256「思い出のメロディー」

10.8.mon./2012

★ドキッ!のメロディー

音楽ファンではまったくないのだけれど、まれにドキッ!とする歌曲に出会うことがある。

古きは学生時代、試験勉強中に局変えたラジオから流れていた曲名不明の洋楽。
翌日、クラブ部室で皆にそのメロディ一生懸命口ずさんでみて教えを乞うも、だれも知らず。
そして迎えた前夜と同時刻のラジオ同局、偶然にも流れたのは新曲紹介コーナーでのその歌曲。
創設されたばかりの英国アップルレコードのメリー・ホプキンス「悲しき天使」だった。
ビートルズのP・マッカートニープロデュース曲で、初めて洋楽のシングルレコード買ったのがこの一枚。1968年のこと。

近年ではたとえば、車運転中にラジオから流れてきて初めて聴いた中島みゆきの「恋文」や大林宣彦「草の歌」
同じく「愛のままで」はその歌手秋元順子さんのお姿をテレビで初めて拝見し、これは歌詞からのイメージ完全崩壊崩落。
その体で言えばハードボイルド小説の名作「蘇る金狼」の作家、故・大藪春彦氏もただの小太りのおじさんでガックリした覚えが。その方面の作家、北方謙三、大沢在昌なんて方々もそういえば小説からのハードなイメージに反する小太り体型で幻滅・・・。

居酒屋有線から流れてきた歌曲でドキッ!が、石川さゆり「港唄」と「ウイスキーがお好きでしょ」、杉田次郎「再会」、高倉健「時代遅れの酒場」
墨丸創業当時、この「ウイスキー」と「時代遅れの」を店のテーマソングにして開店時と閉店時に流そう、という企画倒れの話もあった・・・。
「愛にゆれて」という歌曲では、店の大将に「この歌手だれっ?」「大月みやこちゃう?なんて歌か知らんなぁ」
で、カラオケボックスで調べてのそれが「愛にゆれて」だと知り、その大月さんにそれまで興味なく意識したこともなかったゆえテレビで初めてそのお姿みて、「なんでこんなおばあサンが愛の歌・・・」

そしての今回、WOWOWとNHKしかTV見ていない我輩、たまたまの民放番組で聞き知ったのが、旭化成のCМソング。
で、久方ぶりに、ドキッ!

普通そんな時、画面片隅に歌手名や曲名表示されるのに、それはなし。
その番組録画し常連方々に「これ、誰が歌ってるの?」と聞けど、どなたも知らず。
でも曲名は「これって山口百恵の“さよならの向こう側”のカバーちゃう?」と墨丸会員850号キョウちゃん。
百恵なんて不美人で当時なんの興味もなく、でも彼女からたぐって「Ten」という女性歌手にたどり着きました。
その魅力的な歌声のTenさんについては詳細不明なままなれど、久しぶりにCD購入したい欲求にかられてる今日この頃。これまたガックリしなけりゃいいけど・・・。

★男の友情

BSでかつてのテレビドラマ「俺たちの旅」が。
若き中村雅俊、秋野太作、田中健の三人の友情を描いた青春ドラマ。ですが今回は、なんと彼らの二十年後と三十年後を描いた作品の再放送。
当時は自分の青春に無我夢中ゆえドラマなんてみる暇もなく、この初期青春篇もあまり観てませんでしたが・・・。

今回の中年篇は、若者だった彼らの40代と50代の人生が描かれている。もちろん脇役もそのまま歳とっての出演。
すっごいなぁ、こんな企画ドラマがあったなんて。
時代が我が人生と重なり、かつ我が友人たちのこと思い出し感激。

最終回で田中健が中村雅俊と東京駅で別れるシーンで田中が言う。
「会おう。歩ける限り、命ある限り」
分っかるなぁ・・・。
60歳代ドラマも制作するのかしらん。して欲しい。何人か老衰で死んでるやろけど。
主題歌を作詞・作曲していた小椋佳もその甘い歌声からのイメージに比べ実物にはガックリしてしまったことも思い出してしまった・・・。
ちなみに「俺たちの旅」は名匠鎌田敏夫脚本です。

