332「新・恐るべき空白B」 狼が来た!

9.14.wed./2016

★ そしての8月6日土曜の朝が・・・

娘らが車で迎えに来るからとの我が妻リ・フジンの急かす言葉で起こされた(生きていた)
布団に横たわったまま(起き上がれなかった)とりあえず外出着に着替えつつも、行きたくないというよりやっぱり行けんと服着る手とめ、「具合悪いから行くのやめとく・・・」と。が、リ・フジンもうみえみえのその内心「また演技しとる!」とばかりに、「病人二人残して行けるかいな!」(二人とはリハビリ中の実母と我輩のこと)

そう、我輩はあの「狼が来た!」少年的存在であったのだ。
墨丸の店でもよく常連さん方に「あるコトないコトようペラペラ喋れるなぁ」といわれた。けれど「あるコトだけの話なんかおもろないやろ?」との我が世界観。
で、学生時代は我が名もじられての「ウソまさエチまさ」(エチは助平のエッチらしい)の異名で呼ばれたほどのホラ吹き男であった。
が、ウソといっても誰彼を傷つけるといったモノでなく、大阪人特有の冗談的なそれであったのだけれども、少々始末に悪いのがこれに多少の「演技」が加味されるわけで・・・。

子供の頃、ウソ寝入り(タヌキ寝入り)してるとすぐ大人にバレ、子供心に「なんで分かるんや?」と、弟や妹の寝姿観察してみた。
すると、うん、大の字になってる、横向きになってるなどと判明したなかで共通していたのが、「・・・あ、口開けてる?」
で、ウソ寝入りの最中に口開けてると以降まったくバレなかった。
高校時代の芝居では喫煙飲酒の場面で、「お前は酒タバコやっとるな!」と無実の罪着せられたことも。
近年では、朝方仕事終え自宅に差し掛かった我輩の入れ替わりにリ・フジン出勤しようと玄関先から車を出すところに出くわし、「シメシメ」とばかりに車の前の道路に横たわって倒れてるふりを・・・と、その我輩にいち早く気づいてしまったリ・フジン見送りに出ていた母がビックリ仰天。我輩の名を大声で呼び叫ぶも、注意力皆無のリ・フジンそのまま車発進させ・・・もう少しで轢き殺されるところだったということも。アホやん?

ま、今回そんなこんなの「狼が来た!」的習性災いしたか。
加えて我輩の病気は発症し病院で手当を受けるまでの時間が勝負らしく、すでに一晩生き抜いていたわけで、その生存にすべての力を傾注しきってしまったのか、もはやリ・フジンの弁に反論する気力まるでなく・・・再びノロノロと服を身につけることに。
遠き鳥取という行きたくもない異郷の地で入院もしくは死ぬのかもと思いつつ、そうなったらコヤツも思い知るやろ、「狼が来た!」じゃなかったと・・・第三者には理解できぬであろうこれら異常な考え行動は脳に溜まった血のせいでの乱心錯乱ゆえだったのかもしれぬ。

そうこうして娘家族の大型ワゴン車三列目シートに横たわりつつ、途中のパーキングエリアでリ・フジン姉夫婦家族、我が長男家族、次男夫婦の車と落ち合っての計4時間近くの炎天下のドライブ中、我輩はひたすら文庫本を手にその時間を耐え忍んでいたのだった。
が、さてナニを読んでいたのか、現地でのバーベキューや酒の味をもふくめ今思えばまったくわからぬまま翌7日帰阪の日を迎えた。

帰阪途中に寄らされた鳥取の海水浴場・・・。
我輩、海辺から遠く離れた桟敷で海を目にすることもましてや海水に触れることもなく、いやそんな意欲など到底あろうはずもなく、これまたひたすら文庫本をただただ手にしつつ、我輩の夏は終わろうとしていた。いや、人生がかも・・・。

「新・恐るべき空白」つづく 

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