481「走馬灯の日々」

1.26.sun/2020

昨今、走馬灯のように現れた人々の話である。
現場は大阪住吉区の数カ所・・・。

★其の一「アキラさん」(12月10日火曜日)

墨丸会員との待ち合わせ時間まで小一時間・・・で、眼の前のバーに。

バータイムには早すぎる宵の口ゆえお客は我輩のみ。
ふむふむ、よき雰囲気。さすが。
このあと飲み会控えてるゆえ、コーヒー注文。表の看板メニューにコーヒーと書かれてもいて。
「覚えてます?」と、コーヒー淹れてくれたマスターに。
「あ、墨丸の!」

2015年夏、我輩病で倒れての店を閉鎖する少し前、「近々バーを開店するんです」と、墨丸に初めて来店の青年が我輩にそう挨拶。
で翌16年、某ホテルのバーマンだったその青年、高木明さんはバー「T i.s.m」をオープン。
「墨丸さんに本格的なバーができるって宣伝していただいたおかげで、墨丸さんのお客さん方に来ていただきました」「あの頃、どこのバーまわられました?」「墨丸さんだけです」
なぁんか光栄なことだ。この日以来、我輩は青年のことを、アキラさんと親しみ込めて呼ばさせてもらっている。

★其の二「すえもとさん」(12月20日金曜日)

商店街入り口で墨丸会員お二人と待ち合わせ。
N嬢とは5年ぶりか。

さて、どこで飲もうかと我ら思案。
お一人が「JRの駅近くに店見つけたんですけど」
行ってみた。
ああ、そこは我輩知ってはいたが入ったことのない居酒屋。
我輩唯一の取り柄である「酒場発掘力」に訴えかけぬ店でもあって・・・が、看板名みて驚いた。さか菜と肴 すえもと」と店名が変わっていた。

「すえもと」その店のオーナーとは墨丸創業の1992年頃からの知り合いだ。
そういえば2010年、このページ175「我輩はバカである」事件以来である、すえもとの名の店頭に立つのは。
ここは支店?
入ってみた。
すえもとご本人がいらした。
「いつからここで?」「十年前に移転しましてん。マスターは大変でしたやん」
十年ぶりか・・・まさに光陰矢の如し。

★其の三「約三十年前の人々」(1月2日木曜日)

昨年12月29日の新聞占いコーナーで、「今週はどんなことも行動して前進。幸運を掴んでいける時」かつ別の占いでも「行動してみることで幸運を得る」と。

その二日前、商店街裏通りで我輩唯一の取り柄「酒場発掘力」に訴えかける店が。
ふらり立ち寄ってみた。
この商売初めてという若き女将さんお一人での、オープンして一年余りというカウンター席のみの小ぶりなお店。
料理はカウンターの大皿料理のみだけど、我輩病後の味覚障害残るゆえそれは気にもならず、各種地酒の売値の安さがうれしい。店名は「こちぶ」。意味は教えてもらえず、不明。
酒の値段に気を良くし杯を重ね、ほろ酔いとなったところでトイレに立つ。
そこでの張り紙に「1月2日。本店にて新年会開催。参加費二千円。自分用の酒と食材持ち込み」と。
女将さんに聞いてみた。
「本店ってどこに?」
「ここの二階です。日頃使ってないんですけど。正月、行き場のない方々が集まれたらと」
行き場のない?なんか我輩にぴったりな・・・で「我輩も参加、よろしいです?」

明くる日、酔いが冷めて後悔。
「見ず知らずの人らの宴席になんて・・・」と。
そんなところに前述新聞占いコーナー。で、意を決して参加。
鍋メインと聞いていたのでそれ用の食材「小餅」一袋と日本酒四合瓶引っさげて・・・。

集まったのは我輩ふくめ十名ほどだったか。
みなさん「こちぶ」の常連さん。うち女性四名。我輩のみ新参者。
で、自己紹介タイム。
我輩「以前は長居、我孫子で商売してましたが云々」と。
隣りに座った女将さん、「なんていうお店?」

