250「怒涛の、空白消滅作戦」

6.16.sat./2012.

★挫折

1週間単位で更新、と始めた連載「墨丸氏の優雅な一週間」、ついに挫折。
「更新してませんねぇ」と、連載前と同様のことをお客さんにいわれたからでもないけれど、前回最終日以降の空白埋めるべく今回は題して「怒涛の、空白消滅作戦」・・・かな?

★或る文学賞

で、まず「新田次郎文学賞」のことを・・・
この賞、「自然界に材をとったもの、あるいは事実(史実)を根底とした文学作品に与えられる賞」だそうで。
今までも読んだ作品あるんだろうけど、今回あらためてこの賞を認識させられたのが・・・

平成19年の第26回(も、あるんだ)受賞作、諸田玲子「奸婦にあらず」(文春文庫)
賞の内容知らずしての読後、あとがきで史実と知って「むむっ!」
というのも、若き井伊直弼が初めて愛した女性「村野たか」の生涯描いたという作品ながら、この時代の女性の生涯なんて不明やろからと、かつ登場人物大多数ふくめ架空の人物(っぽいので)と思い込んでいての中盤、井伊直弼を敬愛する国学者長野義言が井伊家家臣となり主膳と改名した箇所で、「おお、この男は主膳だったのか・・・」

以前読んだ五十嵐貴久の時代小説「安政五年の大脱走」で、直弼の懐刀として悪行はたらく実在の主膳がその人であったわけで。
さらにあとがきで、主人公たかふくめ登場人物すべて実在と知り、さらに「むむっ!」
彼らの生涯描ききった作者の力量、かつ井伊直弼の真摯な生き方に感服した次第。本作読めば「安政五年の」はもう薄っぺらに思えてきますぞ。

幕末志士中心による明治新政府によって「誹謗され貶められてしまった」井伊直弼、主膳らを本書同様「奸物にあらず」との昭和28年作の舟橋聖一「花の生涯」(NHK大河ドラマ第1回作品でもあり)により、「波乱に満ちた生涯と悲劇的な最後」のこの群像劇に、本作登場までの半世紀、名作「花の生涯」意識しだれもがこのテーマに取り組むことがなかったとのこと。
で、「安政の大獄」でのマイナスイメージ多々の井伊直弼のこともっと知りたく本屋に走るも「花の生涯」見当たらず。読みたし。

先日、録画していた水戸藩士側視点で描かれた「桜田門外ノ変」みたけれど(殺陣はリアル)、タレ目で嫌いな大沢たかお主演ゆえ早送りで視聴してしまった。もう一度みてみようか。たかの過ごした彦根の多賀大社にも行ってみたし。評価4/5(史実と知らずドラマチックな展開期待しすぎて)

★リモコン

先月の暖かすぎた昼間、厨房でエアコン始動。
稼動終了後、「あ、こんなとこにリモコン置いたら・・・」と思いつつも、「潜在意識下にこの特異な場所のこと埋め込まれるわけやから忘れるはずがない」と、そのままに。

そしての後日、「リモコン・・・?」
ない。
どこに置いたか、忘却。分からなくなってしまっていた。
そんな事態によもやなるまいと確信していたはずなのに。
潜在意識化に「埋め込まれる」通り越し、もう「埋没」。アホか。アホです。

リモコンなければ、最近のテレビもクーラーもただの箱。
クーラー本体各所さぐれどスイッチの類一切なし。
「え〜、リモコン発注せなアカンのかよ〜」とうんざりしつつ、密室状態の厨房で汗まみれになりながら雑然が支配する事務机周辺中心に整理しつつの探索はじめて・・・も、ない。
「まさかこんなところに」と思えるような背の届かぬ棚の上、パソコン裏、ずぅ〜っと離れた冷蔵庫の上、食器戸棚の中、使っていない引き出しの中などなど・・・あの「潜在意識下」的想定場所、数日間探索すれど、ない。

・・・あのときの「潜在意識下」云々はいったいなんだったのだ。
ホコリにまみれたリモコン、もっとキレイにやさしく扱ってやればよかったなどと、愛する人を失ったごとくの軽い錯乱状態(厨房の暑さによる)・・・のある日、ヒゲ剃ろうと毎日開けてるカミソリ等収納してる小引き出しを、常日頃リモコンも収めてるその小引き出し開けると、その奥にあった、リモコンが。

「潜在意識下」という記憶はなんだったのだろ?
同様にキッチンバサミ、カーボン紙の束、人間との愛も見失って、これらはもう短いもので数ヶ月、長いので五年近く経過してもみつかっていない・・・。