中井貴一、石原真理子らの「ふぞろいな林檎たち」、その倉本聡脚本の「昨日悲別で」、ショーケンの「前略おふくろ様」なんかもそんなバージョンでみてみたい。いや、かつてのドラマ自体をもう一度みてみたい。
そうそう、青春時代以降TVやレンタルでもみたことがない若きライザ・ミネリの初主演青春映画「くちづけ」も、その映画自体をもう一度みてみたい。

★男の友情?

関連してもう一話。
女性作家三浦しおん短編集「きみはポラリス」(新潮文庫)のこと。
彼女が描く「男の友情」、女のくせにその描写やけにウマイなぁと感嘆してたのに、この作品で「ああ、やっぱり」。もう幻滅。オレはアホだった・・・。

冒頭作の「永遠に完成しない二通の手紙」と最終章「永遠につづく手紙の一文」は関連した作品で、これは男二人の友情が緻密に描かれているのだけれど、最終章で判明・・・本書は「恋愛小説集」とのキャッチフレーズゆえこの作品、ホモ的片想い小説だった・・・。

女の友情が存在せぬゆえ、女性は「友情」そのものが生理的にも理解できず、男の友情を描こうとしてもボーイズラブのような気味の悪い域を越えられぬのだろうか。
男が読む「レズ小説」分野はないのに、女性の世界では堂々と「ホモ小説」がまかり通っているのも気味が悪い。
で、いままでの彼女の作品に共感していたけれど、思い返せばそんな雰囲気多々であったかもとわが単純未熟さにガックリ。もう読まん、気持ち悪い。評価2/5。

でも、女性作家栗本薫の70年代の初期長編「真夜中の天使」、その手の作品と知らずに読みはじめ、その恋愛をつい男女のそれに置き換えてしまって夢中で読んだ傑作だった。それが、ボーイズラブ小説の源流といわれるモノだったと後年知る。

★「今夜の本!」

墨丸会員388号C姉からお借りした一冊の話。
彼女が墨丸店内で読んでいて我輩「あ、それ読みたかったやつや!」
で読み終わった彼女から「これもうひとつやで」と手渡されたそれは「オイアウエ漂流記」(荻原浩。新潮文庫)

南太平洋上空で小型旅客機が遭難。
生存者数名がたどり着いたのは小さな無人島・・・。
我輩、無人島物のファン。というよりサバイバル物ファンで、人類破滅小説、ナチの強制収容所で生き抜く人々の記録、孤立無援下での熱帯ジャングルや極寒の地での日本軍敗走の物語、ノンフィクション探検記などなど・・・時代、世界が変われば自分も陥る可能性ありかもで(でもないか)、自分だったらと感情移入しやすいわけ。

本書はC姉の前記言葉のインプットあったせいか、読み始めて「やっぱりそうかも。このドタバタ劇はどうもなぁ」
でも、無人島生活のなかでその各々のキャラが徐々に浮かんでき、また生きるための工夫知恵も多々ありで、久方ぶりのサバイバル小説の佳作に。評価4/5。

「これは極限!」と思える小説ではブライアン・ガーフィールド「砂漠のサバイバルゲーム」。食料も水もなしで砂漠に取り残されたグループが生き抜こうと工夫をこらす。
ジョン・W・キャンベル「月は地獄だ!」は、酸素も水も食料も残り少なくなった月でいかに生き残るかという男の物語。
松本清張描く平凡なサラリーマンがふとしたことから陥る日常生活の落とし穴から(不倫のうえの殺人パターンが多いけど)脱しようとあがく物語、これ、一番身近なサバイバルなのかも・・・。

