470「今夜の本!」9/2019のベストは?

10.3.thu/2019

463「ボクのビブリオエッセー」の投稿作、8月全投稿26作から月間賞選考4作には残ったけれど受賞には至らず。
その9月28日産経新聞選考会記事より・・・

司会者
意外ですが今回初登場の山本周五郎です。「日本婦道記」はいかがですか。
福嶋聡(ジュンク堂書店難波店店長)
年代的に「蔵書を読みきれるか」という最後はリアルで身につまされましたが、全体的にご自身との関わりを書いている割にはもう少し具体的に書いてほしかったなと。
江南亜美子(書評家・近畿大学非常勤講師)
語り口に独特なものがあって、作家への思い入れも感じました。ただやはり、より具体的なエピソードがある方が強い。
(毎回の当欄作、その具体的云々話ばかりなんでわざと省いたんだけど・・・でも、2,000円の図書券が送られてきた)。

★「今夜の本!」

ガジュ丸評価基準。
5「傑作」4「秀作」3.5「佳作」3「普通」2「不満作」1「駄作?」
NF=ノンフィクション ※=再読作品

01.「謝るなら、いつでもおいで 佐世保小六女児同級生殺害事件」川名壮志/新潮文庫/NF/4.0
02.「『少年A』この子を生んで・・・ 父と母 悔恨の手記」「少年A」の父母/文春文庫/NF/4.0
03.「しにんあそび」福澤徹三/光文社文庫/3.5
04.「そしてミランダを殺す」ピーター・スワンソン/創元推理文庫/4.0

★「寸評!」

殺人事件のノンフィクション読み進むうち、殺人者はその生活環境や生い立ちによる性格の歪みによるものかと・・・けれども今回の加害者両親の手記2冊読むと、それぞれ11歳の娘、14歳の息子はともに普通の家庭で育った子。
とくに「少年A」の生い立ちに関する様々なうがった報道は何らかの原因あるはずという思い込みからのものではなかったのでは?で、この子らは生まれながらの「狂気」ゆえの犯行ではと。
英国クライム・サスペンスドラマ「埋もれる殺意 18年後の慟哭」で逮捕されたサイコパスはおのれを分析していわく「遺伝か環境かって話になる。今はどっちもってのが定説らしいね。遺伝質と人生経験、特に幼少期の体験が大きいとか」
動物行動学の竹内久美子さんによると、その風土の病原菌と血液型との攻防で打ち勝った血液型がその土地で広まっていくという。なら進化の途上で、こうした駆逐されるべき負の素質に対しても淘汰される仕組みがいまだ生まれてこないのは?なんて思っていたら、「専門家は”発達障害は障害じゃない”と言っている。進化の次のステップだと」の説を思い出した。もしかして彼女、彼らも「新人類」?それはともかく、加害者側の手記という身につまされる内容は優劣つけられぬ共に衝撃作。

深夜テレビドラマ「Iターン」が終わった。
ムロツヨシ演ずる地方都市の弱小宣伝広告会社支店長が、古田新太と田中圭演ずる二人の組長の暴力団抗争に巻き込まれる話を内田英治監督・脚本で面白おかしく描かれていた。このドラマで興味を抱いたのが、原作者の福澤徹三。
で、読んでみたのが彼の”奇妙な味”11篇「しにんあそび」。読後すぐ忘れ去るような、でもひととき楽しめる作品ばかり(実際、忘れた)。睡魔、酔魔に襲われながらベッドで読むのにピッタリ、でした。

書店で「あの”そしてミランダを殺す”の・・・」といった宣伝文句目にすること多々あり、「それってそんなに?」とその「そしてミランダを殺す」手に取って・・・男がバーで見知らぬ女と話し始め、妻の浮気が原因で妻に殺意を抱いていることを酔った勢いで告白してしまう。その冒頭シーンで、列車内で偶然隣り合わせた見知らぬ男に同様の話をし、意に反して交換殺人に追い込まれるパトリシア・ハイスミス原作、ヒッチコック監督の傑作「見知らぬ乗客」同様の話かと。が、違った。
本書ラストは同じくハイスミス原作、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」を彷彿とさせる、悲劇?!(詳しくは読後、本書解説欄をお読みください)。
心に長く残るであろう作品ながら、もう少々簡潔な展開をの感。それも高名な賞の最終候補止まりとなった一因か?

★ガジュ丸賞!

「『少年A』この子を生んで・・・ 父と母 悔恨の手記」

「今夜の本!」9/2019 完

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