★カレーライス

久方ぶりにタタミさん(私が勝手につけたあだ名)ご来店。
毎度アルコールしか口にしない方なのにめずらしく、「マスター、フードのオススメは?」
「ありませぬ」
「なんでぇ?こんなにメニューフードあるやんか」
「私が腕に覚えの板前ならば、今夜はこの新潟産のコレコレってこともあるかもですけど場末のこのバーでは。ま、ナニにせよ好みですよ。名物に旨いモンなしっていいますし」
「でもなんかあるやろ〜?」
「とよくいわれるンで先日、注文の多いフードに丸印つけましてん。チーズ系、ミート系、なにがお好みで?」
「夜食系」
「じゃあ、カレーとか」
「オススメ?」
「ですから好みですって」
「レトルト?」
「ちゃいますよ〜!今年は今日ので六作目のラスト分です。私が食べるの飽きるから去年は風味変えながら三十作以上作りましたか」
「おいしいの?」
「ですから好みですって。今年の四作目なんて『これが最高!』っておっしゃるお客さんと、『いままででコレがいちばん嫌い』って方いらしたもん。ココイチカレーが最高って人もいますし」
「じゃぁ、カレーライス!」
で・・・しばし間。

「う、うまいやん!久しぶりにうまいカレー食べるわ!」
また・・・しばし間。

「マスター、追加でハーフサイズ、いける?・・・六作目かぁ、もうないんやなぁ、これ食べられへんのかぁ・・・」

ハーフなんてメニューにないんだけれど、そう褒められるといそいそとハーフサイズのカレーを作ってしまった。それも六作目残量すべてつぎ込んでの多めで・・・ああ、単純。

が、墨丸カレーは我輩作るたびに試食するぐらい。
果てしなく風味変えたカレー作り続けているのだけれど、なぜかカレーだけは自分で作ったものを食べる気がしない。
で、食欲減退気味のボクは今日の夕食も安価ゆえのココイチカレー・・・。
近辺では上等カレー、サンマルコカレーが好みなんだけれど。インデアンカレーさん、住吉区に出店してくださ〜い。

★まごころを君に

先日WOWOWで、ブライアン・デ・パルマ監督の70年代米映画「愛のメモリー」をみた。

妻と娘が誘拐されたあげく亡くしてしまった実業家が十数年後、イタリアで妻そっくりの女に出会う。妻を忘れられない主人公はその女性との結婚を決意。女は承諾するのだが、そこにはある悪意が秘められていて・・・という物語。当時、映画館でみたんだけれど、すっかり内容忘れていた。

再度この作品みた理由は、主演が懐かしのクリフ・ロバートソンゆえ。
彼主演のラルフ・ネルソン監督の60年代作「まごころを君に」は傑作だった。
当時の批評で「こんなにいい作品にこんな陳腐な題つけるなんて」と、たしか評論家の双葉十三郎さんだったかが述べていて「同感!」の記憶あり(原題「CHARLY」で「R」が反転した文字だった)

この映画知らぬ方も原作がダニエル・キースのベストセラー「アルジャーノンに花束を」といえばお分かりかと。
知恵遅れの青年チャーリーが脳外科手術によって天才になり・・・という小説の映画化作品。ゆえに原題はチャーリーの手書き文字で「R」が反転してたわけ。

ロバートソンはこの作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞。
チャーリーが手術後ベッドで目覚めた瞬間、その瞳自体が知的な輝き放っていたのが「すごいなぁ」と思った覚えありで、後日受賞知って納得。

ま、それで「愛のメモリー」再見したわけだけれど、当時はそう思わなかったヒロイン役のジュヌヴィエーヴ・ビジョルトが「サル顔」なのには幻滅。「猿の惑星」終始思い起こしてしまいサスペンス堪能するどころでは・・・。
妻そっくりの女性は死んだはずの娘だった、というのが映画のオチ。

★ミニトピックス

@ 236で記した「ゴンちゃん、ごはんやでぇ、ランチやでぇ」の猫バアサン、最近その声聞かんなぁと思っていたら、先月亡くなられたとか。
ワンルームマンションの一室での孤独死。ちなみに猫の名は行方不明になった飼い猫の名だったそうで、その呼び声に我輩悩まされていた当時、痴呆症気味だったとか。合掌。

A 「ドラマのフジテレビ」といわれますが、往年の「東京ラブストーリー」はやはり傑作だった。恋愛のすべてが凝縮してます。BSフジで「北の国から」「101回目のプロポーズ」につづいての再放映中。営業終了後の朝方、録画分みながら一喜一憂。若者よ、みるべし!これが恋というものなのだ。

B 我輩だけ?UFJバンクのATМ画面、アニメの美形男女がひっきりなしに頭下げるのをみて腹がたつのは?
マンガに頭下げられて成人顧客が「よしよし」とでも思うと銀行は考えてるんだろうか?そんなのに金かけるぐらいなら入金手数料ゼロにしてや。
で、そんな気になるのは我輩だけじゃないだろと思いきや、うちのお客さん方「なんとも思いません」(すみません。貧乏人のひがみでした・・・)

C 新フード誕生!
お客さんのご要望にお答えし「墨丸風やきそば」が。濃口にも出来まする。

「怒涛の、空白消滅作戦」完

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