284「ある三日間」

8.11.mon./2014

★墨丸ではときどきお客さんが泊まられます。

最近、月曜日にとって代わり木曜がヒマ曜日の傾向あり、今年6月から日・木曜を「早じまいアリ」に変更(月いち休みゆえのストレス解消のため)
酒好きな方々はその夜を狙って閉店後の我輩のアフター(店外飲酒)に「付き合ったろ!」と(別に付き合ってくれなくっても・・・)墨丸に来られるのですが、7日の木曜も墨丸会員91号М氏がその目的で来店、そして一泊。

7月は結局一日も店休まず、ゆえにストレス過多のこの夜、終電時刻も過ぎた午前1時頃、お客さん途切れるとあっさり閉店。
で、いきつけの居酒屋「なじみ」へ男二人で。
あ〜、むなし・・・。「・・・」じゃなくって「!」だな、この心境。

で、店に帰っての午前4時過ぎ、いつものように泥酔状態のМ氏はソファに。我輩は簡易ベットで文庫本手に取り・・・М氏は歳のせいか睡眠時間極端に短く、この日も始発出る5時半ごろには起きて「スミちゃん、帰るわぁ」

その時点から我輩急に空腹おぼえ、駅前立ち食いソバでもと出かけるけれど開いていず。まだネオン点いてた「なじみ」で好物のチキンライスでもと思ったけれど、こんな時間に作ってもらうのもなんだかなぁと、結局マクドのハンバーガー持ち帰り、コーヒー淹れて読みかけの文庫本ふたたび手に取って・・・。

で、ですよ、この金曜朝から日曜の朝までの3日間、閉店後ずっと昼過ぎまで眠らずその文庫本読みふけり(気づいたら午後二時半までという日も)、起床はオープン時刻の19時過ぎた19時15分とか19時直前とか!

ま、延々読書というわけでもなく、たまってしまったテレビドラマ録画分「昼顔 平日午後3時の恋人たち」「同窓生 人は三度恋をする」「家族狩り」「東野圭吾 変身」なんてのもみるわけで。
みはじめて少々バカにしていた、廃部直前の伝統ある大学応援団立て直しに中年サラリーマンが出向。応援団長をやらされる「あすなろ三三七拍子」が肩の凝らぬ面白さ。
で、その文庫本というのが、以下です。

★「今夜の本!」

8月10日(日)午後2時過ぎ、『小暮写眞館』(宮部みゆき/講談社文庫)下巻読了。
93年の直木賞受賞作「火車」で宮部さんファンになり、97の日本SF大賞「蒲生邸事件」でファンでなくなり、今回の文庫本も裏表紙の「心霊写真探偵」なんてあらすじだけでは絶対買わなかった作品。
が、帯のキャッチコピー「史上最高の物語」「最高の青春小説!」「感動のこの結末を」「最高の恋愛小説!」を目にしてしまうとこれはもう・・・買ってしまいました。

シャッター商店街にある古家屋付きの土地広告で酔狂な両親が手に入れた廃屋に近い元写真館の建物が舞台。
主人公の高校生花菱英一は同級生が彼のことを花ちゃんと呼ぶので両親や小学生の弟の光(ピカちゃんとも呼ばれてる)までもが、英一が「お兄ちゃんと呼べ!」というのに「花ちゃん」と呼ぶという冒頭のこの描写でもう物語に引き込まれてしまいました。

ある心霊写真の謎を解いていく話で「謎解き」なんて全く興味のないどころか拒否反応体質の我輩なれど、「え、この魅力的な話が上下巻にわたる物語なの?すっごい!」と、これが読ませるのです。大事件、殺人なんてもののない普通の日常生活での出来事を描いているのに、うまい、うますぎる展開。

で、「え、つぎは、つぎはどうなんの?この話で下巻まで引っぱるなんてどんな物語やねん!」と・・・はい第1章終わって「なんや〜、コレって連作小説かよ」と落胆したのもつかのま、第2章では別の心霊写真登場で、これまた!

登場人物のキャラが全員いい。
彼ら彼女たち個性的な面々を紙面に産み出せる宮部さんって天才ではないかと思ってしまったほど。バカ若手俳優使ってのドラマ化なんてしてほしくないほど、いい。
特に不動産屋の女事務員・ミス垣本(ミス・インターナショナルとかのミスではなく、社会人として大事なものをいろいろミスしているという意味でのミス)のキャラが秀逸。映画化されるとすれば安藤さくらなんて女優が似合いそう。

読んでいてある気持ちが芽生えました。
「あれ、この気持ちってなんかデジャブ?」と思いきや、帯のキャッコピーの片隅に「ずっとずっと、いつまでも読んでいたい。そんな小説ができました」と。大いに「う〜む」で続編期待してしまうほどの、評価5/5。

「ある三日間」完

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