324「死ぬまで読めるか?」

5.22.sun./2016

★「読まずに死ねるか!」転じて「死ぬまで読めるか?」

昨年11月3日の退院以降、今日まで記してきた我が肉体の障害による過酷な労働の日々ゆえかつてないほど本、読んでいず。
昨今少々落ち着いてきたゆえ冒険小説協会会長だった亡き内藤陳氏(※)の書評誌「読まずに死ねるか!」の題名にならい、連載「今夜の本!」改題し今回から「死ぬまで読めるか?!」をスタートさせたいと。
※内藤氏経営の新宿ゴールデン街のバー「深夜プラス1」に我輩若き頃に飲みに行ったことがある。その後設立された協会には発足時に入会。けれど会費払わずしていつしか会報も届かなくなって・・・。

すでに記したように読み終えていらぬ本は廃棄等したけれど、さて残った蔵書のうち何を読んで何を読んでいないのやら・・・とりあえず片っ端から手にとり、読後評価3/5(普通)以下本や「読んでる!」と気づいた本はどんどん箱詰めしてのフリーマーケット用に備え、理想としては後世の(本好き親族の)ための「面白本」のみ詰まった書庫にと。
・・・けれど、屋根裏ふくめ全壁面埋め尽くす書物、果たして死ぬまでに読み切ることができるのか・・・無理です。

と、倉庫の押し入れ整理してると、二十代に勤めていたZ団体時代に職場同僚や友らと作った酒と本のサークル誌「道化亭綺譚」誌発見。ここに毎月読了した5段階評価済みの作品一覧があった。
その後のD社勤務時代には堺市のミステリー小説愛好会に参加して作った書評誌もどこかにあるはずで、もちろん脱サラしての墨丸初期時代のいわゆる墨丸新聞の書評コーナーなどをもチェックすると、即ダンボール行き本が大量に発見できるわけで。
もしかして「無理」が無理でなくなるかも・・・やっぱり無理。

さて第1回「死ぬまで読めるか?」は・・・

1「残穢」 小野不由美/新潮文庫 5/5 [山本周五郎賞]
2「重力ピエロ」 伊坂幸太郎/新潮文庫 3/5
3「黒蝶」 グレアム・マスターソン/ハヤカワ文庫 2/5
4「コンラッド・ハーストの正体」 ケヴィン・ウィグノール/新潮文庫 3/5

・今回の翻訳本、それぞれ帯の「傑作ホラー」「絶品サスペンス」の文句にまんまと騙されてしまった。昔はこんな表示信じられたのに?翻訳もの売れぬゆえの苦肉の策か。その行為で「騙された」とさらに読者が離れるというのに・・・。
特に「コンラッド」は、キャッチコピー「凄腕の殺し屋が足を洗おうと自分の正体を知る犯罪組織のボスふくめ4人の殺害を決意する。が・・・」の「が・・・」部分が面白そうと。でも何の事はない、犯罪組織ではなくCIAに操られていたというオチも恋人の死のオチももうありきたり過ぎて・・・。
「黒蝶」の作家は翻訳本が希少ながら欧米では流行作家らしく、処女作が「マニトウ」と知って驚いた。70年代に同名ホラー映画を観た記憶があり、いまどき巡りあうとは、だ。

・やはり何冊読んでも伊坂さん作品は低評価。巻末で書評家の北上次郎さんが彼の作風について「シュールな物語やエレガントな前衛」と評してらして、我輩はその点が肌に合わないのかも、と。ま、これで見限れたか。

・今回の推薦作は、「残穢」(ざんえ)!
昔、作者の大作「屍鬼」を読んで「S・キング『呪われた町』のパクリやん」と見限ってしまってた小野さんの本作は山本周五郎賞受賞と知って・・・いや〜、怖かった(「!」ほどではなく「気味悪い」が妥当か)、そんな気持ちを久方ぶりに抱かせてくれての高得点。
実在の人物が実名で登場もするドキュメンタリータッチも内容を盛り上げている。ただ明治から現代まで続くある土地での因縁話ゆえ、何世代にもわたる居住者名をメモりながら読まれることをおすすめ。我輩など途中から三度も読みなおしてしまった・・・。

「死ぬまで読めるか?」完

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