「ぼくのメジャースプーン」からお読みになるのをおすすめ。
こうした関連が辻村ワールドというらしく、他作品の個性豊かな主人公や脇役が異なる作品で再度登場とのことで、辻村さんファンになるとこれがたまらないんでしょう。我輩はまだ2作しか読んでないけれどもうその気分。

物語は、一人の男子高校生が三ヶ月前にタイムスリップ。
その直前の記憶が、「同級生の誰かが自殺する」
が、その自殺者の顔も名前も思い出せない。
で、彼は友人たちとその「誰か」の自殺を阻止しょうと自殺予定者を探し始め・・・。

文庫本上下巻。
正直、途中イラつく。
「なんでこんな無駄な描写が?ましてや上下巻もの長さ必要?あの盟友チャン氏が我輩好みといった理由が分からん・・・」
が、それらを無駄な描写と思ってはいけなかったのだ・・・さぁ、深読みを。ならばこの物語の真実、解読できるかも?

さらに今回「最後の2行」の逆転ではありませぬ。
最終章迎え「あれ、事件解決やのにまだこんなにページが?」
で、ページめくると、「ぐわっ!」
さらに、彼らの友情に感涙す・・・。
(この辺りの記述、忘れて本作読んだほうがいいです。ごめん)
評価、おまけの5/5。

★「今夜の本!」etc

百田尚樹「風の中のマリヤ」(講談社文庫)
「アニマルプラネット」のテレビ番組ファンの某氏は「もう知ってる世界やからこの本、もうひとつ・・・」とのこと。が、オオスズメバチの戦士マリヤの懸命に生きる30日間の生涯は、我輩にとっては目からウロコ。まるで著者の代表作「永遠のゼロ」での特攻隊員のようで、スズメバチに親しみ感ずること大。ま、刺そうとしたらたたき殺すけど。評価4/5。

T.R.スミス「エージェント6」(新潮文庫)
暗黒体制下でのソ連舞台の「チャイルド44」(このミステリーがすごい!第1位)、「グラーグ57」(最高に面白い本大賞第1位)につづく秘密警察KGB職員レオの人生完結篇。
上巻、愛する妻ライーサとの始めての出会いから結婚に至るまでの回想シーンがあり、ファンにとっては納得のうれしいかぎりの章で読ませる。
が、ソ連本土からアフガニスタン等海外に舞台が移る章からは少々類型的すぎるきらいが・・・。
やはりこのシリーズ、共産主義体制化のソ連という特殊で過酷な舞台あっての傑作ともいえますか。おまけの4/5。

「ぐわっ!」完

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