511「今夜の本!」(12/2020のベストは?)

1.8.木/2021

ガジュ丸評価基準。
5「傑作!」 4「秀作」 3.5「佳作」 3「普通作」 2「不満作」 1「駄作?」
NF=ノンフィクション系 ※=再読作品

★はじめに

昨今、晩酌の日本酒愛飲に代わり、泥酔に至らずというメリットだけのような、墨丸営業時代には見向きもしなかった美味くもない焼酎を呑んでいる。
それも、病の後遺症である味覚障害で味の違い不確かゆえ、今まで呑んでいた麦よりも50円安い一升パック940円の蕎麦焼酎「博多の華」をだ。
なおかつ、バカにもしていたそのアルコール25度を水や湯で割るという、かつての我輩からすれば邪道ともいうべき呑み方からはじめ、後半ストレートに移行。その間、録画映画を観つづけている。

で、酒のせいで眠気催す21時前後にソファにゴロリの仮眠。
で、なぜかピタリと一時間後に目覚める。
そして、焼酎ゆえ酔いも覚めての再びの映画鑑賞。
映画に飽き飽きした深夜過ぎにベッドに入り、読書開始。
就寝午前4時前後、起床午後12時ごろとなる。

デッキに録画時間余裕あれば、録画しっぱなしで本を読み続けられるのに・・・これを「無限地獄」という。新年からはどうにかしてこの地獄から脱出をと祈願。以下「寸評!」欄に続く。
※お湯割りは、寒すぎての日本酒燗代わり。以前、一升瓶模したミニチュア瓶の酒を我が家の戸棚で見つけ燗したところ、風変わりな味の日本酒と思いきや、麦焼酎だったという経験から。

★「今夜の本!」

01.「それぞれの曲り角」短編集/眉村卓/角川文庫/3.5
02.「崩れ」NF/幸田文/講談社文庫/3.0
03.「鬼の冠」NF/津本陽/新潮文庫/4.0
04.「能登怪異譚」短編集/半村良/集英社文庫/3.5
05.「ふくわらい」西加奈子/朝日文庫/4.0 河合隼雄物語賞
06.「文豪たちが書いた 泣ける名作短編集」彩図社文芸部編纂/3.0
07.「ルビンの壺が割れた」宿野かほる/新潮文庫/5.0
08.「颶風の王」河崎明子/角川文庫/4.0 三浦綾子文学賞

★「寸評!」

夏に読んだ彩図社編纂の怪談本2冊が、「ネットで「文豪 怪」検索で表示された作をただ印刷しただけのような」とのわが酷評本だったゆえ、この出版社本「もう買わん」はずだった・・・のだけれど、BOOK・OFFで100円ゆえ買ったのが、[10人の文豪が描く哀切に満ちたストーリーばかりを集めました]が謳い文句の「文豪たちが書いた 泣ける名作短編集」。本作もやはり同様、泣けなどまるでせず・・・ま、100円の価値はあったけれど。

そのなかで「さすが」と思わされたのが芥川龍之介「蜜柑」、太宰治「眉山」の2作で、菊池寛「恩讐の彼方に」、森鴎外「高瀬舟」、宮沢賢治「よだかの星」など、かつて読んだその内容、まるで覚えていなかった。
463「ボクのビブリオエッセー」で、読み切ってしまうのが「もったいない」と、はるか昔に手に取るのを中断してしまった山本周五郎本のこと記したけれど、こんなにも「忘却」してしまうもんならば、ああ読み切ってしまえばよかったと後悔・・・で、新年から周五郎本、月一冊読破することに。

この短編集読み終えた深夜一時すぎのこと。
これも最近の習慣となった、床にうず高く積みあげ表紙題名隠し裏表紙を表にした未読本の山から適当に一冊抜き出す。これだと読書傾向も偏らぬ。で、今月はすべてその「抜き出し本」
このときの本は、昨年初頭に買った新刊文庫本。買ったのを忘れていた。店頭で見かけたならば二度買いするところ。
で、読み始めて眠れなくなり・・・「傑作」に出会うとこれは昔からの習慣だけど、ベッドから起き上がり、タバコを探してしまう。で、[頼むから、記憶を消してもう一度読ませてくれ]と。

この文庫、二重表紙。表紙が2枚ある。
その一枚には読み切れぬほどの、[読者の感想を敷き詰めた特製全面帯です](編集部)が。
その一感想文が上記[ ]内で、それが我輩読後感にピッタリの、覆面作家 宿野かほる「ルビンの壺が割れた」。

中年男が、フェイスブックで青春時代の恋人の名を発見。彼女が本人か否かわからぬままメッセージを送る。以後、その二人の往復書簡(メール)で全文が綴られている。二人の出会い、恋、そして結婚式当日の女性の謎の失踪等のいきさつが、メールで次第に明らかにされていき・・・一晩で読み切った。

津本陽の「鬼の冠」は凄い。
幕末から昭和初期にかけて生きた、大東流合気柔術家 武田惣角という主人公が凄いのだ。身長150センチほどの痩せた小男。が、80歳になっても「気」で大男を瞬時に投げ飛ばしたという、本作はその孤高の武術達人の史伝。
かつて映像で合気柔術家が瞬時に数人の男を倒すのを見たことがあるが、当時は信じられなかった。が「第6感」によるというこの柔術、読後、その技も「凄い」のひと言。ただ、生涯において道場持たず、日本全国漂泊の修行生活送るなか、樺太から中国、ハワイまで武者修行の20年間のことは不明らしく、また結婚した頃のことも記述なく、その点が物足りず。

他に、登場人物が[規格外]の人々の、今までもハズレのない西加奈子さんの「ふくわらい」、北の大地での馬と一家族の壮絶な生活描いた「颶風の王」の川崎明子さん、彼女らの他作品を続けて読みたいと思わせる共に秀作。

★「ガジュ丸賞!」

かつてラストで度肝を抜かれた、歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」、乾くるみ「イニシエーション・ラブ」などに比べ、いささか「軽さ」が気にはなるけれど、「傑作本にはついタバコを手にしてしまう」我が習性の点から判断し、おまけの評価アップで、宿野かほる「ルビンの壺が割れた」を!

「今夜の本!」(12/2020)完

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