255「偶然と最悪」

9.14.fri./2012

夜毎宵の口から閉店まで飲み続けてくれる狂之介、のぶりんらのおかげで(ありがと!)・・・更新大幅に遅れました。

★ミニミニ・タイタニック

8月18日(土)午後、雷と大雨の日。
長居公園で女性2名が落雷で亡くなられた日です。合掌(と記しつつホントに祈念してない人ってなんだかなぁ。おのれふくめて)

最近のゲリラ豪雨にはもう慣れたかと。でも・・・
「今日の雷はすっごいなぁ」と、外の様子みてみようと簡易ベッドから起き上がると、「あっ、ポセイドンアドベンチャー?タイタニック?」

ベッド下、店のフロアに水がヒタヒタ。
「ン!?」と視線あげると入り口ドア下の隙間から水がヒタヒタと。
ホント、映画で観たような1シーン。
あわててベットから降りて窓の外みてみると、もう道路が大和川支流か、我孫子池か、雨の中の幼児用プール状態。
このビルはすでに陸の孤島だった。
気づくと裏口からも水がヒタヒタ・・・。

年末大掃除でのフロア拭き掃除用にと溜め込んでいた古雑巾の束持ち出し(溜めといてよかった。モップなんてあらへんし)、ドア下隙間、砂袋がわりに埋めての拭き掃除。蒸し暑い中、バケツかかえて汗だくで拭き掃除。営業時間中ならこれはもう完全に臨時休業。

再度窓の外みてみると、我孫子筋北行き道路通行止めなのか、警官が当店に至る道路へと車両迂回指導中。
それら車が店前通過するたびに、ドーン、ドーンと水がドアにぶちあたって店内にザァー、ザァー。     
これまたそのたびに砂袋代わりの古雑巾流されて、勘弁してくれや・・・。
残り少ない人生でこんな経験するとは思ってもみなかった。こんなことはいままで人ごとだった・・・。

ただ店舗外周がコンクリートで固められていたので、先日の宇治市某地区での三回連続浸水(地獄やろと実感)のような泥水でなかったのはまだ幸い。
近所の居酒屋さんなんて床上10aほどに達する浸水で業務用冷蔵庫の下部が水に浸かったとか。うちは床上1aくらいだったか。

後刻気づいたのが、固定電話の不通。
NTT故障係に携帯で連絡しようとすれど電話殺到でつながらず。
数日後の21日、携帯片手に新聞読みつつ我慢強く32分も待ってようやく通ずる、4日目にして。故障係が故障してたみたいなもん。

このアクシデントが新聞テレビで報道されないのはなぜ?と、22日来訪のNTT修理マンに聞くと、会社等が休日だったのと、雷のひどかった南大阪の一部に限られた事故だったせいではないかと。
この日でようやく完全復旧の見通しというけれど、会社関係なんてパソコンも使えず大変だったろう。アナログダイヤル式電話時代ならこんなことはなかったんだろうか。
我が店のフロア約30%が水浸しという床上浸水の午後でした。
あ、ここ、床下なんてなかったわ。

教訓。
大阪市雨量58mm(我孫子周辺は不明)で我が店浸水するという恐ろしき現実つきつけられたこととモップの必要性!

★偶然

20日(月)、特に予定もなかったけれど告知通り店を休む。
一ヶ月ぶりの休み(次回は9月19日水曜予定)
で最近、休みのたびに通うようになった苅田9丁目の居酒屋「諒款」(りょうかん)へ。

我輩が座ったカウンター席の隣には、初めての来店というカップルさん。
大将とカップルさんとの会話のなか、「墨丸」って名がでて我輩ドキッ。
一瞬、山本周五郎先生の名作短編「墨丸」の話かうちの店の悪評かと思ったけれど、カップルさんいわく「諒款ってどんな店だろってネットで検索したら、墨丸ってバーの人が諒款のこと書き込んでて、それ読んで来ました」
へぇ〜、偶然こんなこと耳にしてしまうってことあるんやね。
「諒款」記事は249「墨丸氏の優雅な一週間」参照。