こちぶ初訪問の日、女将さんとお客との会話のなかで「ほら、墨丸の隣の・・・」と耳に入り、我が墨丸なきあと新・墨丸には足踏み入れてもいぬ我輩、「イヤな噂だと・・・」とその時は聞き流していて、「え、あのぅ、墨丸という・・・」と、こっそりと。
すると女将さん「え、墨丸さん!?みんな、この方、あの墨丸さんやって!」と、周りの人々に。
と、数人の方々が「あの伝説の!?」
そういう方ら、三十年近く前の長居店のお客さん方だった・・・。
うち女性お一人は「わたし、マスターがウサギ買ったその日に墨丸で飲んでたんですよ!」(241「うちはウサギの子、ダミンやねん」参照)。

当初、なぁんか見覚えあるような方たちと思ってはいたけれど、まさかであった・・・でもいまは伝説ってナンなのかが気になって気になって・・・コレまた悪い話でなけりゃいいんだけど。あ、占いの「幸運」ってのはナンなんだ?これからか?

★其の四「砂猫さん」(1月7日水曜日)

正月のあけおめメールで「飲もう」とのお誘いが旧墨丸会員砂猫さんから。
で、前述「こちぶ」でお会いすることに。砂猫さんとは五年以上ぶりだ。
久しぶりに映画、読書談義で盛り上がる。その砂猫さん執筆集は以下に!
・note→https://note.com/sunaneko
・エブリスタ→https://estar.jp/users/145767018
・「即興小説」でも検索を!おもろい話が掲載されていた。すごい。

砂猫さん「もっと飲もう」と誘ってくれるが、我輩明日はバイト仕事の身ゆえ居酒屋「なじみ」前で別れ、退院後初めての、地下鉄駅前「うどん得正」に夜食にと懐かしの上等カレーライス食しに。かつ懐かしの大将らに会いに。
で、みなさん驚かれつつも昔のようにニッコリと「マスター、いらっしゃい」。タイムスリップしたかのようだった。

★其の五「カズシ」(1月17日金曜日)

そのあけおめメールで、もうおひと方。
昨春、突然の電話あり「近々会おう」だったけれど、今年ようやく・・・四捨五入して約三十年ぶりに。

お相手は、墨丸1号店の長居時代の常連で墨丸会員196号の、通称「悪魔くん」ことカズシ(325「ウッチャンという男がいた」登場)。
一昨年、四国高知から大阪箕面に引っ越してき、いまは大手スーパー温泉チェーンの店長。
で、彼が通い続けてくれた墨丸1号店、その跡地の店「天ぷら天雲」で待ち合わせ。その「天雲」ももう創業二十五年。女将さんらとも二十五年ぶりとなる。

で、カズシ「場所わから〜ん」と我が携帯に。
数メートル離れた所からの電話というのに、近辺様変わりし墨丸一号店場所まったく不明だとのこと。
「この店の前も通ったんやで、わからんかったわ、おっさん!」と、白髪増えただけで昔のままの彼はかつてのように我輩のことタメ口でそう呼びながら店に入ってき、我輩は昔通りに「カズシ!」と。
故・ウッチャンら昔の仲間の話に花咲かせつつ、彼は高知県人ゆえかつてのように地酒グイグイ。でももう50超えた年齢ゆえかたちまち酔っ払い・・・二軒目の飲み屋「たえちゃん」では注文の日本酒飲めぬままのトイレ行。我輩が彼の分あわせ二合飲みほす。

共に自宅までここから1時間半以上かかるゆえ、十時半に地下鉄長居駅で別れたあと彼に「大丈夫か?」のメール。続いて彼から電話。なぜか無言。それも数分間も。ホームから転げ落ちたんちゃうかと心配するも翌朝「すまん!無事」とメールあり。

こうして走馬灯のように過ぎ去った日々で湯水のごとく散財し、その価値はあったけれども、悲しいことにまるで価値なし散財も。
作ったばかりの奥歯の義歯、「天雲」で食事中に外れてポケットに。
我輩も酔っていたのか翌朝、ソレがどこにも見当たらぬ。再作成に1万余円もかかるのだった。かつ男用の、ただ一本我が家にあった雨傘も何処かに忘れてしまっていた・・・最後がコレかよ〜!なにが幸運やねん・・・なんかわし、悪いことした?

「走馬灯の日々」完

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