442「今夜の映画!」10r〜12/2018 ( ドキュメンタリー篇)

1.11.fri/2019

あけましておめでとうございます。

・・・でもないわ。
年末から今日まで、絶・不調。
我が誕生日12月28日のささやかな飲み会に出席(ささやかでもなかったか。19時20分から早朝4時20分まで呑みっぱなし。で、前回に続いてまたもや貧血)
その日の前後からすべての予定キャンセルし、まともな食事も摂らずして終日横たわっていた。年明けも、切れた日本酒やタバコを買いに三度ほど近所に出かけたぐらい。まるで我が人生、再び「緩慢なる自殺」のような年末年始・・・。
けれど明日夕刻、ささやかな酒宴に誘われている。それを機会に不本意な冬眠から脱しようか・・・。

そんな日々、前回「今夜の映画!」掲載から三ヶ月あまりも経過していることに気づいてもいた(「今夜の本!」もね)。
というのも、溜まりに溜まった未見のとある録画作品群、年末までに「一挙消化ッ」と決意して・・・でもそれらが深夜の酔眼で観れるような娯楽映画じゃなく、すべてがドキュメンタリー。それが「駄作!」と切って捨てられるような作品、これがなかなかないもので(何年もの歳月かけての力作もあれば「フランス諜報員の告白」なんて「?」作もあったけど)、まるで深夜の勉強会のようだった(ゆえに今までほったらかしに?)。で、30本あまり立て続けに観て、挫折。まだ半分ほども残ってる・・・。

テレビ番組ゆえ感想メモとらずに観ていたおかげでこのコーナー休止に。でも新年迎えての連載再開に際し、印象作ぐらいはちょっと紹介しておこうかと・・・。
※これらドキュメンタリー、深夜放映が多すぎるッ。
バカ笑い番組と放映時間入れ替えるべきだッ。ああ、もったいない・・・。

★太宰治

太宰治さんが銀座のバー・ルパンのカウンターで、片足を椅子に乗せての有名な肖像写真。誰かと談笑の風情。そのお相手は?
肖像写真家の作品紹介の番組「決闘写真の男・林忠彦」で、その写真の片隅に写っている(気づかなかった)背広姿のそのお相手が、写真の原版から坂口安吾さんと判明。バーテン相手に談笑と思っていた我輩、太宰ファンの頃からはや半世紀、今回初めて知りました。

★タイタニック

不沈客船といわれたタイタニック号はなぜ短時間で沈んでしまったのか?
その永年の疑問に対し「タイタニック 新たな真実」では、新発見のタイタニック号竣工時の写真からその「原因」を明らかにしていく。
イギリスの研究者が、写っている船体外観の一部が変色している点に注目。その変色箇所の内側が、船会社も認めるボイラー用石炭庫で発生していた石炭火災の箇所に当たることを突き止める。さらに、鎮火できぬままなぜか出航し、それに恐れをなした機関員ら160名のうち8名残して下船していたにもかかわらず、乗客には一切知らされずにいたこと、その火災による隔壁の金属疲労が氷山との衝突で甚大な損傷につながったことなどが当時の機関員らの証言、数々の資料そして現代科学のもと明らかにされていく。
なぜそんな無謀ともいえる出航をしたのか、「スピードの出し過ぎによる避けられぬ事故」とイギリス査問委員会で結論づけされ火災には一言も触れられていないのはなぜなのか、なぜ異常なスピードを出していたのかが白日のもとにさらされる、まさに目からウロコのドキュメンタリー。

★死に山

同様に衝撃的な作品が、昨年出版され話題となったドニー・アイカー著「死に山 世界一不気味な遭難事故<ディアトロフ峠事件>の真相」を基にしたドキュメンタリー番組(題名失念)。
1959年、ソ連・ウラル山脈で起きた学生9人の異常な遭難事故。捜索隊は潰れた無人のキャンプテントからの足跡たどって、氷点下の雪の中で全員の遺体を発見。が、3人は衣服を身に着けておらず、全員が靴を履いていなかった。3人は頭蓋骨骨折。女性の1人はなぜか舌を消失。全員から高濃度の放射能も検出・・・。
何年か前にこの事件を紹介したドキュメンタリー番組を観た際に、ソ連の極秘実験による被害者か、超常現象によるものか等などと描かれていた異様な謎が、今回「なるほど!」の一挙解明。生きててよかったわの今回イチオシの作品。