★続・偶然

24日の金曜日(というのに)午前12時前に残っていたお客さんは墨丸会員734号チャン氏ただひとり。
「マスター、ヒマやねぇ、もうお客来ませんよ。呑みに行きましょうよ〜」
「・・・」

先日もお客さんと話したのだけれど我輩、女性の誘惑に対しては毅然とキリスト的態度貫けるんだけれども、こうした酒席への誘惑には弱い。滅法弱い。弱すぎる。
で、「行こかぁ・・・」
お客さん、その後に来られるのが分かってても、なのだ。

で、午前2時過ぎに帰店すると、店前にタクシー停車中。
「ん?うちのお客さん?」と通りすがりにチラッと車内みると、墨丸会員388号C姉がこちらに向かって手を振っていた。

一分遅ければ出会わなかっただろうし、携帯は店に置き忘れてたし、これも偶然の出会い。
で、店で二人して朝まで呑んでしまった・・・。

★二日続けての最悪。

9月10日(月)の午後遅く、「ここは入ったことないな」と一軒の軽食屋へ。
ドア開けて店内一瞥したとたん、「アッ、この店だったか」
以前来たことを思い出してしまった、ということは味も盛りつけもまるでペケで二度と来たくはなかった店ということ。
とっさに「財布忘れてきました」と言い出せなかったのが我輩、知恵の回らぬ証拠。

フライ二種と目玉焼きのランチ注文。
添えられたキャベツは千切りではなくウサギのえさ的に細かくなぜか刻んでいる。新鮮さまるでなし。フライはべチャ。でも火を通してるから大丈夫かと危惧しつつ衣残し中身のポテトなどのみ食す。キャベツは手もつけず。

結果、夕刻からトイレに行きっぱなし。水を飲んでも即トイレ。
吐き気と腹痛なかったものの、午前1時過ぎには血の気ひき顔面蒼白に。
で、「日曜は早閉まい可にしてるもので」と午前2時半、残っていたお客さん方にお帰り願ってしまった。
服用した「赤玉はら薬S」、効かんなぁとパッケージみると消費期限2010年8月だった。効かんもんやろか。

翌11日(火)昼前、ようやく腹具合おさまる。
24時間近く食事していず(でも食欲なし)、なにか腹にいれとかねばと思いつくのはカレーライスぐらい。
で、以前どこかの街角で見かけたカレーがメインのような喫茶店、「あれはどこだったか」と午後遅く自転車で探索に。

もう秋の雰囲気。
風が快い。いくらでも自転車を走らせることができそう。
でも体力低下で足に力が入らんが・・・。
たしか西の方角、我孫子と長居の中間地点で見かけたようなと自転車で走り回ってると、見つけました。

で入店。
カレーライス400円。安い。
・・・カレーほど見た目で「不味そう」とわかるモノはないのでは?
そこで出てきたのは、昨夜の残り物のカレー風。
すでに汁気も色艶もないそれが出された瞬間、ゼロに近かった食欲がゼロに・・・昨日のランチもやけど。
ただ今回、いまのところ腹具合は悪くはなってはいない・・・。

美人、不美人問わず、女性も見た目の清潔感、気品に感動を覚える。
でもその結果、今日まで悪夢の連続だったけれど・・・。
最近の女優にはそれら気品など覚えずして好きになれぬが、食事にもこれは
共通すると悟ったこの二日間だった。

★「今夜の本!」

先日、紛失した免許証再発行のため光明池へ出向いた際、駅構内の天牛古書店で古処誠二さんの「ニンジアンエ」(集英社)を見つける。
数ヶ月前だったか、彼の戦記物の短編に感服した覚えあり。でも彼の作品、書店であまりみかけずの作家。