挫折本、一冊。
佐藤亜紀「ミノタウロス」(講談社文庫)は、墨丸会員734号チャン氏に「これダメですわ。ボク、翻訳物苦手なんですけどこの本それっぽくって。マスターなら読めるかと」

で、挑戦。
帝政ロシア崩壊後のウクライナを舞台にした「ピカレスクロマンの傑作!吉川英治文学新人賞受賞」。面白くないわけがない。
・・・数行読んでは寝てしまう繰り返しだった。
なんなんだろ、この面白さのなさは。
チャン氏は本書三分の一で挫折とか。我輩はがんばっても半分位で挫折。
会話に「 」なく、それだけではないのだろうけど、文字が単なる羅列の世界と化しているような読後感。評価不可。本書ファンの方に教えを乞いたい。

★「今夜の映画!」

政治ドラマはあまり好きでないけれど、米映画「フェア・ゲーム」(ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン主演)は、見ごたえあり。
新聞片隅で読んだ覚えがあった「プレイム事件」がテーマ。

CIA女性職員とその夫の元外交官がイラクに大量破壊兵器がないことを報告したにもかかわらず、戦争遂行を正当化するホワイトハウスの圧力で極秘のはずの秘密情報部員身分を暴露されてしまう。以来、友人知人に「人を殺したことあるの?」なんて聞かれるのだ。リアル。CIAに情報提供したイラクの科学者たちが米国に見捨てられ抹殺されていたなど、記事に比べて深くて暗い、悲劇を知り、4/5。

イギリス・オーストラリア映画「トライアングル」は、遭難したヨットの乗組員達が大型客船に助けを求めて乗り込む。が、その船は無人?文字通り「無間地獄」が始まる異色作。4/5。

イギリス映画「パーフェクト・センス」は、人間の感覚を奪う感染症が蔓延。臭覚、味覚、触覚、聴覚、視覚が次々に喪失してゆく状況下で知り合った男女。病に犯されつつ恋に落ちるが・・・(死ぬしかないわ)。こんなテーマ初めてで、4/5。

オーストリア映画「ミケランジェロの暗号」は、ミケランジェロの未発見だった絵画を巡っての、絵画を守ろうとする強制収容所のユダヤ人と略奪しようとするナチとの迫真の攻防戦。4/5。

★「墨丸会員の動向!」

新・墨丸会員862号「リナちゃん」は大阪出身のA型。822号「優くん」のご紹介。
いわく「フード持込みOK!がうれしい、ぶるあああ!」(ぶる・・・は意味不明)

863号「アカネさん」は長野県出身のA型。
「通りすがりで発見。とても素敵な雰囲気で大好きです」
毎回、市大法学部出身四人組でご来店。

864号「キヨセさん」は大阪出身のO型。
「岸和田で美容師やってます。よろしければFLAPPERで検索を!」
キヨセさんとは我輩行きつけの居酒屋諒款で知り合いました。

865号「みきちゃん」は大阪出身の大学生。血液型不明。
「甘いカクテル大好きな音楽系女子です。ヨロシクです!」

9月19日(水)店休みの夜、ドアに名刺が・・・。
墨丸会員93号「シマザキくん」が高知から来訪されていました。
20年前の墨丸1号店時代のお客さんだった彼は、大阪のとあるホテルの元バーマン。現在高知で「K’s BAR」のオーナーに。十数年ぶりだったのに会えず!

9月25日(月)、仙台より同じく1号店時代の242号「シュワちゃん」来店。十数年ぶりの再会。
午前零時、長居のホテルに帰るという彼に「店閉めるから呑みに行こう!」と誘えど、明朝取引先に会わねばならぬと帰られました。ま、その夜それから忙しくなったのでしたが・・・。

57号「ひんけつ姫さん」が来年3月21日(木)、針中野で料理屋を開店されます。「年末オープンしてや、忘年会するから」とお願いしてたんですが・・・。
21日、どなたか一緒に飲みに行きませう!

「思い出のメロディー」完

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