★暗黒中国

「消えた弁護士たち 中国”法治”社会の現実」とともに中国の暗部を描いているのが、「馬山家からの手紙」
法輪功学習者孫穀さんは転向目的で「労働教養所 馬山家」に収容される。強制労働と拷問の日々のなか、所内で作らされる輸出向けハロウィンの飾り物のなかに、収容所の実態を告発する手紙20通を忍ばせる。そして二年後、その一通がアメリカの主婦の目にとまり、実態が世界に報道されることに。
当時すでに出所していた孫さんの生活を追うカナダの番組で、出所後も続く公安の監視と身の危険から逃れるため、孫さんはインドネシアに脱出するのだが・・・観ていて「この人こんな番組に出演して大丈夫かしらん?」と思っていたら案の定、ラスト「世界に伝えたい。中国では今なお何百万人もが迫害されています。しかし最後には正義が勝利します」の孫さんコメント映像のあとテロップが流れる。「この二ヶ月後、公安当局の接触があった。そして謎の死を遂げる」と。
こんな大国がいまだ崩壊せず、正義も勝利せぬままなことが平和ボケ日本人の我輩、不思議で不思議で・・・。

★日本の暗部

「本土空襲 全記録」では、日本各地での実態に比べ、日本全土でみた空襲の詳細な実態は不明だったいう。それが今回、アメリカ公文書類で明らかに。
無差別爆撃に踏み切った指揮官カーチス・ルメイには我輩常々反感抱いていたけれど(自衛隊創設に貢献したと日本から勲章授与されたとか。でも天皇自ら手渡さなかったというのが救い)、B29による軍事施設標的の当初の爆撃計画が、高々度からの爆撃ゆえ雲やジェット気流で成果が出なかったこと、1938年から行われた史上初の無差別爆撃といわれる日本軍による中国・重慶爆撃で一万人の死者を出していたことなどがその背景にあったとあらためて知らされると、安易に「ルメイめ!」と思うことができなくなってしまうではないか・・・反日左翼じゃないけれど、重慶爆撃やインドネシアでのオランダ人慰安婦の実態について日本人はもっと知らされるべきでは?

★馬琴さんが・・・

ちょっと毛色の変わった作品では「滝沢馬琴 虫歯と入れ歯と甘い物」があった。
「赤いパンツは体に良い」といわれるけれど、コレはどうやらホントらしい。
目に入れても痛くないほど可愛がっている馬琴の孫が重病に罹る。馬琴は孫の衣服や下着、布団、部屋飾りなどすべてを赤にする。この風習、同時期にイギリス、フランスでも行われていたとか。で、孫は奇跡的に回復。
最近の研究で「皮膚が色を識別する」ことが判明。そして身につけたり触ったりする「赤色」がリンパ球を活性化させ免疫力を高めることも判明しているという。以前何かで読んだが、古墳の棺内で発見される赤い砂「辰砂」「朱砂」というのがある。赤は仏教以前の自然崇拝では「魔除け」とされていたというのだ。人間の知恵とは恐るべきモノではないか。また番組では、当時の日本の入れ歯が欧州のそれに比べ、現代の入れ歯に近い優れモノだったことも紹介されていた。

★etc

最近何かと言うと安易に(?)「心のケア」なんてこといわれるけれど、原爆被災者や日本軍兵士の戦場トラウマの実態は?と思っていたら、「隠されたトラウマ 精神障害兵士8000人の記録」なんて力作が。現代における「長すぎた入院 精神医療・知られざる実態」とともに、日本の恐るべき精神医療現場の一端を知ることができた番組。

「今夜の映画!」10〜12/2018 (U / 映画篇)につづく

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