本作は、昭和18年のビルマ戦線で、若き新聞記者が英印軍討伐の日本軍同行で知る戦場の真実、という内容。
翌年のインパール作戦で敗退する前の、ビルマ農民に歓迎される規律正しいアジア解放日本軍のその緻密な描写力から年配の作家と思いきや70年代生まれ。すごい力量かと。サイパン、フィリピン、ニューギニア戦線の作品もあるらしく、期待。
ちなみに本書題名はビルマ語で「宣撫」の意。評価4/5。

日ごろ、南方系女性の足の指はカエル足で(我が妻リ・フジンも。足指が開いているのだ。水虫に無縁かも)、「君たちの祖先は人食い人種で裸足でジャングルを駆け回ってたゆえだ」と彼女らに指摘していた我輩、本書で「なるほど」の記述あり。

ビルマ人の密偵が白人と思われるの裸足の足跡を発見する。
農夫の足跡にしかみえない日本兵に対し、「指の形が違う」と密偵は指摘。日ごろから裸足を通す農夫は土を掴むようにして歩く。雨期ともなれば泥土でビルマ人の足の指はおのずと開き、それは子供の時分にほぼ完成する。日本人やイギリス人の足は靴に形を決められる、というのだ。
う〜ん、我が考察はまぁ当たっていたか。人食い人種というのは間違いかもしれぬので「まぁ」だ。

久方ぶりの辻村深月さん作品以下3点。

「ツナグ」(新潮社)
彼女の作品の長編すぎる点に少々躊躇してしまうけれど(これは後半に感激ドラマ待ち受けているのが分かっているゆえのもどかしさかも)、本作は連作長編ゆえか簡潔。が、いつもの辻村節は変わらず。

生者と死者との再会を叶えてくれる「使者(ツナグ)」と依頼人たちの物語。
女子高生が悪意を抱いていた亡き親友に再会する章のドキドキ感、婚約者の失踪の謎がとける章での感涙、そしてツナグ側がみた死者と依頼者たちの総集編ともいえる最終章はもうページを繰る手が止まらぬ。吉川英治文学新人賞受賞。5/5。

本書で「う〜む」と思った記述。
ある夜、主人公の男が会社で倒れる。
それが過労によるものと知り、男はがっかりしていることに気づく。
「もっと深刻な病気を期待していたのかもしれない。病むことを期待するなんておかしな話だ。何故だろう。ぼんやり考えて、すぐに結論がはじき出される。病気は、変化だからだ」
それにより、強引に何かの決断を迫られるのを待つためだ、と男は気づくのだけれど、ああ、我輩もこうして夜毎酒を呑み続けていることもそれに通じているのかもと思い当たってしまった・・・。
関連して、ボクシング米映画「ザ・ファイター」でのヒロインの女性バーテンダーいわく「仕事中飲まないと、自分がイヤになる」のセリフにも共感。

「凍りのくじら」(講談社文庫)
辻村本愛読者の墨丸会員734号チャン氏に「この作品知ってる?」と聞くと「読みました」。で、「え〜、なんで貸してくれへんだの?」というと、「マスター好みじゃないと思ったもんで」
う〜ん、当たってたか。
主人公の女子高生性格に冒頭共感できぬ展開かつ理解不明な点あり、その不明点について読まれた三人の方々に聞いてみれど、みなさん覚えてもいず程度の作品?いつもの感動ラストシーンも軽くって、3/5。

「スロウハイツの神様」(講談社文庫)
若きクリエーターたちが共同生活を送るその生活描写の上巻半分近くまでは「いままでの作品でこれがいちばん退屈か」と。けれど、いつものように文中「?」と思っていたことがやはりすべて伏線。
で、それらが後半一気にあからさまになった時点でもうホロリ。
この伏線多用は「名前探しの放課後」に匹敵。

前述の作品では「ぼくのメジャースプーン」のふみちゃんが、本作では前述作品の主人公がそれぞれ脇役で登場。こういう趣向も楽しい辻村作品は発表順に読めば更なる楽しみあり。4/5。

「偶然と最悪」完

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